幼馴染み
「健太!」
と、呼ばれて僕は、手を引かれた。
体育館に入る前だった。
僕が振り向くとそこには幼なじみの水野梨花が心配そうな顔をしていた。
「健太、どこに行ってたの?バイト先にもアパートにもいないし。心配したんだから!」
「あぁ。」
梨花は、幼なじみで良く晩御飯をご馳走してくれる優しい女だ。
知恵が笑顔ですかさず僕と梨花の間に入って来た。
「水無月知恵と申します。水野梨花さんですね?初めまして。」
「はぁ‥‥。」
梨花は面食らった様子だ。
「健太様は、昨晩からわたしの婚約者になりましたのでよろしくお願いします。」
と知恵は言って一礼して僕の腕を掴んだ。
「何それ?わたしと健太も付き合ってるんだけど。」
そうなのだ。梨花に告白されて僕は、梨花は可愛いし、料理も上手いしで付き合う事になっていたのだ。
「それは残念ですね、わたしと健太様はもう肉体関係をもっています。」
知恵は、平然と嘘をつく。
「あら奇遇ね、わたしも健太とはもうしてるんだから。」
梨花も自信満々で嘘をつく。
「じゃあ、ここで勝負しましょう。腕相撲で。勝った方が健太様を頂けるという事で。」
知恵が細く笑みながら梨花に提案した。
「良いわよ。」
え?そんな細腕で?二人とも。
厄介な事になったと健太は思っていた。




