Chapter145-2. Top secret case: S-22-975
タイトル:【特機密事案レベル22-第975号】
——虎ノ門
——Soyuz本社ビル
あなたはSoyuzの一員。
アラスカ級大型巡洋艦 サウスパークの艦長。
世界中に散らばった、何の変哲もないSoyuzの司令官である。
そんなあなたが虎ノ門にあるSoyuzの本社ビルに名指しで呼ばれていた。
地球に根を張る恐るべき大組織の総本山に。
勤務は真面目、人事からの評判も良いあなたが何故。それも要件は専務のロッチナ氏に会えば良い、と受付に伝えればよいとだけ。
しかし呼び出されたのは事実。
気味の悪さを覚えつつも、境界のような自動ドアを潜り受付に告げる。
「ロッチナ氏の案件で」
「はい、かしこまりました。少々お待ちください」
本当に一言で良いらしい。
受付嬢はどこかに内線をつないでから、はや5分。黄金の角刈りこと専務ロッチナが姿を現した。
「私としたことが待たせて申し訳ない。手間をかけるが、地下まで来て欲しい」
噂によればSoyuzの地下フロアは特殊な構造をしており、電波を通さないと聞く。
繋がるのは敷設された内線インターネット回線のみ。
その有線LANも組織の監視下に置かれており、アリ一匹通さない。
正に世の中と隔絶された聖域で専務という立場の人間が一体何を話すのだろうか。
——PEEP
「少しばかり聞かれるとやっかいな内容なのでね……」
ロッチナはカードキーを通してエレベーター扉を開けるとあなたを導いた
あなたは彼に連れられ、地下へと通じる聖域と誘われる……
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□
——地下4階
会議室
電波さえ遮断する扉がガチャリと閉じられると、そこには無機質な事務机とイスが墓標のようにずらりと並べられていた。
「座りたまえ」
ロッチナにそう言われると、あなたは椅子に腰かける。
「貴官は第四軍団への配属となった。これは既に決定事項だ」
Soyuz第四軍団。
公の発表では第三軍団までしか存在しないことになっている。
組織代弁者であるロッチナから「存在しない」軍団に配属されたと告げられた時点で、ロクでもない作戦に投下されるのは間違いないだろう。
良くて表の世界では決して日の目に当たらない秘匿作戦か、それとも世界のバランスを完全に崩壊しうる何かに関る羽目になるのか。
だがそれはあくまで工作員やスパイと言った能力はあるが階級自体はそこまで高くはない役職が多い。
あなたはそうではない、真面目な人間だ。
疑問を口にするよりも先にロッチナはこう弁明する。
「いきなり亡霊の集団に放り込まれても気持ちが良くないだろう。何故、貴官が第四軍団に配属された理由に関して説明させてもらう」
勤勉、実直なあなたが配属された理由とは如何に。
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□
「現時点でSoyuzは世界の均衡を維持することに成功している。キューバ危機のその先や世界滅亡に至っていないのは貴官も知っての通りだ。
だが、そうも居られない事態が発生してしまった。
横浜本部基地の格納庫が異次元に通じたことが証明されてしまったのだ」
「その先には文明や未知の人間や生物や国家。未発掘の資源や未知のエネルギーの存在が確認されている。早い話が新たな新大陸、いやそれ以上の大発見となるだろう」
「現在は政情安定のために多くのリソースが送り込まれているが、それも年内に収まることだろう。貴官は新大陸に派遣されることになる」
とてもではないが信じがたい情報の羅列にあなたは混乱を隠せない。
別次元など本当に存在するのか。
だが専務の口ぶりからして、驚かせようなどというハイセンスなユーモアではないのは明白。
でなければ電波暗室で話をするわけがない。
ロッチナは続ける。
「普通はこれだけで終わるが……貴官はさらに情報にアクセスする権限を持っている人間だ。何故秘匿されるのか、私の口から話させてもらう」
「何事でもそうだが、人間は利用価値があると知るや否や骨の髄までしゃぶりつくして捨てる生き物だ。
多くの人類で組織されている我々も例外ではない。
古くは大航海時代のアメリカ大陸の発見、アフリカの奴隷貿易。そして現在も脈々と続いている。
よって、この大発見は現在の人類には手を余す」
「資源は際限なく掘り尽くされ、人間は理屈をつけて奴隷貿易の材料にされる。それだけではない。
異次元由来のリソースの急激な流入は世界の均衡を大きく崩す。
最早破壊と大差ない」
「よって地球にいる蛮族にアクセスされてはならない。なんとしてでも遮断する必要がある」
いくら理屈を捏ねても人間の本質は変わらない。野蛮な存在がいる限り、搾取と略奪続く。
それが異世界を秘匿する理由には余りにも十分。
見つけたのがSoyuzでなければ。そう考えただけで額に冷や汗が滲む。
「そういう事だ。理解してくれたかね。ケニー・ロジャース中佐」
あなたはアラスカ級大型巡洋艦サウスパーク 艦長。
Soyuzの一員だ。
登場兵器
・アラスカ級大型巡洋艦
アメリカ海軍の運用していた巡洋艦。主砲は巡洋艦では破格の30.5cm砲をいくつも搭載する。
火力だけでいえば戦艦、速力などは巡洋戦艦と重巡洋艦の間、言うなれば極めて中途半端な艦となってしまった。
しかし、砲火力を何よりも重視するSoyuzが使えば極めて使い勝手の良い名優になる。
適材適所という言葉が何よりも相応しい。




