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SOYUZ ARCHIVES 整理番号S-22-975  作者: Soyuz archives制作チーム
Ⅲ-6. ポポルタ線の戦い
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Chapter138. Class change to Colonel

タイトル【大佐への昇格】

ポポルタ線侵攻に向け準備している最中に現れたラムジャーを許さない市民の会。

彼らを活かす妙案とはなんと自走砲の装填手だった。



「あそこに立ち並ぶ砲があります。そちらでいうシューターにあたる兵器なのですが、当然弾も相当な重量があります。城塞戦は火力がモノを言います、つまりどうすれば良いのかお分かりですか」



相当に端折った説明だが分かってくれるだろうか、そんなことを冴島は思いながらロジャーの答えを待つ。



「お安い御用です。城を攻め落とすにはそれはもうシューターから何発も撃ち込む必要があるようですからね」



すると彼は珍しく静かに言った。まるで獲物を前に用意を整える猛獣のように。


市民の会と言っても彼らは昔のガビジャバン捕虜の子孫。

いざという時は戦わねばならない。その術は親から子へと確実に伝わり、現在に至る。


そして今こそ、受け継がれし力を他人のために発揮すべき時が来た。


だからこそ彼らはそこに立っている。



「了解。装填方法に関し、砲手からみっちりと学ぶように」



アツい魂を確かに見た少佐は市民の会がそうしたように、拳を胸に当て向こう側の敬礼をしながら的確な指示を下した。







——————————






———ウイゴン暦7月27日 既定現実8月3日



「少佐。最初は使い物にならないことを前提にしていましたが、奴ら飲み込みが早くって。だいぶ使い物になるように仕上げました。もう即席じゃあないかもしれませんね」



自走砲装填手からの報告を冴島は真摯に受け止める。



「ご苦労。奴らもここの将軍を打倒すために魂を燃やしている。それくらいやってのけてるだろう」



今まで虐げられ続けた人々が満を期して攻勢に立つ。


選ばれた舞台に立てるのだからそのための努力は惜しまない。

彼らは寝る間を惜しんで訓練に撃ち込んでいた姿を見て、冴島はそう感じていた。


一幕を終えると、村の背後から轟音の群れがやってくる。



夥しい数の装甲車両と機械化歩兵、さらに突撃砲(SU152)


3000人規模の本隊がギンジバリス湾から遠路はるばるゾルターンにやってきたのだ。


ギンジバリス市沖には本作戦のために持ち込んだスラヴァ級ミサイル巡洋艦 クラスノイ・ヤマールが控えている。



制圧ではなく、今度は完膚なきまで破壊することを考えればコレくらいの人数が妥当だろう。


むしろ今の今までけち臭い部隊で戦ってきたものだ。ブリーフィングを行おうと一歩踏み出そうとした瞬間、彼を呼び止めるが人間いた。


伝令兵である。


だが指令を下すなら無線でいいはず、特別な要件があるに違いない。



「中将閣下から冴島少佐に伝令です。今回のポポルタ線攻戦ですが。指揮するにあたり少佐から大佐への昇進。また、必ず悪の居城を粉砕せよとの事です。」



城塞戦の指揮は任されると思っていたが、3000人規模の部隊が送られるにあたって何かあるだろうと踏んでいた。


中将もなかなか自分に信頼を置いてくれているものだ。


いや、だからこそ失敗するなと脅しでもあるのだろうか。


自らを落ち着けるためにもスタッフに冗談を言ってのける。



「二階級特進…俺はいつから死んでることになったんだ。」



「ここで死なれちゃたまらんですよ、少佐…いや大佐。今回の作戦は大掛かりになりますよ。中将閣下も検疫を通しに通してこんだけの大部隊を寄越したんです。気合入ってますからね」



無数の突撃砲SU152やT-55に72。それに夥しい数の装甲兵器。


今までの増援よりも数も質も違う。絶対に押し通るという気迫が見て取れる。

ここさえ陥落させれば戦争そのものを勝利はほぼ確実のものに出来るだろう。



「わかっている。これからブリーフィングを行う、直ちに人を集めてこい」



「了解」



そう言いながら少佐は村を後にした。






—————————






3000人近い規模では流石に村内では邪魔になることから、兵器類がまとめて置かれているアルス・ミド村近郊にて大規模ブリーフィングが行われることになった。



と言っても大演説のように冴島大佐がすべての兵士に顔を出すのではなく、部隊長などの代表に作戦内容を説明し、それを理解した指揮官がスタッフにいきわたらせる。


こうすれば浸透が早く、軍隊といった縦割り組織の強みはこういった所にあるのだ



「本作戦は34km先に存在するポポルタ線と呼ばれる敵城塞への侵攻並びに、殲滅である。初日は進軍し、敵を排除。10km地点にて移動対空陣地と前線拠点を構築する。だが相手もそれを許してくれる程甘くはない。」



「またこれまでの戦闘から、敵は可視光で見ることが出来ない一種の光学迷彩兵の存在が確認されている。

左右の丘陵地帯に赤外線暗視装置を装備した狙撃兵を配置しこれを排除、諸君ら装甲車両部隊は城塞の破壊に専念せよ。」



大まかに言えば、砲火力を追い風に10kmまで進軍。


そこからありったけの火力を撃ち込みながら接近し城門を突破する。


内容を理解していく部隊長らであったが、ある一人が手を挙げた。



「大佐。光学迷彩歩兵の持つ兵装について説明をお願いします」



「——うむ。諸君らは耳を疑うかもしれないが、奴らは魔法を得物にしている。これは以前の戦闘のものだが、BMPが中破させられている」


「爆風を直撃させられただけでコレだ。80mm迫撃砲の榴弾が直撃したのと同じと考えてい良いだろう。主力戦車のみならず、時代遅れの重自走砲を持ってきた理由だ。」



U.Uで実戦経験のある指揮官は驚くことはなくとも、初めて帝国に足を踏み入れた兵たちは妄言かと疑う。


そんな彼らに冴島は写真を表示しながら、事実を突きつけると黙り込んでしまった。



「また説明したように、敵は丘陵地帯に挟まれた先に要塞を構えている。向こうからすれば爆風から身を守ることのできる場所は多い。

諸君らも知っての通り、装甲車両は視界が狭い。それを補うため狙撃兵を配置している。」



小回りが利かず、戦車の第二の目である随伴歩兵を出せない環境において、歩兵を配置するにはこれしかなかった。



「城門突破後は市街地戦へと変化する。情報ではトーチカが無数に設置されているという報告がある。優先して破壊せよ。敵火力が低下次第、現場判断で機械化歩兵を投下しても構わん。敵全てを消し去れ」



壁の向こう側は無数の陣地が織りなす地に変化し、戦い方も様変わりする。


ここまで来たら勝利は近いが、決して勝負がついたわけではない。

火力と数をもって悪あがきをさせる暇を与えず「()()」する。


そのためにil-2とJu-87(スツーカ)の大群が空を覆うことになる。


城門ももちろんの事、大量の爆弾が要塞内部にも雨あられのように降り注ぐ。


古典的だがトーチカを吹き飛ばすにはこの方法が最適だ。



「作戦内容は以上だ。質問、不満要望があれば直接に言うように。」



こうしてSoyuz大集団は着々と敵を攻め滅ぼす準備を進めていくのだった。






—————————





———同刻ポポルタ線28km地点



凄まじい数の敵がやってくる事はロンドンを通じてゲイルの耳にも入っていた。


ついに2500人の自治区討伐本隊と合流したことにより戦力は大幅に強化され、囮にする前方には透明魔導士と騎兵混合中隊を配置されている。



かくして防衛陣地が組まれ、いつ来るか分からない敵へ備えていた。


本来であれば偵察を出すところだが、各地でペガサスナイトが撃墜されたという報告が相次いだことから、弾切れを恐れたゲイルは出し渋っていた。


表で胸を張って動かせる竜騎兵という手駒を失いたくないという考えもある。



一応、最前線に立つ部隊が敵を発見次第、狼煙を上げることで交戦が始まったことを知らせることになっているが、どこまで通用するか分かったものではない。


高所にはスナイパーとソーサラーが姿を消す魔導を常に使用して待機しているものの、彼らにとって消費する魔力は少ないと言っても使うことには違いない。



「どうだ。自分の姿が見えねぇってのにも慣れたろ」



「その通りであります」



当初は使い勝手に困っていたスナイパーにソーサラーは調子を伺う。


何せ敵は目がいい、ついでに習ったこの魔法が役に立つとは夢にも思わなかった。



軍曹にしてみれば周りは見えるのに、自分の腕やガローバンが見えないという不可思議な感覚は受け入れがたいもの。


イメージすれば敵に向かってくれる魔導ではさほど問題にならないだろうが、はっきり言って狙いもつけにくい。



もっと言えばクソッタレだ。

だが得体の知れない遠距離から攻撃を受けて死ぬよりはマシ。そのことを良く分かっていた彼は努力の末適合することができたのである。



「そろそろ時間切れだ。上書きしておく」



「ありがとうございます」



そうして上書きすると、曹長は愚痴を吐き始めた。



「——あの騎士様が上に居るのは納得できねぇ。後からずかずかと来ておいて」



そんな彼は本来の騎士将軍、ヴィッツオの息が掛かった兵である。



いくらラムジャーの命令とはいえ、ロンドンと手を組むことについて素直に受け入れられるはずはなかったし、帝国軍の恥ことゲイルの部下になることはもっと受け入れがたいことであった。



「っても司令官になったんじゃあ何も言えないでしょう。」



上官からの命令は絶対な軍において、しのごの言ってられない。



「だからだ。腹が立つっちゃありゃしねぇ。…クソッ」



そんな中、彼らのはるか頭上を偵察竜騎が通り過ぎる。

ゲイルは偵察を出すことをかなり渋っていたが、決して出さないとは一言も言っていない。


いかにも無法者らしい理屈である。



戦場において情報は勝ち負けを揺るがす因子。ヤツも気が変わったのか、極稀に竜騎兵を出すようになっていた。



「それにゲルリッツ中佐率いる部隊も全滅したんでしたっけ?それにサルバトーレ少佐だって行方が知れないとか。かの英傑でもダメなら俺達じゃあとても…」



前の戦争で目覚ましい功績を挙げた英雄ですら歯が立たずこの有様で、自慢の竜騎兵ですら埃を払うかのように撃墜してくるときた。



それに上級兵職の誇りは勝利まで補償してくれる程手厚くない。いかに訓練された兵士と言っても弱音の一つくらい吐きたくなる。



だが曹長はそんな彼を容赦なく殴りつけた。



「貴様、仮にも下士官だろう。部下に示しがつかんぞ」



内心、曹長も似たようなことを考えていた。全体の士気が下がっている今、こんなことが他の兵士の耳にでも入れば隊はより一層纏まりを失ってしまう。


軍隊の強みは団結することにある以上、それを欠けば各個撃破される未来が待っている。



たとえそれが形だけだとしても重要なのだ。



そんな時、遠方から鈍い衝撃音が響く。先ほど偵察に出ていったドラゴンナイトが撃墜されたのである。




———GRASHHH!!!!



「クソッ、毎度このざまだ。空からじゃ何も見せてくれやしねぇ。あの距離ならマシな方だ、多少何かが見えたろう。きっと馬乗りが回収してくれる。」



曹長の視線の先には小さくも人影があった。Soyuzの対空兵器によって撃墜された竜騎兵である。


しかし幸いにも当たり所が良かったようで、空中でグライダーを展開、城塞側へ滑空中といったところだろう。


アレなら回収は容易、ミサイルを撃たれ飛龍共々吹き飛ぶよりはマシな部類なのは確か。



双方それぞれ準備を続け、避けられぬ大戦に臨む。


此処を突破し戦況を逆転不能に持ち込みたいSoyuzと、防戦一手を打開する逆転の布石を何としても作っておきたいゾルターン側の戦い。



絶対に譲れない戦いが始まろうとしていた…




次回Chapter139は5月28日10時からの公開となります。


・登場兵器


・il-2/Ju-87

ソ連とナチス、相反する二つの攻撃機と爆撃機。Ju-87は対トーチカに、Il-2は施設や固定された砲台などに強い。Il-2は死の羽音を、Ju-87からは絶望のラッパを響かせることだろう。


・SU152

ソ連の自走砲。無敵と言われた重戦車KV-1Sが素体となっているため、凄まじい防御力を持ちながら、152mm砲という大火力で敵を打ち砕く悪魔のような存在。これで弾数が多ければ非の打ち所がないのだが。


・スラヴァ級ミサイル巡洋艦 クラスノイ・ヤマール

ソ連海軍の巡洋艦。何かとは言えないが、ここのところニュースの露出が妙に多い。

これでもかと対艦ミサイルをずらりと並べた様はまさに攻撃の鬼。

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