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SOYUZ ARCHIVES 整理番号S-22-975  作者: Soyuz archives制作チーム
Ⅲ-7. 対 究極兵器 前編
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Chapter158-1. T.P.O

タイトル【時と場合】

性能テスト後、再び保管されたイデシューを前にして、ある整備員が呟いた。



「なぁ、なんでコイツは【人型ロボット】なんだ?」




皇族の囚われていた監獄こと、フェロモラス島から回収された機動立像イデシュー。

高さ15m、重量60tのいわゆる人型ロボット。


騎士の兜にそっくりな頭に、各部関節がないという特異極まりない出で立ちをしている。



ここまでなら普通のロボットで、プラモデルでも出せばそれなりに売れるような見た目をしている物体に過ぎない。


しかしこのイデシューは立派な兵器として作られた物体だ。



15mという高さを誇る像は立派な的であるし、ドラゴンナイトなどの小物すら対装甲兵器を持っているような世界においてはガラクタなのは言うまでもないだろう。



あまりに非効率的で、ただの夢でしかない。


浪漫で動くほど、現実は軽くはないのだ。




だからこそ、この21世紀にも鉄人28号やガンダムだのが兵器として実戦投下されないのだ。

現実はどこまでも酷なものである。



それにロボットの癖をして一切の飛び道具を持っておらず、一騎当千な活躍が出来ないことなど見え透いており、もはや欠陥設計もいいトコロ。



文字通りのガラクタが何故作られたのか。

あまりに不可解過ぎて、彼のようなポポルタ線攻略作戦のためのスタッフの大量動員よりも前。


つまり解体作戦に参加していなかった整備員にはまるで理解できなかったのである。




「そいつがなんでこんなカカシみてぇなのか……教えてやろうか」


そんな時、榊原が背後から現れた。











——————————————











班長は心底嫌そうな顔をしながら語り始める。






「コイツは、あえてこんなバカでかいカカシなんだ。アイツら、はじめっから的になることなんてわかり切ってたんだよ。胸あたりを見てみりゃわかるが、ぽっかりと空いてるだろ?あそこにうちの嬢ちゃんだとか、そういう一族……人質兼ジェネレーターを突っ込むんだと」





「そうすりゃデカい絞首台のできあがり、ってな訳だ。作ったヤツの顔を見たいが……見てきたら、案の定性根が腐ってやがった。あんなのメカニックの風上にもおけねぇ」






彼にとってイデシューは敵味方を必要以上に苦しめるためだけに作られた「拷問器具」




榊原は必要なことしか話さないものの、この上痛覚がリンクしており攻撃されれば人質が泣き叫ぶ仕様になっている。



こうなってくると、自爆特攻兵器が生易しく思えてくる始末。




悪趣味極まりない代物に整備員は嫌悪感を隠せない。




「ゲッ……趣味ワリィっすね……一応作ったワケはわかったんすけど……コレ、どうするんすか」




ごもっともである。いくら異次元世界が冗談のように広いと言っても、こんな悪趣味な像を格納する場所があるだろうか。

重さも60tと無駄にかさみ、動かせるのがクライアントだけとあって移動させるのすら億劫だ。






「そうだなァ…俺も困ってんだ。コイツをどうしたらいいのか、俺自身もわかりゃしねぇ。まぁ、あれだ。なんか使わねぇヤツでもくくりつけといたらいいんじゃねぇか?」



「俺もアイツに手をつけておくってのも癪に障るしな。さぁてどこをイジってやろうか…」




何気ない榊原の一言。


解体するにも無駄に時間がかかるため、一旦はバカでかい棚として使って良いという。





「あ、そんなんでいいんすね」





まだ班長は知らない。

無駄に気合いの入った整備班が、自由にいじって良いおもちゃを手にしたらどうなるかを。




その大義名分を与えるということが、いかなる結果を生むかを。












——————————————————











あんなことを言ってからある程度時間が経ったある日。榊原は自ら兵器類の備品確認作業を行っていた。


異次元が見つかるような世の中である。


カネや女に目がくらんでロケット砲を横流した。間違って爆破した。いつの間にか消えた。

俺は知らない、アイツがやった……



数知れぬヒューマンエラーをいち早く発見するため、自分自身の目で一つ一つ確認するのだ。



「……おい。ジョン公。ちょっと来いや」




鋭く恐ろしい声が右腕のジョンを呼ぶ。

副班長である彼を呼びつける時、大抵ろくでもないことが起きると相場が決まっている。




そそくさと榊原の前に出てくると、蛇に睨まれたカエルのように固まってしまった。

サングラスの奥の瞳は暗殺者のように鋭く彼を見つめる。



「NPPU23。ハインド用ガンポッド。バカみたいに弾を吐き出す機関砲のポッドだ。あれが1つ無くなってる。あと122mmの6連ロケット。グラード用のアレも1つ。それに、23mm砲弾も3000発もどこかに消えてんだ」




「こんだけの数とモノだ。なくしましたじゃ済まねぇな」






Soyuzで活躍中の攻撃ヘリコプターことMi-24系列には様々なオプションが存在する。



ロケットポッドやミサイルのほかにも、機関砲と弾がひとまとまりになった「ガンポッド」もあるが、いかんせん影が薄い。



それもそのはず。ロンドン討伐にはロケットポッドの方が便利だからだ。



どうやら心当たりがあるのか、気まずそうな顔をしながらジョンは答える。



「……ハイ。その……あのアレに置いてあるんです。変更忘れです」



「……アレか」



点と線がつながった。












———————————————












「俺が手を付ける前にやってくれたな……」



榊原が怒気を孕んだ声を漏らす。



消えた3000発もの弾薬と機関砲と6連ロケット砲。



忽然と消失したわけでも、誰かが借金のカタに売ってしまったわけでもなく、イデシューに括り付けられていた。



ガンポッドから中身の機関砲が取り出され、頭の丁度側面。耳にあたる位置に1門設置済み。

また、ロケット砲は肩にオフセットされており実用性は担保されているらしい。



よく見るとコンソール系統もコックピットに取り付けられ、しっかりと使えることが伺える。





「お前……どうなるかわかってんだろうな」




「わかってください!これは断じて違う!断じて!」





殺意すら籠った眼差しをジョンに向ける。

確かに棚にすれば良いとは言ったが、兵器として使える段階にまでとは一言も言っていない。




それにジョンとて曲がりなりにも監督者だ。知らなかったでは済まされない。そのための立場というものだ。



「もういい。俺の責任でもある、あとで申請書いとく」




どこで必要になるか分からない物体を勝手に使われ、挙句の果てに妙な物体に装着され

た。


我慢に我慢を重ねたが、もう今度という今度は許せなくなった榊原は叫ぶ。






「それよりもガスト砲を着けたバカはどこだ!」







——————————————————









——整備工場 バックヤード




作業にうつる前に、ソフィアは事の顛末をジョンから聞かされていた。




「——そういう事が」



「……ああ。そういうこともあって親父に殴られた。疲れてグッスリ寝てる間にあんなことされるなんて夢にも思わなかったぜ……そうそう、いじられた結果だ」




ついでに彼は殿下に無残に改造された後の写真を手渡した。


毎分3000発を超える、凄まじい量の弾薬を吐き出し、敵を八つ裂きにするGsh-23。

BM-21 自走ロケット砲から持って来たであろう6連装ロケット。



今まで殴り合いしかできなかったイデシューが重火力を得た紛れもない証拠である。




そんな状態にも関わらず、ソフィアは何処か不満げな顔をしながら淡々と指摘し始めた。





「しかし、まだまだ不完全と言えます。なんせこれらを撃ち尽くした場合、補給は一体どうするつもりなんでしょうか。やはり、一つだけでも良いのでイデシューそのものに再装填できるような武装を———」




「やめてくれ。俺が殴り殺される」




整備班の苦悩は始まったばかり……


・登場兵器



・ガスト砲

一応は機関砲。

ここで装備されているのは「GSh-23」というもの。ガンポッドに無理やり押し込めてあるのを取り出した。

仕組みとしては、片方が撃つたびにもう片方が装填される。要するに超すごいバケツリレーである。

ガトリング砲のように重くならず、毎分3600発という凄まじい弾丸をばら撒けるようになった。


しかし、持てる弾の数が圧倒的に足りないので調子に乗って撃ちまくろうとすると、2秒足らずで弾切れになってしまう。


・グラード

ここで登場するのは「BM21」……の、後ろについている四角いランチャー。

122mmと多連装ロケット砲界隈では比較的小さい方で、安いので数をどっと揃えて撃ちまくる運用するのが吉。


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