表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SOYUZ ARCHIVES 整理番号S-22-975  作者: Soyuz archives制作チーム
Ⅳ-1.帝国戦役 ペノン侵攻
212/327

Chapter187. Landing of Fear

タイトル:【上陸する恐怖】

——ウイゴン暦8月25日 既定現実9月1日

ゾルターン・ペノン県境



機械化歩兵を乗せた自動車部隊はペノン県ヴェノマスに向けて進軍を始めた。

その後ろには戦車が控えている。


既にジャルニエ飛行場からはスツーカやIl-2が飛び立っており、準備は万全だったが、前線で戦わされる兵士は少し違っていた。



「暑いのはいいとして相変わらずうるせぇ、クソみてぇに揺れる、あぁ死ね」



ガンテルはうなだれながら恨み辛みを吐き出し続けていた。


比較的新しい空挺戦車とはいえ、装甲や高出力エンジンに電子機器を詰め込んで余ったスペースに兵員を詰め込んでいることもあって居住性はとてもではないが良いものとは言えない。



ただでさえ狭い兵員輸送車BTR-80と比べ、BMD-4は吐き気がするほど狭いのだ。



ベストレオが暴れた余波で生まれた足跡や流れ弾で出来た悪路。それに加え口数が少ないエンジンもない極上の拷問空間。


載せられている兵員はまだ有情で、電子機器に押し込まれているガンナーや操縦手はラッシュ時の東京めいて圧縮されている始末である。



そのすべてが足されたとき、Soyuzスタッフでも耐えがたい乗り心地が実現してしまった。

苦痛空間なのは何もガンテル一人だけではないが、他のスタッフは達観している。



「諦めろ。日頃の行いが悪いんだろ」



その途端、何もかもグチャグチャになってしまうような縦揺れ常に襲う。

ベストレオ側面副砲で地上は尋常ではない悪路と化しており、最早トライアルコースである。



———GRAGRASH!!!



「ある意味楽しいぜ」



グルードは諦めを超え、妙な境地に達している!

これでも目的地まではほど遠く、まだまだこの車輪付き拷問部屋に囚われなくてはならないらしい。











———————————————










揺られる事2時間。


敵軍事基地に遭遇したが自動車・戦車部隊による圧倒的火力によって粉砕しながら、ペノン県ヴェノマス近郊までたどり着いた。



【こちらN-Boat01作戦区域に到達】



【LONGPAT了解。何か見えるか】



冴島大佐はBMD-4の車長に要塞化されていないか確認する。


腐っても時間を与えてしまった訳であり、帝国軍が装甲兵器類に対し何等かの対策を取っていると考えたのだ。



【N-Boat01。侵攻ルート上に敵兵発見できず。入り口付近に防壁を確認】



車長の報告によれば周りに敵はおらず、侵入を阻む壁が設置されているだけという。

勝負を市街でつけるつもりか、あるいは罠を張っている可能性がある。



街に入られたくも、傷つけられたくない小僧の事だ、罠を張っている可能性が高い。冴島はそう睨んだ。



【LONGPATよりBEE Region各機。先に自動車部隊の進路を攻撃せよ】



そこで冴島はIl-2たちに対地攻撃命令を下す。

たとえ地雷だろうが罠だろうと一度炸裂したら二度と牙を剥かなくなるのだ。

それに敵司令部を混乱させるのにもちょうどいい。



命令を受けた攻撃機たちは付近を攻撃し始めた。



———WEEEEEEELLL!!!!!———KA-BoooMM!!!———



四方八方に爆弾や機関砲が乱舞する。強烈な物理エネルギーを前に平原は荒れ果て、すべてを無に帰していく。


その後をBMD-4ら自動車部隊が迫り、その様は死をもたらす神が行進しているかの様。



彼らも呑気に進軍するだけに飽き足らず各々機関砲や機関銃弾をばらまくことで、敵を街の中に封じ込めようという魂胆である。



そんな中、一機のIl-2パイロットがあることに気が付いた。



「……これだけおちょくってるのに迎撃の一つすら出て来ねぇ」



急降下爆撃などで低高度中に侵入した場合、迎撃のためドラゴンナイトが出てきてもおかしくはない。



兵の質が悪いと言われているゾルターンでの戦いでも出てきた。

航空兵力が危険だと学習しているはずなら叩き落とそうとして来るはず。


この戦い、何かが妙だ。



———DAMDAMDAM!!!!!——ZDaaaaSH!!!!———



BMD-4や後方からの戦車部隊による砲撃は続く。



ポポルタ線の防壁とは異なり、ヴェノマスの街をぐるりと囲む粗雑な造りの壁はHEAT弾を受けるどころか30mm機関砲の直撃によって段ボールの如く風穴が開けられ、瞬く間に丸裸にされてしまった。



騎馬程度なら足止めが出来ただろうが、アツシは現代兵器の対策よりも壁を作ることを選んだ結果であろう。



この程度、火砲からすればウエハース同然。自動車部隊は一気にヴェノマスに流れ込んでいった。














———————————————————















——ヴェノマス・パレス



「な、なに!?敵の侵入を許した!?まぁいい、僕の魔導さえあればみんな吹き飛ばせるんだ、何が戦車だ、ファンタジーに勝てるわけないんだ。ソーサラーでぶっ飛ばせ!」



敵が易々入ってきた事にアツシは自分の力に酔いしれていた。

だがそんな夢を終わらせるようにしてすさまじい衝撃波と爆音が響く。



航空機は依然として市街地の入り口付近を攻撃中。パレスを直接攻撃する命令は出ていない。


では何がどこから攻撃を行っているというのか。



「アツシ様!島が!島が攻撃を……!」



伝令が慌てた様子でパレス上層にある司令部に駆け込んできた。

彼が言うには島そのものが直接パレスに殴りかかっているという。



「そんなバカな!僕が直接消し飛ばしてやる!」



アツシはスマホを片手に窓から身を乗り出し、聖域を汚す悪の島を探そうとする。

だが探すまでもなかった。



こちらに向けられた46cm、いやそれさえ凌ぐ恐怖の51cm連装砲に、副砲として搭載された自走砲用203mm榴弾砲。


そしてずらりと並んだAK630といった夥しい数の対空機関砲。



腹を横に向け前砲門を向けた尾道だった。先ほどの爆風は副砲によるものだろう。

戦艦を使ってはいけないという条約やルールはどこにもないのだ!



羅列された火砲類のデータはどうでもいい。


何より一般高校生だった彼を絶望させたのは、島と見間違われるような巨大さと誰がどう見ても在りし日の戦艦大和を思わせる姿だった。



「クソッ!」



転生得点としてついてきたスマホには特殊な機能がある。


LTEが使えない代わりにマップの敵をロックオンして魔導を食らわせることができるのだ。



「くらえ……!」



スマホに尾道の居る位置にピンを落させ精神を集中する。



【ヴァドム】



飛び出した爆発魔導はガロ―バンでさえも届かない尾道に爆風を齎した。



「これが科学とファンタジーなんだ、お前らだけが現代文明使えると思うなよ」



アツシは息を切らしながら液晶画面に視線を落とす。


何も21世紀の力を使えるのはSoyuz達だけではない、少しくらい痛い目でも見ていろ。


ちっぽけな虚栄を張ったが、心の余裕は何一つ埋まることはなかった。









———————————







———戦艦尾道



「1番副砲付近被弾。損害なし」




ブリッジに無慈悲な報告が響く。

たかだか戦車より虚弱な歩兵戦闘車すら粉々に出来ない威力の爆風は痒いどころか、感じる事すら億劫。



何なら51cm連装砲の砲撃によって生じる爆風と同程度だろう。

そんなちっぽけな反撃で止められる程、超大和型は甘くはない。



今まで観測したことのない長距離攻撃をし始めたことは事実。

だが悔しいことに民間人を吹き飛ばす訳にいかないため、副砲で敵拠点を砲撃するしかない。



艦長は無線機を取った。



【こちら尾道。攻撃を受けた。敵艦が見られない状態でだ。市街地の中に超遠距離手段を持った敵が居る可能性あり】



【LONGPAT了解】



いくら戦艦が無敵とはいえ、主役はあくまで機械化歩兵とBMD-4やBTRといった防御力がそこまでない自動車部隊。



狙われたのが不条理な防御力を持つ超大和型で良かったが、軽装甲車がこの一撃を受けたら大変なことになる。



これだけの数を揃えたとしても戦いは思うようにいかない。













————————————————









——ヴェノマス市街





ついに市街地に突入した自動車部隊。

それと同時に平穏で風光明媚な運河街に銃声とくぐもった爆発音が満ちていく。



敵排除のためBMD-4は前に、兵を大量に乗せたBTRは比較的後ろにフォーメーションを組んでいた。


当然敵からの攻撃に晒されることになるが、今更になって怯えるという選択肢はない。



————ZDAMDAMDAM!!!…BoooMM…———BoooMM……BLATATATA!!!



屋根上にはスナイパーやソーサラーと言った強力な兵が配置されており、30mm機関砲の餌食となっていく。



魔法やガロ―バンを撃たれたが最期、防御力の低い自分達にとってはひとたまりもない。


既に航行している車両もいるが、それらに手を出させないため一両のBMDは街を駆け巡る。



「3時方向!」



空挺戦車の操縦手が叫んだ。



仰角が取れない事を知ってか知らずか、建物の屋上と言った高い場所に陣取っていた。



小賢しい事に敵も学習してきている。



「わかってる!」



そんなことは承知。弓を引かれる前に、矛先を向けられる前に。


当然遠距離攻撃できる杖を持っている兵も存在することも確か。

目障りだと言わんばかりにあの光筋が口を開けて待ち受けているではないか。



「転回急げ!急げ!」



履帯が石畳を刻みながら車体は大きく滑りつつ、方向を変え走り出す。

その刹那。何発もの流星が執拗に降り注いだ。



———DAGDAGDAG!!!!———



榴弾砲がいくつも着弾しているかと勘違いする爆音に車長の額から冷や汗が垂れる。

装甲車両があれば無敵という時代は終わった。



既定現実の戦闘と同じように。



自動車部隊は進む。ここまで大げさな戦闘をしていないのは「相手にする価値すらない」ためであり、ヴェノマスでの早期決着は装甲で守られた機械化歩兵部隊に掛かっている。



———KA-BoooMM……BLATATAT!!!



後にいる戦車や対地攻撃といった援護を背に受け、運河に出た部隊はパレス付近に集結。



敵は装甲兵器を相手するのに気を取られているようで、もぬけの殻となったBTRは後退。

空挺戦車は動きながら残存ソーサラーを叩くことになっていた。



そうあの一行も例外ではない。



「なんで俺が一番最初なんだよ、覚えてろよ!」



文句を垂れていたのは当然ガンテル。先陣を切る羽目にはったのは当てつけでもなんでもなく、目が利き遠距離からの狙撃返しが出来る類稀な才能を持っているからに他ならない。



大弓を片手にハッチを開け、ヴェノマスの空気を目一杯吸い込む。



嗅ぎなれない潮の香り、辺り一面に響く銃声や爆裂音。

そして死の羽音や軍人ではない人民の悲鳴。



彼は1秒も満たないうちに周囲の情報を頭に叩き込むと、矢を放ってからすぐさま車内に閉じこもった。



「どうした」



奴からただならぬ気配を感じたパルメドは問う。



「距離300くらいにソーサラーがいたから殺った。あ、いけね。距離700先にいた竜騎に気が付かれたっぽい」




その情報はガンナーへすぐさま伝わり、砲塔は右旋回。30mm機関砲が炸裂するもすぐに鳴りやんだ。



「撃墜確認。さっさと出ろ」



叩き落したことを確かめた車長は立てこもり続けるガンテルに催促を掛ける。



「言われなくたってわってらぁ、こんな狭い所願い下げだ!それと一つ、此処の住人が思い切り逃げてる。おたくらでいう避難勧告ってやつを出しちゃいねぇ」



「んなの当たり前だけどな。狙いに気ィつけてくれ」



ほんの一瞬出ただけで、状況を把握することが出来る。

いくら不良兵士でも生き抜く力、判断と分析能力は本物だ。



「了解」



車長は冷徹に答えるが、兵士のガヤで全てが上書きされる。



「お高く留まりやがって、弦が軽くて仕方ねぇ」



「さっさと殴りこむぞ。後が閊えてる」



「クソみたいな草原から海ねぇ、世界は広いぜ全く」



戦いはここからが本番だ。





次回Chapter188は4月29日10時からの公開となります。



・登場兵器

BTR-80

タイヤを使って走る兵員輸送車。場所を選ばない高い機動性が特徴。

兵士を輸送するのが目的なため武装は14.5mm機関銃と7.62mm機銃と控えめ。

兵員が出てくるのは側面にあるハッチからが多いが、改善されたとはいえやはり狭い。


水上航行も可能で、運河が張り巡らされたヴェノマス市街では有利だと判断され投下された。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ