COLD2
※COLD1の続編です。まだCOLD1読んでない方は、COLD1をお読みください。
4、―1日目― 4時30分
このスキー場に来てから6時間半も経っていた。
そういえばさっきから腹がグーグーなっている。そうだ、昼飯食ってないんだった。晩飯は届けるって言っていたけど、本当に届けてくれるのか?
そのような事をずっと考えていた。けれど考えていたのは僕だけには見えなかった。みんな黙っている。一応落ち着いたみたいだ。
するとまたスピーカーから声が聞こえてきた。
【夕飯は7時に届ける。それまで待っていろ。】
夕飯が7時?本当に届けてくれるのか?今少し安心した自分が情けなかった。
【トラップは意外に身近なところにあるかもしれないぞ。】
それだけ言ってスピーカーが切れた。
『トラップは意外に身近なところにあるかもしれないぞ。』
その言葉が妙に忘れられなかった。
10分くらいたったかな。いろいろな事を考えていた。そのうちの1つを今、実行してみようと思う。
その計画とは、まずこの会場にいるひと全員に話かける。そして、状況を把握する。結論を言うと、このゲームに巻き込まれた人々に、何か共通点があるのではないかと考えたのだ。
そうして僕は、みんなに聞き込み調査を始めた。
僕はまず、眼鏡をかけた細い男性に声をかけてみた。が、
「なんでそんなことを聞くんだい?君には関係ないことだろ。」
と言われた。
確かに関係ないことだ。だが、教えても損することはないだろ。と思ったが、口には出さなかった。
何かおかしい。そう感じたのは、3人目の背が小さい男性に聞いた時だった。この人も、2人目の人も、同じ答えだった。そして、声が震えている。
そうか。コールド・サバイバルのことか。と思った。
僕はその人達にこう言った。
「寝なければ大丈夫だよ。きっと。」
すると、変な答えが変えってきた。
「そんなことにに怯えているんじゃない。いいよな。お前は。」
……なんだこいつら。何の事を言っているんだ?
このときはまだ知らなかった。この人たちが何のためにここへ来たのかを。そして、何に怯えていたのかを。
僕の背後に設置されている大きな時計を見ると、もう6時50分になっていた。……もうすぐ、やっとメシだ。
僕は、時計を10分間ずっと見つめていた。見ていても早くなるわけじゃないのに。
時計をずっと眺めていた。
気づくと7時の1分前。
そして、ついに……7時!時計の針が動いた直後、リフトが動き始めた。それと同時にスピーカーから声が聞こえた。
【7時になった。これから事務局の人間が晩飯を届けに行く。今、リフトが動いただろう?そのリフトに乗って弁当を届ける。少し待ってろ。】
やっと……飯だ……。
すると、リフトがにぶい音を立てながら止まった。そして、人数分の寝袋と、温かそうな弁当を置いて行った。段ボールに入っていた。そうしてまた、リフトが動き出し、事務局の人間を山の下におろして行った。みんなは弁当のところに集まっていたけれど、僕はおりていくリフトをずっとながめていた。
すごくおなかがすいているはずなのに……
すると、高橋が僕の分のお弁当を持ってきてくれた。さりげなく
「あいよ。弁当、食えよ。」
と。
「誰も相手にしてくれなかった。」
と高橋が言った。
「僕もだよ。」
そう答えて僕は、食らいつくように弁当を食った。そしてあっという間に完食した。
少し落ち着いた。
「そういえば、田中たちは?」
「3人で一緒にいる。さっき落ち着いたばかり。」
さすが高橋。学級委員長。みんなのことを考えてくれているんだな。
「一体、コールド・サバイバルって何なんだ?」
そう言った直後、スピーカーからまた、雑音とともに声が聞こえてきた。
【食事はみんな、済んだかな。さて、これから君たちにはコールド・サバイバルを辞退するチャンスをあげよう。】
「辞退するチャンス?」
「待て、トラップかもしれないぞ。」
【そう。これはトラップかもしれないぞ。最初に言ったろ。トラップかどうか見極めろと。だが、そのチャンスを見逃すというのももったいないな。トラップだと思う者は残ってよろしい。さて、そろそろ本題に入ろうか。チャンスの与え方を今から言う。今から10分後、Cコースのフェンスが開く。そこから歩いて、または滑ってここまで降りて来い。当然、ライトは付いていない。相当な勇気が必要だ。では、早く辞退したいものはCコースから下山しろ。自分の身は自分で守れ。】
それだけ言って、スピーカーの音声が切れた。
しばらくたって、Cコースの入り口のフェンスが自動で開いた。
すると、開いた直後にさっきの生意気なガキの中の1人がCコースの入り口から滑って行った。
そして、その後に続いて他の2人が下りて行った。
「まず、5人で集まろう。」
そういったのは高橋だった。その後、5人で集まって下りるか下りないかを決めた。
「私は下りないわ!20日経つのを待つ!」
「私も……。」
女子2人組は下りないと言った。
「じゃあ、僕たちも。」
正直……ほっとした。
5、―2日目― 6時30分
……小鳥のさえずりが聞こえる。もう朝になったのか。5人で集まってから後のことをあまり覚えてない。ほかの3人が隣に寝ていた。僕は、寝袋の中で目覚めた。……寝てしまっていたのか。
隣にいた高橋に話しかけた。
高橋は起きていた。
「学校はどうするんだ?」
「いいんじゃないの?僕たち、被害者だもん。」
そのようなことを話していると、スピーカーの電源がついた。変な音がしたので、すぐ分かった。
そして、また声がスピーカーから聞こえてきた。
【朝飯の時間だ。これから、事務局の人間が弁当を届ける。が、その前に、また、チャンスをあげよう。Bコースの入り口を見てごらん。】
「あっ・・・!」
言葉を失った。
まさか……昨日のアレが、トラップだったなんて……
そう。Bコースの入り口にいるのは、手足を縛られて、口にガムテープを貼られた……そう。昨日、Cコースを滑って行った人たち3人だった。
【そう。この3人は、トラップにまんまと引っ掛かった。なので、君たちにチャンスをあげる代わりにこいつらを殺してもらう。】
「こ……殺す……?」
【ルールは簡単。今、こちらのリフト降り場に止まっている24号車の椅子の後ろに、拳銃が張り付いている。弾は10発入っている。その拳銃で、3人を殺せ。今は、睡眠薬で眠らせてある。殺すことができた人間に、リフト乗車券をプレゼントする。ということは、リフトで降りてこられるということだ。だが、1人分しか用意していない。つまり、1人が3人を殺せ。ということだ。殺さずに、助けるという方法もあるぞ。だが、最初に言ったぞ。―トラップかどうか見極めろ。自分一人だけ生き残れ―と。】
「これもトラップか……?」
「もう20日間待つしかないな。」
……さすが、高橋。落ち着いているな。
【少し、時間をあげよう。これから昼飯を届ける。】
リフトがまた、にぶい音をたてて動き出した。そして、事務局の者が109号車に乗ってきて、昼飯を置いて行った。晩飯と一緒で、段ボールに入っていた。そして、リフトで降りて行った。そして、24号車が降り場に着いた直後に、リフトが止まった。ぼくは、本当に拳銃があるかを確かめに行った。
……あ……あった……。本当に……
「マジかよ……」
未だに信じられない。こんなことが、現実に起こり得るなんて。
僕は、何があっても20日間生き延びる。
チャンスがあっても絶対に参加しない。
そう心に誓った。
すると、高橋、田中、市村、上田が僕の周りに集まってきた。
「このチャンス、私、行くわ。」
そう言ったのは市村だった。
「昨日、20日間待つって言ったじゃん」
気づくと声に出ていた。
「わ……私は……やらない。」
上田が弱弱しい声で言った。
「わかったわ。でも私、このチャンスを逃したくない。」
「そんな自分勝手なこと言うなら、これからみんな、自分の意思で行動することにしよう。」
高橋がそう言った。
……マジかよ。
「そうしよう。」
田中も賛成らしい。
「分かった。」
僕も賛成してしまった。
このとき、僕は嫌な予感がした。
市村が、参加すると言ってから約30分が経った。
昼飯が食べ終わって、ゴミを段ボールに入れた。
みんな食べ終わって、またスピーカーがついた。
【さあ、考えたかな?参加する人は、早い者勝ち。よーい、スタート!と言ったらとりに行け。それでは……よーい、スタート!】
すると、市村だけが出て行った。
『……ベ……ベリベリ……』
ガムテープに付いた拳銃がリフトからはずされた。
みんなが市村を見ている。
「な……何よ……私はやるわよ。」
みんなが一瞬、目をそらした。
それから、何分か間があいた。そりゃそうだ。人を殺すのに慣れている奴はいない。
「私、やる。」
ついに、市村が動いた。
その直後、銃声が3回、空に鳴り響いた。
「マジかよ……」
市村が……3人を殺した……。
「わ……私はやった!生きて帰れる!」
みんなが市村を冷たい目で見ている。
なぜ、銃弾が10発も用意されているのだろう
「市村……トラップだったらどうするんだ。死ぬかもしれないんだぞ!」
高橋が市村に向かって言った。少し、目が潤んでいる。
その直後、スピーカーの電源がついた。
【やったか。ついに。……市村、Aコースから中間乗り場まで歩いて降りて来い。そこにチケットが入っているスーツケースがある。それを、乗り場にいる事務局の者に渡せ。リフトを動かす。だが、頂上の乗り場から乗ろうとする者がいたら、射撃班が射殺する。それでは、これからAコースのフェンスを開ける。市村は降りて来い。】
……スピーカーが切れた。
「本当に行くのか?」
田中が言った。
「行くに決まってるでしょう!トラップでもなさそうだし。」
「そうか……」
そのとき、フェンスが開いた。
市村がフェンスの前に立った。
「バイバイ!」
笑顔で手を振り、行ってしまった。
なぜ、人を殺したのにあんなに笑顔なのだろう。
僕は、市村の背中をずっと見つめていた。なぜか、少し、さみしそうだった。
それにしても、何かおかしい。
“……市村、Aコースから中間乗り場まで歩いて降りて来い”
“これからAコースのフェンスを開ける。市村は降りて来い”
……ん?なぜ、事務局の人間が市村の名前を知っているんだ?
このときから、疑問点が増えてきた。
―のこり 8人―
COLD3に続く
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