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SOYUZ ARCHIVES 整理番号S-22-975  作者: Soyuz archives制作チーム
Ⅲ-7. 対 究極兵器 前編
188/327

Chapter162. Don't destroy the future

タイトル【未来を守るために】

———ウイゴン暦8月8日 既定現実8月15日 午前7時42分

——Soyuzポポルタ拠点



緊急事態とあって、ポポルタで作業していた建設機械師団は作業を中止。

一部バイオテック職員はすぐさま待機室に退避していた。

難民達の避難誘導が始まっていたが、まだまだ始まったばかりである。



「夜勤明けで仮眠してたらコレだ、枕が寂しいって言ってたのに。抜け出すのに苦労したぜ。——今度は布団が呼んでらぁ」



「俺なんて仕事終わりした瞬間だからなァ、そういえば作業を絶対に終わらすんだとかいって残ってるヤツがいたけど、似たような光景見たことがあるぞ。なんだったかなぁ」



その周りに控える自走砲部隊はと言うと、探知しようのない不可視の相手に備えている。




装甲が薄い主体砲は後ろに、盾になることが出来るSU-152は前に。

125mm戦車砲を撃ち込んでも効き目が薄いという報告があり、戦闘スタッフは不安を隠せない。




【とうとうらしくなってきたよな、騎士団相手にしてたと思ったらお次は怪獣。Godzillaだぜ、戦車砲ぶち込んでもピンピンして、対地ミサイルと爆弾をぶち込んでようやくダメージが入る。大佐が逃がすのも無理ねぇ】



突撃砲の車長は無線口でタバコを吸いながら、同じ階級の親友がいる主体砲車長と気を紛らわせるために話していた。



あらゆる重火砲をホコリのように払い、背中に背負った巨大なレイガンで全てを焼き払う。

その上空に照準を向ければ航空機すら叩き落す有様。


正しく未知の領域。



冴島大佐のように人間かどうか怪しい上司は兎も角として、訳が分からない理不尽を押し付けられている、恐怖でどうにかなりそうだ。



だが大佐も自分達では止められない事は良く知っているはず。

だからこそ自分達で仕留めなければならない。



今にも発狂しそうな気分をマルボロメンソールで誤魔化していた。














————————————









地中にいるゲイルはどこから地上に出てこようか難儀していた。。

というのも、ことごとく土中を進むと必ず分厚い鋼鉄板に阻まれていたからに他ならない。



先日建設機械師団が土中に埋めた鋼矢板。

土圧に耐えられるように凄まじい強度を持っているため、さすがの地竜の爪でも突破することは出来ない。



暫く彷徨っているその時。



あるスタッフの意地でも杭を撃ち込んでやる、という執念がこもったパイルドライバーの一つがゲイルの真上から迫っているではないか!


重機の運転室から雄叫びが漏れる。



「野郎、喰らいやがれ!」



このドリル、そこらにある貧弱なものと訳が違う。


硬い岩盤をベニヤ板のように貫くような強力なもので、背中に縫い付けられた魔導シューターに大穴を開けたのである。



それでも止まらない。機関部に向け綺麗な孔をあけるばかりか、地竜の皮膚に食い込み始めたではないか!



【——髄が、髄が痛ェ!】



咄嗟に地中構造物を掴み、地上へと浮かびあがっていった。









————————————





【お前…タバコ吸ってんだろ。お前はまだ装甲がある分マシじゃねぇか。俺なんて攻撃喰らったら二度と酒もヤニも吸えなくなるからな。で、お前何吸ってんだ】



当然この男も未知の存在に対する恐怖で、ニコチンを入れておかないとやっていられないようだ。



【ブラックメンソール、マルボロだ。此処に来る前にカートンで買い込んでおいた。それがまさか最後の買い物になるたぁな。っていうお前も吸ってんだろ】




誰も彼も恐怖からは逃げられない。

規格外の敵を相手にしている時よりも、それを待ち構えている方が滅入るというもの。



【俺は万年ラッキーストライク。いい事あるといいんだがなァ…。あったか、ほら医療班の新人】



その時。建設機械師団が置いていった地震計が凄まじい振動を感知し、警報が鳴る。



【それだけかァ?——おいでなすったみたいだぜ…!——いつでも撃てるようにしておけ!】



———DaaaaAAAAAAMMMM!!!!!!!———




凄まじい土柱が上がった。間違いなく怪獣だ。

高さ15m、背負った高射砲のような物体が例の大火災を生むレイガンだろう。



「ゴジラじゃねぇか…」



主体砲車長は余りの姿に言葉を溢す。












———————————










———ZLDaaaaaAAASH!!!!!———ZDaaaaaAAASH!!!!!




夥しい砲弾が地竜に向かって飛んでいく。

155mm、170mm。種類を選ばずありとあらゆる砲弾が流星のように流れる。


砲撃と硝煙の背後では難民が逃げ惑っていた。



流石に大口径砲という事もあって、非常に薄いものの効果がある様子。

冴島大佐が攻撃を浴びせていた事もあるのだろう。いくら怪獣と言え生物だ。




ありったけの対地ミサイルや爆弾。戦車砲を浴びせられた訳である。

いくら何でも絶対に「ガタ」は来る。



【痛テェじゃねぇかよ、せっかくだから派手にやろうぜ!】



ガタガタと安定しない魔導シューター基部が光るが、何やら様子がおかしい。

銃の薬室にあたる部分に大穴が空いており強大な魔力が漏洩し始めているではないか。



辺りに筆舌にしがたい光が散らばり始め、行き場を失ったエネルギーが暴走。その行く末はたった一つ。






————BPHooOOOOOOMMMMM!!!!!!————


暴発だ。







戦車一両をアイスの如く融解する熱量を持ち、さらに拡散する質の悪い兵器。

それが制御できなくなれば大爆発を起こす!




魔導シューターが縫い付けられていた部位が背中の皮や肉ごと吹き飛び、一番の脅威である巨大飛び道具が脱落した。


もう二度とヤツは忌々しい光線を撃つことはできないだろう。



【YOGA01から各車、バケモン追い詰めろ!絶対に近づけさせるな!】





戦いには希望が見えない。






———————————








ポポルタ線を突如として襲って来た脅威。



15m大のビルとさほど変わらない怪獣でも恐ろしいというのに、背中には破壊の権化 魔導シューターがついた改造地竜とSoyuzが戦う様は嫌でも人々の間に伝わっていった。



現場作業員として現地にいたソフィアの耳にさえ届くまでに。


【ダメだ!機関砲じゃ歯が立たない!】


【榴弾砲撃ち込んで…ようやく効き目ありかよ……!】


兵士が無線機を片手に激しく言い合っているのが漏れてくる。


機関砲が効かない、戦車砲では効果が薄い。



あれだけ帝国軍を屠って来た火砲の数々が一転。

どれだけ戦車砲を浴びせようが、ありったけの機銃を撃ち込もうが勢いを止めることができないときている。



逃げるかどうかの瀬戸際、現に整備班の人間は避難誘導に当たっている最中。




————BPHooOOOOOOMMMMM!!!!!!————



何やら遠くで巨大な爆発が起きた!


ソフィアの下に強力な衝撃波と音が津波の様に押し寄せる。

今までの戦車砲の音とは明らかに違うだけでなく、それだけ戦いが近いという事。



だがこのポポルタ線には多くの人々が取り残されている。


残された数少ない皇族として見れば、今すぐ逃げるべきだろう。

そう思って背中を向けた時、不意にあることを考えてしまった。



逃げてばかりで良いのかと。



そんなことはない、あの時だってイデシューに囚われていた妹を助けたではないか。

心の底から自分を堕落させる甘ったるい声がささやいてくる。



神の一族としてこの世に生を受けておきながら、高貴な身分とそうではない間を都合よく使ってきたのだろう。


どんなに周りが否定しようが関係ない、自分の事は一番自分が分かっている。



逃げてはいけない。


ソフィアは歯を食いしばって爆発のした方向へと走り出そうとしたが、あることに気が付いた。



「火器が通用しない相手にどうやって立ち向かうのか」と。



いくら勇気を持って戦おうと言っても、武器を持たねば意味がない。

そもそも戦車砲ですら効果が薄いような相手に、適当な銃火器で立ち向かえるのか。



だが彼女には勝算があった。

このポポルタ線にしかない「あるもの」を利用して。










————————————








——KA-BoooOOMMM!!!——ZRDADADADA!!!!





遠方から聞こえる銃声で満ちた居住区。もはやここは戦場と言って差し支えない。


何時焼かれるかという瀬戸際だというのに、整備班の長 榊原は避難誘導にあたっていた。

自分に出来る精一杯のことと信じて。



「いいか、慌てるんじゃねぇぞ。慌てず、急げ―――」



サングラスで真っ黒になった視界の片隅で、何かが最前線へと向かっているのが写り込む。

整備班の作業着には似つかわしくない高貴な姿、ソフィアで間違いない。



何をしようとしているのか分かってしまった。



すかさず口からは引き留める言葉が出ようとしたが、これも彼女が出した答えの一つ。



「……しっかりやれよ」


小声でそう呟きながら日々大きくなっていく背中を見送った。




その傍らソフィアは夏の火に飛び込む虫のように、逃げる人々に逆らいながら野ざらしになっているイデシューへと向かう。


背格好は恐らく同じ。搭載されている武装では歯が立たなくても上等。

とんでもない馬力で殴りつければ多少なりともダメージは見込める。



何より、逃げるよりはずっとマシだ。



「あった……」



足場が組まれ鎮座する巨大な騎士の像。これが機動兵器「イデシュー」



ただの的同然の人質兵器だったものを整備班の気まぐれで武装の追加、さらにはソフィア限定ではあるものの有人機に改造してしまった。



しかし途中で飽きたのか、作業用の足場だけが取り残され展示物同然の扱いを受けているらしい。



DAPDAPDAP!!!



ソフィアは迷うことなく足場を駆け上がり、丁度胸元の動力炉にたどり着くと奥へと足を踏み入れ様子を伺った。



試運転時の時とは大方変わらない。



しかし妙な配線が通された先には、得体の知れない制御装置やら、モニターが設置されており、加えて明らかに操縦とは関係がない戦闘機用の操縦桿が設置されているではないか。


決心はついている。

コックピットに身を埋めたその時、雑に内部に取り付けられたソ・USEに無線が飛び込んできた。



【俺だ。榊原だ。言い忘れたことがある。一度しか言えないからよく話を聞け】



ソフィアはモニターを確認しながらどこを映しているかを確かめる。



【そいつの丁度耳元にはガスト式機関砲がついてる。操縦桿の上についてるボタンを押せば弾が出る。残弾は3000あるが引き金を引いたままだと1分足らずで撃ち切るからよく気を付けろ】



彼女から引き出された膨大な魔力が立像の上腕と膝関節をつなぎ、騎士のオブジェは戦士へと姿を変えていく。



【んで、肩には122mmロケット砲がある。四角い箱についた黒いボタンを押せば1発出てくる。機関砲もロケットも撃ち切ったらそれで終いだ。言うまでもないが「よく考えて」仕事しろ】




有人機に再改造されたことから、視界はコックピット入り口だけ。

気を引き締めたソフィアの眼差しはナイフの様。




【ロケットは外すと機械師団にドヤされるから撃つなら全部当てろ。やるなら後腐れなく完璧にやってこい。プロなら特にな。】



力を得た機動立像は自らを縛る鉄の拘束具を一つ、また一つと弾き飛ばしながら少しずつ動き始めた……


人々の未来を守るために。

次回Chapter163は11月6日10時からの公開となります


・登場兵器

主体砲

砲を牽引するトラクターに170mm砲を乗せた自走砲。

装甲はないに等しいが、単体でもかなり高火力。

さらにそれを寄せ集めることで「破壊の権化」と化し、あらゆるものを吹き飛ばせる。

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