表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SOYUZ ARCHIVES 整理番号S-22-975  作者: Soyuz archives制作チーム
Ⅳ-3. 閉鎖都市【■■■■■】編
219/327

Chapter193. Welcome to death shower

タイトル【ようこそ、死の雨降る地へ】

——ウイゴン暦8月29日 既定現実9月4日

午前12時



ベストレオ二号機が建造されている秘密工場を制圧するため、一旦ポポルタ線に戦車などが集められていた。



地下に埋まっているのは超大和型戦艦 尾道にも匹敵する戦略兵器。



地中貫通爆弾を何発も撃ち込んでやるよりも直接工場に殴り込みをかけて制圧してしまった方が速いと考え部隊が編制されたのである。



冴島率いるT-72や55、そして先軍915といった主力戦車部隊やヴェノマスを制圧した際の機械化歩兵全て動員し起動を封じる。


あくまでヴェノマスでの戦闘はこのための予行練習に過ぎず、ついに本番がやってきた。



この勢力でいけば問題なく制圧できると思われたが、冴島や権能はあることを懸念していた。

制圧する秘密工場に関する情報が本当に何もない事である。



地中にあることから航空偵察が通じず、スパイを潜り込ませようにも深淵の槍による厳重な警備が敷かれていることから潜入は不可能。



分かったことと言えば深淵の槍が絡んでいる事くらいで、大方予想がついていた事だ。



よくよく考えれば他国の機密にずけずけと踏み入る訳なのだから、むしろ情報がある方がおかしい事と分かっている。



ここで自分が此処の司令官になったつもりで考えたらどうだろうか。



要塞にしない訳がない。


いざとなれば工場もろとも吹き飛ばす自爆設備や証拠隠滅すらしてくるだろう。

少なくとも自分ならそうする。



想像の範囲が及ぶのはここまでで、どのくらいの兵が配置されているのか。

肝心の戦略兵器がどこで建造され、留置されているのかと言った情報がまるでない。



つまり現地に殴りこんで調査する必要があり、何もかもがぶっつけ本番なのだ。







———————————





——閉鎖都市【■■■■】

????




ペノン県にあるにも関わらず騎士将軍や将軍しか知らないぽっかりと空いた暗礁。


閉鎖都市側にも車両が偵察に来ていたことは察知され、すぐさま迎撃態勢が取られていた。

場所が知られてしまうため帝国上層部も増援が出せずにおり、兵の質で勝負することになるだろう。



「ギン・ラゾール殿。隔壁閉鎖完了しました。通気口はいかがなさいますか」



「……下手に兵を集めては異端に爆破され一網打尽の恐れがある。ある程度の兵を着かせ、侵入してきた場合は即時排除可能なよう体制を整えろ。雷雲の火入れを急げ」



将軍おろか県の人間が一切関与できない所故、ここを牛耳るのは国家保安委員会直属の兵、深淵の槍。


その中でも幹部といった高官しか任せられぬ役割。

伝令が呼ぶこの名でさえ偽名で、本名を記録した媒体は全て抹消されている。



「……火入れですか?反応炉を起動するだけしかなく、魔力を蓄積するのに3日かかります、1日程度では主砲だけを3割の出力で動かすので精一杯ですが……」



このドッグはあくまで建造に必要な分の魔力しかなく、実戦投下出来るようになるまで3日はかかる。



設計者ハイゼンベルク博士は最低限の魔力で起動できるようにしていたものの、その代償として緊急発進が出来ないようになっていた。



戦略兵器とは本来使う場を選んで、あらかじめ準備しておくものであり、戦闘機の様にスクランブル発進するようには作ってはいなかったのである。


その上二号機は完成率8割で、出撃するのには不安定。



いくら天才理論物理学者が作り上げた物体でも使うのは人間という事を忘れてはならないだろう。



多数の保険をかけつつ閉鎖都市側でも迎撃準備が進められていった。











—————————————————









——ウイゴン暦8月30日 既定現実9月5日

ペノン県ヴェノマス近郊




作戦は決行された。



T-72と先軍915が5両ずつ、T-55が8の合計18両、機械化歩兵大隊を満載にしたBTRならびBMD-4らの自動車中隊。この布陣に不備はないだろう。



陸上偵察にて発見された通用口は巧妙に隠蔽され、空から見ただけでは判明しないように作られている。



空気を取り入れるベンチレータでさえ、恐らく魔力を精錬し終わった後の不純物を捨てた砂山に偽造され、目を凝らさなければそれだと分からない。



こうして現地に来てみてようやくわかる辺り、明らかにマトモな施設ではないことが伺える。



【J-BOX2からLONGPAT。敵発見できず】



T-72が冴島大佐に報告を寄越す。どうやら偵察時に見られた警備兵が配置されていないようだ。

攻められるのが分かっていたかのように。



BRDM-2に兵が差し向けられた時点で帝国側も察知したのだろう、ここの司令官はよほどの神経症か敏腕に違いない。


最も、国家機密に関っている以上無能が配属される訳がないのだが。



【LONGPAT了解。各車突入開始。警戒を怠るな】



入り口が一つである以上、仕掛けられた罠にかかりに行くようなもの。

そう思った冴島は各々に警戒を怠ることがないよう気を引き締めてから突入する。
















—————————————————












 偽装された通用口へ到達すると、そこは分厚い隔壁によって固く閉鎖されていた。

戦車部隊は一旦足を止め、大佐の指示を仰ぐ一方、その周りをBMD-4が固め奇襲に備える。



「打ち破れるか……?」



先軍915に乗るボゥール曹長は放射線でも遮りそうな分厚く重々しい、水門のような扉を前に呟いた。



高さはざっと5、6m。幅に関していえば戦車部隊が詰めかけても余裕な位にはある。

キロ単位の兵器を作る上にいざとなれば敵を阻まねばならない。



薄い木の板で出来ている方がおかしいとはいえ見る者を圧巻する。



【LONGPATから各車。30秒後に一斉に攻撃を掛ける】



——ZDaaaaAAAASHHH!!!!



丁度各車、装填を終えてから門に向け一斉に降り注いだ。120mm、125mmと様々な大きさの榴弾が撃ち込まれるが、破壊をもたらすことに変わりない。



コンクリートビルに大穴を開ける程の威力があるだけに門の施錠部にダメージを与えていた。



最も重量のある先軍915がこじ開けると戦車隊は搬入口を進む。









————————————————











——閉鎖都市【■■■■】

——通用口120m地点






ついに秘密工場に到達したSoyuzの戦車部隊だったが、彼らを率いる冴島はあることを感じていた。



地下トンネルの照明がまるでLEDのように白い光で照らされ明るいのである。

木漏れ日でも差しているかのような錯覚に陥るが、ここは地下空間で窓などないのは言うまでもない。



それに天井付近にキャットウォークがあるが、兵を配置されていないのが気になる。

今までの帝国軍はこういった場所に確実に兵を置く。



敵が見えないという事は、それだけ上手く隠れているという事になる。



そのため防御力の高い戦車が前を行き安全を確保でき次第、機械化歩兵が突入する作戦を取った。

いつどこから攻撃を受けてもおかしくはないこの状況、冴島大佐の出す指示は一つ。



【LONGPATより各車、足場を撃て】



T-72が細い通路に狙いを定めた直後、砲塔内は爆音と白煙で満ち溢れた。



———ZDaaaaAAAASHHH!!!!——…BPHooOM……!



耳が潰れそうな程の砲撃音に乱されることなく冴島はソ・USEを耳に当て、他車両からの連絡を待つ。


トンネルは音が響く。

ならば倒すべき敵も攻撃してくるか、あるいは寄ってくるはずだ。



あの通路では重装兵の重さには耐えきれず、来るのは歩兵かソーサラー。反応次第ではこの先どんな兵士がいるか推測できるかもしれない。



装填装置がせわしなく弾を救いあげる脇で彼は感覚を研ぎ澄ませる。



【Heavy06からLONGPAT、攻撃を受けた】



その報告が来るや否や、彼は一瞬だけ納得したような顔をした後、指示を下すのだ。



【爆発かそれ以外か】



【銃撃か弓矢の類いかと思われます。損害軽微】



これで分かっただろう。肉眼で見ることが出来ない敵が待ち伏せていることを。











—————————————————










振り注ぐ槍の雨。

戦車部隊に赤外線暗視装置を使うよう命令が下され、各車両それぞれが対応を急ぐ。



砲撃して確実に潰してもなお、上手く逃げ回る歩兵がこちらに向けに上から槍が撃ち込んでくる。

たかが爆発しない徹甲弾や命中率の悪さも相まって戦車にとって大した事はないように思えた。



ボゥール達の先軍915を除いて。



「2時方向、撃て」



——ZDaaaaAAAASHHH!!!!——



曹長は敵が戦車そのものではなく、攻撃力を削ぎにかかってきているのではないかと考えていた。



対装甲槍と言っても所詮は徹甲弾。

戦車を一撃で吹き飛ばすには不十分。だが武装を破壊することはできる。



Soyuzから見れば先軍915は頼れる存在、帝国側からしてみれば陸・空のあらゆる存在を一撃で粉砕する悪魔のような敵に見えるだろう。


同じようなことは他の戦車にも言えるが。



そうなれば当然、排除優先度も高くなってくる。



——QRAAASH!!!!——



「しまった、連装擲弾銃(グレネードマシンガン)がやられたか。——9時方向砲撃急げ」



予想は的中してしまった。



今までミサイルなどには命中せず地面に突き刺さっていたのは命中精度が低いからに過ぎない。

いざ命中さえすれば武装の一つや二つ、千切ることなど容易いのである。



装填手が砲弾を引き上げる脇でボゥールは考えた。



赤外線暗視装置をやられたらマズイ。ここは後退を要請するべきか。だが後退したところで奴らの思うつぼ。



導かれる答えはたった一つだ。

今は暗視装置片手に気合で突破するしかない。









————————————————











曹長の苦悩を裏腹に冴島の駆るT-72はゲリラの息の根を着実に止めていた。

中東ではこのような市街戦は往々にしてあったもの。



遮蔽物に隠れた敵を血祭りにあげてきた大佐にとって肉眼で見える見えないは今更関係ない。



「4時方向、撃て。次、2時方向距離140———」



ZDaaaaAAAASHHH!!!!




彼は曹長と同じ脅威に晒されながら、風のない水面のように冷徹に命令を下し続ける。

敵のいない側にあえて砲撃して通路を分断。



増援を閉じ込めて他の車両が掃討しやすいよう後ろから砲撃を続けていた。



ただゲリラ攻撃に混乱するのでは敵の術中にはまる。


視野を広げる事でどうすれば良いのか判断・実行できるかが戦いの鍵となってくるだろう。



ふと暗視装置から垣間見ると、通路が分断された兵は勇気をもって飛び越えたが、合間が広くそのまま地に落ちた。



その後ろの兵は容赦なくT-55の砲で砕け散っていく。



足場を全て破片の雨で破壊しながら戦車は進むのだった。











———————————————————













——搬入口350m地点




それぞれSoyuzを阻む隔壁を破壊、ちょうど最終隔壁一歩手前まで来た時の事である。



内壁も先ほど待ち伏せを受けていた通路ではなく、銃眼のようなものが並び始めていた。あまりの数に四方八方から見られているような錯覚を覚える。



赤外線暗視装置を見てもただ青色の反応が立ち並ぶだけで、兵士が待ち伏せをしているわけではないようだ。



とは問屋が卸さない。



———ZAAAANGGG!!!!!!———



後で突如隔壁が閉鎖された瞬間、先陣を切るT-55に壁から突如、落雷が襲い掛かった。

辺りには着弾したような爆音が響き渡り火花と白煙が広がる。



当然のことながら雷雲などこの地下にはない。超電雷魔法バルベルデに他ならないだろう。



次第に爆発が混じりはじめ、ついには時折隕石が混じる始末。


おそらく此処だけにしかない、自動防衛システムが牙を剥く。




前方で魔導を無効化する敵を排除後、隔壁を閉鎖。

残党を全て圧倒的な密度の魔導をもって「消毒」する世にも恐ろしい機構だ。


これはあくまで入ってくる生命体は全て絶命することだろう。



だが分厚い装甲板で覆われた戦車にはまるで効き目が見られない。

生物にはめっぽう強いが、この鋼鉄塊の集団を止めるには威力が不十分過ぎたのである。



むしろ肉眼でくっきり映ることから撃破は容易なことこの上ない。



KA-BoooOOOMMM!!!!



榴弾による爆風で次々と砲門が破壊しながらSoyuzは進軍は止まらない。

次回Chapter194は5月27日10時からの公開となります。


・登場兵器


T-72

火力・速度・重量・機動性、火器管制装置と全てにおいてバランスが取れた汎用性の高い主力戦車。

Soyuzの運用するモデルはB1タイプで、爆発反応装甲を装備していない。


先軍915

北朝鮮製主力戦車。対戦車・空・連装グレネードマシンガンに反応装甲までついてくる、走るフルアーマー。そのほとんどが外付けなため、外部から攻撃を受けると破損しやすい。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ