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今からひどいこと言うから幽体離脱して?

「座って」

夫に促されてボックス席に座る。

「どういうこと?」

夫が私の正面に座る。

ニヤニヤした男も座った。

「故郷でパートナーシップ制度導入されたんだ。

 だから、赤井と結婚?して故郷に帰りたい」

「えっ? じゃあゲイってこと?

 だましてたの?

 ひどい!」

「……前から思ってたんだけど、きみ、LGBTに嫌悪感抱いてるよね?」

ニヤニヤした男がニヤニヤしながら話に割って入る。

「まあまあ、理解できないんだろ?

 奥さん、俺どう見ても女好きに見えるだろ?

 ノーマル。

 ただ単にLGBTの受ける嫌悪の眼差しや差別を体験してみたい。

 そういう好奇心からってだけ」

「じゃあ私に対して嫌になったとか、そういうことなの?

 それで友達と結婚するっていうの?

 それを息子の結婚式の日に言う?」

 怒りと悔しさ、諸々の感情がこみ上げて来て抑えきれずに手がワナワナと震え出してしまう。

ニヤニヤした男がニヤニヤ笑っている。

ニヤニヤ。

ニヤーニヤー。

ネコ柄のネクタイ。

やっぱり夫がネコってことなんじゃないの?

私がLGBTに嫌悪感を抱いているから、そういう嘘を?

一気に脱力して手の震えがとまった。

「落ち着いた?

 じゃあ今からひどいこと言うから幽体離脱して?」

「……ゆうたいりだつ?」

「おいおい幽体離脱もできねーのかよ

 さすが縁故入社のお嬢様」

「いいかい、幽体離脱は技術だ。

 意識をちょっと上に浮かせて、感覚は目と耳と手だけになる。

 すると物事を客観的に考えられるようになる。

 ちょっと死んだ魚のような目になるけど大丈夫だから」

「こ、こう?」

「そうだよ、すぐできるなんてすごい」

そうね脱力してたからできたような気がする。

ちょっと現実味が薄れるけど客観的な気がするわ。

「じゃあ言うけど

 ぼくに見えているものが、きみには見えていないんだ」

「幻覚が見えるってこと?」

「……同じものを見ていても同じように見えてない」

「わからないけどわかったわ。

 もう関係の修復が望めないってことが」

「人生が100年なら、前半50年は子育てのための期間で、

 後半は別のことに使いたい、こころのパートナーと。

 新しい時代ならそういう生き方を試してみたいんだ」


 

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