夏の知らせ
季節は過ぎて蒸し暑い夏になった。
教室から窓の外を見ると入道雲が空に浮かんでいた。
隣の席に知恵はいない‥‥。
僕は、深いため息をついた。
「こら、ため息つかない。」
梨花が、僕の背中をペンで突っついてきた。
「うるさいな。」
「もう、父親になるんでしょう!しっかりしなさいよ。」
そう、僕は、父親になる。
知恵は、妊娠したのだ。
その為、学校を休学している。
本来なら二人とも退学だがエリス学園は水無月家から莫大な寄付をもらっているので黙認されたのだ。
何故、知恵は僕を監禁したかというとちゃんとした理由があった。
交通事故に遭った僕の両親は、知恵を助けるために事故死していたのだ。
知恵が、青信号だと勘違いして歩道に出た時にトラックが突っ込んで来て僕の両親が知恵を助けるために背中を押して二人はトラックに跳ねられて死んだのだ。
知恵は、泣きじゃくりながら僕に謝罪した。
「ごめんなさい、健太様、最愛のご両親を奪ってしまって‥‥。」
僕は、手のひらを広げて知恵のお腹を擦った。
僕も、泣きながら
「でも、ここに新しい命が宿っている。」
と言った。
僕は、知恵からめちゃくちゃだが楽しい時間を沢山もらった。
それは、知恵の最大の恩返しだった。
逆監禁という名の愛‥‥。




