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SOYUZ ARCHIVES 整理番号S-22-975  作者: Soyuz archives制作チーム
Ⅲ-3. ギンジバリス沖海戦
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Chapter107. WARNING!! The gingivalis’s fleet

タイトル【警告:敵海軍戦力接近】

敵と味方の軍艦。役者が揃えば戦いが始まった。


一本の剣だけで一兵卒から成り上がった剣豪英雄の名前を冠した戦艦サルバトーレと、ナジン級フリゲートの接触。

互いに相まみえることのない戦いに両者驚き、戸惑いながら戦いがが今まさに繰り広げられている!



JUN-KYUを襲ったのは何も連装シューターによる攻撃だけではない。

竜母から押し寄せてくるドラゴンナイトも同時に襲い掛かってきたのではなかろうか。


船自体はドリフトのように急速ターンし、敵艦を振り切る魂胆だ。そのついでに100mm砲と速射砲が火を噴く。



——ZDaaAAASH!!!!—DASDAS!!!!——



電子制御された火砲は海賊船の放つものとは雲泥の差。


吸い込まれるように火球は飛翔した挙句着弾し、一瞬の閃光と共に鉛色の煙を上げた。

それだけではない、主砲の後を追って57mm砲弾が雨粒のように敵艦を襲う。


「弾着確認!」


敵戦艦に浴びせられたのは榴弾。


最新鋭の軍艦とは言え金属張りの木造船体。いくらタールを塗っていたとしても無視できない穴が開き、途端に火の手が上がる。


帆船と内燃機関を搭載した現代フリゲート。正に勝負にならないと思われた。



——ZDAMDAMDAM!!!!——ZLAAAASH!!!——



だがナジンは天高く対空砲を掲げ、無数の砲弾を放つ!


何を隠そう、竜騎兵がむき出しになった火砲操作要員めがけて急降下攻撃を繰り出していたからに他ならない。


たとえ戦艦が追いつけなくとも竜騎兵は容易に迫ることなど赤子の手をひねるよりも容易。


今まで戦艦に合わせていただけに過ぎない!

全速力で逃げる準急をドラゴンナイトは特急めいて追跡する。


JUN-KYU襲撃の片手間、残り半分は背後の大田切へと向かっていた…







———————



 



———VVVoooOOOOOMMM!!!!!———


これだけの航空目標を前にフリゲートに備えられたAK230は水を得た魚の如く、嵐のように砲弾を吐き出す。


その狙いは無軌道なものとは異なり、縦横無尽に飛び交うドラゴンナイトに向けられていた。


並大抵の装甲すらボロ屑にする機関砲弾の直撃に耐えられず、騎士は名誉を与えられぬまま飛龍もろとも砕け散り、海に吐しゃ物めいて残骸が水面へと落ちていく。



仲間が次々と哀れもない姿と化していくが此処は戦場。

腕利きの兵は形残らぬ屍さえも利用し、スコールのような攻撃を掻い潜っていくのだ。



船首まで迫った騎士たちは稲妻が迸るかのように急降下し始める。狙いは紛れもなく操作要員だろう。



歩兵殺しに特化した彼らにとって、自動小銃程度しか武装していないスタッフは良い餌と言っていい。


今まで蹂躙し続けていた連中が()()()()()()()()



守り神のAK230は周囲の煙突が邪魔で動けない。

もはやどうすることも出来ない絶体絶命かに思われたその時。



——KA-BoooOOOMM!!!——



突如空中で爆発が起き、対空レーダーからドットが消えていた。

奇跡が起きたのであろうか、否。KAC-TEIから発射されたミサイルである。



もう一つのナジン級フリゲートは純正通り速力21ノットとなっているが、設備を充実している。だからこそできる芸当。


その傍ら、一本の連絡が艦橋に飛び込む。


【こちらKAC-TEI。援護する】


【JUN-KYU了解】


準急では対処できない敵を各停が担う。そうして数々の任務を達成、生還してきている。

それは次元を飛び越えようが関係ない事。


団結すれば人の手はどこまでも届くのだ。






——————







——戦艦サルバトーレ



Soyuzの艦艇と正反対の位置にいる戦艦サルバトーレは大混乱に陥っていた。


こちらからは届かない距離から敵は着実に攻撃し、その上速力は俊足とされる本艦を光のように抜き去っていく。帆もない船のような何かが。



周りを見てみれば矢を遮る船体側面に大穴が空き、内部の食糧等に引火し内部では火災が起きている始末。

この程度ならまだ良かったものの、度重なる攻撃でえぐれた部分から煙が濛々と上がっている。



「損傷部から火災発生!」



伝令からの知らせが来た。鎮火しても次なる火災が船の体力を削りにかかるということか。


甲板を伝い、マストにでも延焼したら推進力を失ってしまう。

風起こしこそ魔導士が行ってこそいるが、受け側がやられたら船はただの浮遊物と化す!


炎は煙突のように登ってくる。引火性が低い魔力庫は度外視するとして良いだろう。

使命は一つ、体制を整え追撃を仕掛けること。例え戦艦が敵わくとも構わない。




後ろにいる兵員船から揚陸後白兵戦に持ち込み、制圧すれば希望の一つくらい見えてくるだろうか。



「推進手を止め、燃えている個所をファントンで隔離せよ!なんとしてでも帆に火を近づけるな」



「了解!」



——BooooMMMM!!!!!!———


命令を下した次の瞬間、爆発魔導をはるか凌駕する凄まじい爆発が甲板を襲った。


側面に大穴を開けたそれとは次元が違う。

あまりの衝撃で船は大嵐に飲み込まれたかのように揺れる。


何が起きたかギュンターですら理解することはできなかった。

伝令が状況把握のため艦長室から飛び出すと、近くで腰を抜かして倒れていた水兵を掴み上げ怒鳴りつける。



「何があったァッ!」



「あ、あぁ…。主砲デッキが…まるまる…ぶっとんで…」



目の当たりにしたのは最新戦艦が木くずのように粉砕されていく有様。彼らにとって船は故郷も等しい存在だと教え込まれており、故郷を蹂躙されているのも同じ。


抗う事すら許されず、死にゆく姿に絶望した。


どうあがいても無駄。

この一言に尽きる。



「一体何があったんだ!」



感傷すら許してはくれない。伝令は正確な情報を引き出すべく、哀れな兵士を揺さぶる。



「見りゃわかるでしょう!一番主砲がバラバラになっちまって使いモンになりゃしないんですよ!さっきの爆発で!デッキごとブッ飛んで!何もかもおしまいだ!」



狂気と恐怖によって忠誠すら打ち砕かれた水兵は上司であるはずの伝令に逆上する。それもそうだろう、こんな常軌を激しく逸脱した状況に耐えられるはずがない。



揺れが収まった頃、艦長はデッキに姿を現した。彼自身、表面上では平然としているものの内面では混乱を隠せないでいた。



「船を回頭、二番主砲を使用し応戦せよ。」



仏頂面のまま艦長は指示を下すのだ。末端の人間から見れればまるで他人事のように思われ、当然ながら腰を抜かした兵士の怒りを買う。



「艦長!なんでそんなツラでいられるんです、俺たちゃ——」



ギュンターはたとえ胸倉を掴まれようとも動じない。



「いいか良く聞け、我が優秀な水兵よ。我々には手がまだ残されている。お前にはそれが見えないだけだ。息を大きく吸い、考えろ。考えれねば私の指示に従え。私はお前たちに船を、お前たちは私に【頭】を託していることを忘れるな。行くぞ、船を回し敵に一矢報いるのだ」



船は一人では動かすことは不可能。

たとえ正気を失っていても、今は彼らのような人材が必要なのである。







———————






——重巡洋艦大田切



「主砲、弾着。兵装を破壊。敵艦、回頭中。」


「うむ。」


目の前にいる敵艦を撃破するという花道を大田切は歩んでいた。


竜騎兵の集団が当艦に攻撃のようなものを仕掛けてきたが、自動制御の高角砲と万全のCIWSによって消されている。


JUN-KYUは敵目標に手間取っていたようでKAC-TEIによる支援もあって撃滅。

これをもって確認されていた航空目標は全て殲滅した。




次に知らされたのは無慈悲な弾着確認と兵装破壊の知らせ。栄光ある戦艦サルバトーレを八つ裂きにした正体である。


分厚い鋼鉄ですら破壊せしめる20.3cm連装砲の直撃に耐えられるはずがない、当然の結果であろうか。



この知らせを聞いたチェレンコフ大佐はあることを疑問に思った。

火災発生の知らせが何故無いのだと。



それなりの大きさをした榴弾を木造の物体に対し撃ち込んでいれば火の手は必ず上がる。

いくら不可思議な術を使っても燃え尽きてしまう程強力なものが。


最も、ミサイル艇規模の敵艦であれば主砲の直撃で砕け散っていたはず。

どちらにせよ本腰を入れなければならないことを意味していた。



「各砲、装填完了次第報告せよ。第二射用意。」



「了解」


(いにしえ)の戦艦は船まるごと回して砲を撃っていた。


敵もこれだけ損壊しながらもまだ闘志を残しているらしい。しかしながら大佐に小動物を逃がすような慈悲は持ち合わせない。

一度敵対をした以上、一切攻撃の手は緩めない。それが彼のモットーである。



——zzZDaaAAAASHH!!!!——ZDaaAAASH!!!!——ZDaaAAASH!!!!——



夥しい爆炎と衝撃波をあたりにまき散らしながら主砲は一斉に巨大な砲弾を投射していった。






————————






 大田切が本腰を入れたことにより、敵艦は撃沈よりも凄惨な末路を辿る。


金属で建造された近代式な軍艦と違い、戦艦サルバトーレはほとんど水に浮かぶ木材で構築されており、防御力は虚弱以外の何物でもない。


図体が大きいのも災いし、介錯されることも許されないばかりか、兵装と設備を全て引きはがされ、軍艦だったものはただの流木と化す。



この残骸に乗っていた船員は言うまでもなく、はたから見れば台風の後に流れて来た瓦礫にしか見えないだろう。


先ほどの海戦を余興と言わんばかりに艦隊は進む。


敵艦の後続としてやってきた船に兵士を乗り付ける兵員船は主砲を出すまでもなく、大田切の高角砲と対空機銃のみで処理されてしまった。



陸上とは異なり、常軌をそれほど逸脱していない相手に対し現代兵器は容赦がないということである。



しばしの間航行を続けていると次第に内湾が姿を現すと同時に、大田切の水上レーダーに反応が現れた。



「敵艦発見。二隻。距離15000。」


「種別は」



報告を頼りにチェレンコフは種類を問う。

先ほどの小舟が向かってきたと言うことは港湾に主戦力を温存しているはず、ここからが正念場となってくる。


何が出てくるか分からない魔化魍李(アンノウン)をつつくわけなのだから。



「一隻は先ほど交戦したものと類似したものですが、もう一隻が…帆船に違いないのですが、側面に飛行甲板らしき物体を確認しています。空母かと。」


「うむ。」


チェレンコフはこの報告をもって、交戦よりも今後控える交渉に身構える。

だが息絶えたかの如く、対空レーダーには戦闘後ぱったりと反応を示さなくなった。



軍艦と航空戦力をセットで運用する際、空母からは絶えず航空機が供給されるのが常。

それが行われていないと言うことは、即ち戦力を失い、弾切れする。



格納場所に場所を取られ重武装はできないため、大田切にとっては風呂場に浮かぶゴムのアヒルと同等。


いざとなれば木っ端みじんに出来るだけの能力を持っている以上、向こう側にいるのは只の敵国所属船。


今後考えるべきことはもっと別にあることは明らかだ。







——————






 Soyuz重巡機動艦隊が目にしたのは、スペインのバルセロナやマヨルカ島のような古き良き港湾だった。


懐かしさを覚えるよりも、歴史書の奥底に埋もれてしまうような時期に作られたであろう遺産のような港町。


沖には幻影のように映る島が見え、軍事目的でさえ来ていなければなんと素晴らしい事だったろうか。



 チェレンコフ大佐は敵艦に20.3cm砲を向けながらJUN-KYUに搭載されたスピーカーによる投降勧告を行うよう、バートラー少佐に指示を下す。


どれだけ風光明媚であろうと大佐の心は揺るぎない。あくまでここは戦地、観光しに来ているのではない。



【えー、無駄な抵抗をやめ、直ちに降伏しなさい!こちらは、そちらの艦を全て撃沈するに十分な戦力があり、これ以上抵抗した場合容赦なく攻撃し、港湾ごと艦艇を粉砕する!繰り返す、無駄な抵抗を止め、直ちに降伏しなさい!】



ブリッジにも届くバートラーの甲高い声。音響兵器だったものを転用したこともあり味方側にも不協和音が響く。



「敵艦、主砲を上に向けカバーを掛けたようです。軍艦旗を降ろしています」



流石に武器を向けないということは根源的なものであるらしい。

チェレンコフは知らせを聞くと、無線機を手に取り権能中将に連絡した。



【こちら大田切、U.U対応Soyuz契約書、ならびに降伏文書をFAXで送信してほしい】



【了解。】



内勤が使うワープロソフト、一太郎を使用し契約書などの書類を作るのだが、異次元の言語に対応するフォントは何一つない。


そのため学術旅団の面々が手書きで作成した原本を持っていると聞いている。そこでFAXという古代文明の遺産を使い、遠方でも降伏に困らないで済むというわけだ。



———Jeec、Jeec…——



暫くすると受信機がA4用紙を吐き出すと、チェレンコフは素早くファイルにとじ込み、より一層気を引き締めた。

彼にとっては初めてとなる、次元を隔てた人間と会談を行うために。


Chapter108は11月6日10時からの公開となります



登場兵器


戦艦サルバトーレ

全長100m程の超大型帆船戦艦。見た目は有名な戦艦「三笠」に帆を張ったような見た目をしている。

速力は12ノット(時速22km/h)程度だが、船体が軽いため意外と小回りが利く。


AK230

30mmの対空機関砲。ゴールキーパーと同じくCIWSと呼ばれる装備にカテゴライズされる。

正確無慈悲な照準と航空機を飛んだまま解体する威力の砲弾はあらゆる脅威を叩き落す。


竜母 アドメント

飛竜騎士母艦の略称。帆船で風を受けて進むため、我々の世界の空母とは目的は同じながら

形が全く異なり、ドラゴンナイトが発着する飛行甲板は船体「横」についている。

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