さ迷う
健太の迷路攻略は、簡単に思われた。
しかし、迷路は生き物の如く健太の足を止めた。
スタートして何分経過したか?知恵はどこまで進んでいるか?焦りが積もって来た。
仕方ない、ルール違反だが薔薇の下の小さな隙間を真っ直ぐ抜けて行くしかない。
刺は、容赦なく健太の背中や顔を襲う。
「いて!」
綺麗な花には刺どころではない。
その頃、知恵は迷彩色の長袖長ズボンに着替えてゴールしていた。
「だからわたしの遊び場だって言ったのに‥‥。」
知恵は、簡単に迷路を攻略した。
薔薇の茂みには秘密があった。
遠隔操作されているのだ。
忠実で優秀な執事、武田孝がパソコンのキーを叩きながら動く薔薇の茂みを巧みに動かして健太の足を止めていた。
知恵のスタートした瞬間、薔薇の茂みは真っ二つになりゴールまで真っ直ぐ歩いて行くだけで攻略出来た。
要するにズルを知恵はしたのである。
「お嬢様、茂みの下をくぐって来てるようですけど、どうしますか?」
孝は、冷静に知恵に聞いてきた。
この時すでに健太の体内にはGPSが手術をして埋め込まれていた。
「もう少し体力を奪ってゴールさせなさい。」
知恵は進にそう告げるとゴール前に仁王立ちした。