表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SOYUZ ARCHIVES 整理番号S-22-975  作者: Soyuz archives制作チーム
Ⅲ-7. 対 究極兵器 前編
180/327

Chapter155-1.Weapons are always sudden.

タイトル【兵器はいつも突然に】


対Soyuz戦闘において、帝国軍が手も足も出ない場所があった。


航空戦闘である。


ガビジャバンが導入してきた天馬騎士ペガサスナイトに対抗するため、ファルケンシュタイン帝国は竜騎士ドラゴンナイトを投下した。


羽毛を持たないが故に高い耐火性能を持ち、強靭な鱗は矢を受けようとも致命傷に至らない。さらには城の付け火に丁度いいブレスを吐き、積載量(ペイロード)も多くできる。


やや動きが直線的で速度は出ないが、それを上回るだけの利点がある。


大量投下も相まって制空権を掌握し、度重なる戦争で勝利を収めてきた。というのが今までの流れ。



ここで一つ、根幹的な部分を見てみよう。

火力と防御力に秀でた「だけ」であり、持つ武器自体は馬に乗った騎兵と大差ない。



度重なる小競り合いや戦争で空騎同士の格闘戦についても独自のノウハウが蓄積されてきたが、それでも武器は専用の長槍か剣と、やはり空を飛ぶ()()()ということに変わりない。



飛び道具が無い訳ではないが、火のブレスか持ち込んだ弓矢くらいのもの。

また、マスケット銃がある事にはあるが、射程・威力・再装填にかかる時間。



一瞬が生死を分ける空対空戦には如何せん相性が悪すぎた。


こんな体たらくでSoyuzの持ち込んだ戦闘機、もとい航空機に太刀打ちできるはずもなく、大損害を出し続けている始末。


圧倒的な手数と射程距離を持つ機体にはこのような竜騎士はカモ以外の何物でもない以上、ある種運命と言えよう。


しかし、諦めてはいられない。


帝国はシルベー県が制圧された段階でSoyuzの航空戦力を脅威と考え「一撃で敵航空目標を撃墜できる新兵器」を開発するように命令を下した。


そこまでいいが、そう簡単に開発できるはずもなかった……











————————————






——ナンノリオン県

魔導兵器開発局






ここはナンノリオンにある秘匿された魔導兵器開発局。


日々、数多の魔導を利用する兵器や製品が生み出され実用化されてきた由緒正しい開発局である。


あのユンデル式装甲の実用化や、あまり数は出せてはいないが量産化に成功したのも此処であり、腕前は言わずもがな。



そんな有望な研究所でも、帝国の打診してきた兵器の開発には難航していた。



「クソッ……どうしろって言うんだ」



魔導技師は頭を抱えながらぼやく。

敵は一歩一歩確実に攻めてくるというのに、現状に目を向けると成果を出せていない。



航空機銃は工業技術的に真似できないため、使えそうなものとしてオプティムを挙げた。

しかし構造がやっかいで不良品が続出。どのみち量産するのは頓挫してしまう。


出来上がった試作品はゲルリッツ中佐一行に供与しているが、どこか嫌な予感がするのは気のせいだろうか。



次に出来上がったのは投擲と共に誘導する槍だが、投げるという性質上射程距離は絶望的。

射程外から無慈悲に攻撃され、いつものように撃墜される未来が見える。

こんなのを持っていたところで焼石に水だ。


大体の話、敵の射程が長すぎるのが問題である。



そんな時。

悶絶している技師の下に、余裕そうな魔導士が冷やかしにやってきた。



「そうかっかすんなよ。こっちまでクソになってくる。どのみち、ガタガタ抜かしても意味ないぞ」



「じゃあ策の一つでもあるってのかよ」




「ない。あるわけないだろ」



テスト前に何の勉強していない。もはや達観に似たような返しが降りかかる。


この魔導士も問題を把握しているが、どうしようもないと匙を投げているのだろう。




普段は軽口ということで流せるが何せ状況が状況。

敵が目前に迫っており、日に日に戦況が悪化している。



国家存亡の危機に技師は相当に焦りが募っているのか、歯をむき出しにしながらこう言い放った。



「次ふざけたこと言ってみろ、瞬きする間にダールでテメェをぶっ飛ばしてやる」



誰にだって余裕はない。


技師は肩透かしに本気で腹が立ったのか、壁に掛けてあった対装甲槍射出器 ダールを向けて喚き垂らす。



「射程差を埋めるためにどうするか話し合って、最初ガロ―バンを持たせようって案が出た!

だがあんなデカブツを空で扱える人間がどこに居る、畑から生えてくるってのか?あぁ!?」



「機密情報を喚くな——」



「黙れインチキ詐欺野郎!次にオプティムを作った!そうしたら歩留まりが悪すぎてまともなの1つ作るのに何個作ったか覚えてねぇ!テメェに分かるか!んで次にできたのが役立たずの誘導槍だ!どうやったって射程が伸びねぇのは目に見えてる!」



売り言葉に買い言葉。なだめていた魔導士も怒りが伝染し始めた。



「ああクソ!クソが!どうせなら試してみるか!?上に奴らがいるぞ!クソみたいな槍をバカみたいな筒に突っ込んで撃ったら叩き落せるかもな!」



そんな時、丁度上空から何か轟音がする。


両者、鬱憤が溜まり過ぎて錯乱したのだろうか。否、Tu-95を使ったSoyuzの定期偵察機だ!



——VEEEEEEEELLLLLL………——



機影がくっきり表れており、迎撃騎が出ているが高度差のためか引き返している。


丁度、無意味な口げんかしているのは中庭だ。

空が開けており、破れかぶれのテストには絶好の機会!



「やってやるよこの野郎!」



「勝手にしろ!」



技師はダールの筒先に誘導槍を放り込み、狂気的な速さで狙いを定めて引き金を引いた!



BPooOOMM!!!!



何時もの通りに放たれた対装甲槍だが、やはり風魔法を浸透させた物体。


勢いよく射出されると、明らかに物理法則を無視した角度。丁度ベアのいる方向に曲がって飛んでいったではないか。



それから数分が経った頃、怒り心頭の工場長が受付に殴りこんできた。



「雨の代わりに槍かよ!なんなんだこの野郎!お前らの妙な実験はたくさんだ!」



どうやらかなりの間Tu-95を追いかけていたらしく、離れにある工場に力尽きて落下してきたのだろう。


それを小耳に挟んだ魔導士が囁く。



「いい線行ってんじゃねぇか」



「……全くだ、責任をだれか適当に押し付けて、草案を局長に提出してみる」



発明とはいつも突然。神様が巻いた思いがけない種があらぬ場所で芽生えてしまうこともある。ある種、悪戯好きの神の気まぐれか。



こうして何気ない発見や試行で生まれた物体が、回り巡ってSoyuzに牙を剥くことになるとは誰も知らない……


登場兵器


・Tu-95


ソ連の戦略爆撃機。

核兵器を搭載するため積載量がずば抜けて多く、威力の高い対艦ミサイルや恐ろしい量の爆弾や、性能の良いカメラなどの機材を搭載して長距離を飛行できる。

また最高時速925km/hと初期ジェット機に匹敵するくらい「足が速い」という特徴を持つ。


これで非ジェット機なのだから驚きだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ