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SOYUZ ARCHIVES 整理番号S-22-975  作者: Soyuz archives制作チーム
Ⅲ-8. 対 究極兵器 後編
201/327

Chapter176. Deus Ex Machina (4/4)

タイトル【機械仕掛けの神】

——ウイゴン暦8月11日 既定現実8月18日 14時46分

——ナルベルン自治区 ミサイル発射基地




———VLaaaaaaaAAAAASHHHH!!!!!———




天高くそびえるスカッド発射機から5発の柱が撃ち上がった。



自治区の中ではもはやミサイル発射が定時に鳴る教会の鐘と同じような存在と化していたものの、5発一度に撃ち上がることは早々ない。



殆どの住民は恐怖におののき、Soyuzのトラックやヘリがひっきりなしに動いてた。

そんな中、人ごみ紛れて呑気な酔っ払いがぶらついている。



「気前いいねぇ、何かあったのかい」



ラムジャーをひっとらえた祝いの祝砲と思ったのか、住人の一人が避難誘導をしていたスタッフに絡む。



「いいから逃げろ!悪い冗談じゃねぇ、今すぐここから逃げろ!」



微妙に酒臭い匂い吐息が混じる男でも茶化すことなく、凄まじい剣幕でまくりたてる。

ここには民族浄化兵器が迫っているのだ、誰だって慌てる。



その一方で発射台では次弾を撃ち込むため怒号が飛び交う。



「畜生、次ミサイルよこせ!」



「馬鹿野郎!ライフルの弾じゃねぇんだぞ!」




専用のキャリアがあるとは言え、弾頭を人工衛星に積み替えれば小さな宇宙ロケットの出来上がり。それだけ大きなものである。


発射器(ランチャー)にセットするだけでも手間がかかるのだ。



「それにもう弾はこれで最後だ!残りは弾薬庫から引っ張り出すしかねぇ!ガタガタ抜かす前に手を動かせ!」



「わぁったよ!俺だって暇じゃねぇが、怒鳴られるよか良い!」




Soyuzはたとえ大怪獣が迫ろうとも決して団結を崩さない。







——————————————














——ギンジバリス港湾 海域







謎の超大型兵器の存在は超大和型戦艦 尾道でも観測された。


大きさにして大和3隻。

こんな大鉄塊のためにレーダーが反応してしまったのである。




【BIG BROTHERから尾道。ギンジバリス市に侵攻中の巨大敵影に向け砲撃を開始せよ。敵射程は推定180km。規模からして直接倒せるのは尾道だけになる。必ず仕留めろ】



【尾道了解】




レーダーに映らない敵をいつまでも追いかけても仕方がない。



港に向かって動き出したこの戦略兵器を狙うのが先決だろう。

それに不鮮明な敵艦を追いかけられるのは大田切だけだ。



その一方。重巡を駆るチェレンコフ大佐は、敵艦が尾道の向こう側にいると確信。

出会い頭での勝負に臨んでいた。



目視、電探の全てで探知できない以上20.3cm砲の雨を浴びせても当たるかどうか、それ以前に射程距離にいることさえ疑わしい。


誘導魚雷だけが頼みの綱。

もはや蜘蛛の糸の領域になってしまっているが。



大田切を一撃で仕留めてしまうような火力を持つ旗艦が相手だ。

射程がギンジバリス市に届いた時点で街は火の海に包まれてしまうだろう。



「機関、微速。私が指示で1番主砲は10km先を、2番は20km先に向け砲撃開始」



「3番、4番も同様だ。それと同時に囮の魚雷を撃ち込め」




チェレンコフ大佐は帝国艦船の異様な足の速さを知っていた。水上電探で18ノットや20ノットを容易にたたき出す戦列艦など前代未聞。



それならばむしろ好都合。普通の海賊船では足が遅すぎて合わせるのがむしろ難しいからだ。



砲撃に気を取られている隙に水面下から強烈な一撃をお見舞いし、撃沈。

どこまで上手くいくか分からないが、やらない手はない。














—————————————













「撃ち方はじめ」



チェレンコフの一声で大田切は一斉に砲火を噴く。

最初に船首側についた1番・2番が。魚雷と共に放たれる3番、4番主砲が出す莫大な硝煙に包まれた。



魚雷も正直な所当たるかどうかはもはや賭けだ。

熟練の船乗りなら必ずこうする、という野生のカンにすべてが詰まっている。



「敵艦発見!距離21000!」



どういう訳かあの巨大な幻影戦艦が姿を現したというのだ!

いきなりレーダーに発見できるようになった訳は知らないが、今が攻め時なのは言うまでもない。



「機関全速、敵艦に接近し各砲、攻撃を浴びせ続けろ!」



大佐の指示が下ると共に船体は大きく縦揺れする。

この感じからとしてかなり近くに攻撃を受けてしまったのだろう。


こちらもプロなら、21km先にいる敵も当然プロフェッショナルに違いない。



「1番、4番主砲被弾!CIWS破損!復旧不能です!」



チェレンコフは怯むことなく打開策を生んでゆく。



「攻撃の手を緩めるな!レーダー照準に切り替え、何としてでも沈めろ!」



ここで会ったが100年目、ギンジバリス市を火の海にされる前に、何としてでも沈めなくてはならない。

また水上電探から消失し、振出にもどるのは二度と御免だ。



幻影戦艦コンクールスがこちらを撃沈させるつもりなら上等。海の底に沈めるまでである。














———————————

















次第に濃霧が薄れ始め始めた。



戦艦コンクールスに着弾した一発の203mm榴弾が勝負を分けた。


マストに着弾した衝撃で幻術を生じさせる魔具が破損したため不可視化は解け、レーダーに映るようになってしまった。



なんとか復旧させたものの、今度は魔力漏洩。

幻の方が弱まり始めていのである!



現代兵器に尻尾を掴ませれば勝利も同然。

魚雷を察知したのか精一杯、回避運動を取り始めていたが大佐は織り込み済みである。



————BaaaaAAAAMMM!!!!!!——



ギンジバリスの時とは違い側面に着弾、水柱が上がると共に雲の様に掴みようのない幻影戦艦が姿を現した。



「敵艦発見!」



超弩級戦艦のようなスラっとした出で立ちの船体に幻とは異なる真っ黒い帆。



それでいて船首、船尾についた二段式の魔導砲が睨みを利かせる。

中央についている戦列艦のような中央部がひときわ異彩を放つ。




ついに幻を生み出す魔具が機能不全に陥ったのである。Soyuzを苦しめる分厚い壁が取り払わられた以上、集中砲火が待っていた。



雨の様に降りしきる中口径榴弾。脆弱になった所に容赦なく放たれる魚雷。



難燃性の塊である戦艦は次第に火の手が上がり、角砂糖をコーヒーに入れたように形が崩れていく。




ウイゴン暦8月11日 既定現実8月18日 15時12分


幻影戦艦コンクールス 撃沈















———————————————























中将から直接連絡を受けていた尾道は、自らに矛先を逸らすため北上しつつ狙いを定めていた。


するとギンジバリス市の方を向いていたはずの主砲が、尾道へ向けぐるりと振り返ったではないだろうか。



極彩色の光を放つ様は理屈が分からなくとも、明らかに危険であることは本能が理解している。


核兵器めいた熱量をもって尾道の乗員は皆殺しにされてしまうのだろうか。



そうはさせない!



——BooooOOOMMMM!!!!———



空から降り注ぐ5発の爆炎。ナルベルン自治区から発射された希望、スカッドたちだ!



海からはスクランブルしてきたMiG29の群れが尾道側から迫り、高度を上げると共に対地ミサイルを放ちながら散開していく。



なんとか港湾側ではなく戦艦に注意を引き付けるために他ならない。



「撃ち方はじめ」



砲を全て発射できるよう腹を見せた船から一斉に51cm砲が降り注ぐ。



————ZoooOOOOOOMMMMNGGGG!!!!!!



これだけでは終わるはずがなかった。この超大和型戦艦 尾道は21世紀の力が備わっていることを忘れてはならない。




PATPATPATPAT…VLaaaAAAASHHH!!!!!




後部甲板から25発の垂直ミサイル発射機のフタが一斉に開き、爆炎と共に巨大な柱が空へと旅立つ。


第二次大戦の後、開発された強力な力「トマホーク・ミサイル」だ!




スカッド、大和を超える炸薬の51cm砲、対地・対艦ミサイル。

全てを着弾させていたとしても、対空砲火が止むばかりで規格外の動く厄災は止まる気配を見せない。



「効いても多少か……やるしかねぇさ……!」




MiG29のパイロット ジョンソはめまぐるしく変わる天地の境と、みるみる大きくなっていくベストレオを前にこうつぶやいた。



キャノン付きクソッタレ竜の時もそうだったが、今更こんな豆鉄砲が何になるというのか。



「いいぜ、本物のシューティングってのを見せてやる……」



ファルクラムの機動力を持ってすれば一度だけ曲がってくるビームを躱すことは容易。

先ほどの一斉砲火で対空兵装が破壊されたのか、先ほどと比べて明らかに数が減っている。



一気に距離を詰めた後、首の様に伸びた主砲めがけて機関砲を撃ち込んだ。



戦車の正面すら撃ち抜けない代物だが、こんな出来損ないの大怪獣に怯えて逃げる小心者か。


絶対に違う。たとえ効かなくとも、戦術的に効果があるのならやるだけだ。


ジョンソは逃げない!



「弾切れか、あばよ!」



残弾は0。全力を出し切ったがまるで歯が立たない、がこれでいい。

一回の攻撃で倒れては何の面白みもないではないか。



音速で飛びながらバケモノを見下ろし、彼の乗るMiG29は本部拠点へと帰投していった。

















———————————————















動きを全く止めることのできなかった総攻撃だが、あくまでダメージが入っていない訳ではなく、対空砲やそれに動力を供給する回路が衝撃により破損。




復旧は完了したものの、空からの敵は脅威で無いことを知ったファゴットは対空供給路を遮断し主砲に回すよう命令した。



「切り替えを自動化できればこんなことにはならなかったか……」


「まぁ良い、副砲で海上の敵に応戦せよ」




彼は影でこう呟く。



回路の切り変えそのものは十分想定していたが、練度の低さが足枷となり作業が遅れていた。

仕方なく主砲の操作要員を回したのだが、これでもなお時間がかかるとの事。



1200mを誇る巨体をゆっくりと旋回させ横腹を見せはじめる。とんでもない重量故踏みつけた地盤がアイスクリームに立てたスプーンのように沈んでいく。



切り替えまでの間、敵に何かをさせるだけの隙を与えてはならない。



ティラノサウルスのような主砲は振り向くことが出来ず、エネルギー供給ができるのはずらりと並んだ副砲。



側面にある副砲のカバーが開き、一斉砲火が尾道に襲い掛かる。



「被弾多数!損傷なし!」



大田切を危うくする程度の火力では尾道は揺るがない!



「主舵一杯、機関全速」



艦長は砲撃を続けさせたまま、陸から少し遠ざかり弧を描くように船を動かせる。





この戦艦は世界最大級でありながら、大和譲りの機動性を持つ。

3つの舵とスピードをもってすれば図体からは想像もできない




そして肝心なのは射程。レーダーがはじき出した距離は38km。

こちらの射程範囲に入る形になるが、当然ながら敵もこちらを狙える距離だ。



つまり引き金一つで撃沈できる間合いにいるという事。




撃たれたら最後、核の炎で帝国を覆う羽目になる。それだけは避けなくてはならない。




如何に翻弄しながら敵を撃破するかがカギになってくる。常に最適解を選ばなければSoyuzは確実に滅ぶのだから。



絶え間ない砲撃と巻き上がる白煙。あの主砲を撃たれないためこちらも決死の覚悟で撃ち続けている。



【俺だ。どの主砲でも構わん。敵主砲に対し徹甲弾を撃ち込め】




艦長はソ・USEを片手に砲弾の種類を変え、主砲を破壊させることにした。

副砲は分厚い装甲を前に無意味。ほとんど考えないものとして良いだろう。



脅威となるのは樹海からダース山まで数百キロ届くふざけたビーム砲に尽きる。

直撃したことは考えたくはない。



【了解】


吉と出るか、凶と出るか。尾道のクルーは祈ることしかできない。

Chapter176は2月11日10時からの公開となります。


登場兵器


超大和級戦艦 尾道

大和を超えるさらに巨大な戦艦。旧日本海軍の究極系と言うべきか。

51cm連装砲の威力は通常火力でも別格の強さを誇る。さらにCIWSや対艦ミサイルや水上レーダー・ソナーを装備してある21世紀仕様。現在2隻目を建造中らしい。

たった1隻で港湾都市を跡形もなく消し飛ばせるだけの火力を持つ。

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