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Girls In The Showtime  作者: アベンゼン
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閃光

 死ぬ。


 サクラは初めて、そう感じた。


 斬っても斬っても湧いて出る敵たちは、いずれも自分を殺しにかかっている。


 事実、人間であれば十分に死に至るダメージを負っている。


 そして、フラワーズ特有のタフネスでも耐え切れない死線へ、少しずつ近づいていることを、サクラははっきりと感じていた。


(トゥルーズ――)


 四十二番とリッキーは、今頃どこか安全な場所まで逃げ切れただろうか。


 歩兵の足元を払い、首から袈裟斬りにして、また次の敵を待つ。間合いの狭い脇差には限界があった。


 また銃弾を受けている。傷の治りが遅くなってきており、出血が隠し切れなくなってきている。


「サクラ!」


 ローズの声だった。サクラを銃撃した歩兵の首を蹴りでへし折り、その体を掴むと後続の歩兵に向かって投げつける。


「ローズ!」


 シャムロックも到着した。


 一度拡散し、もう一度ステージに集まるというところまで、作戦通りだった。


 しかし問題は、予想した以上の物量が投下されているということだった。


 三人はステージの上に並び、会場を見渡した。


 ボロボロになった三人を迎えたのは、ともすれば最後の光景になるものであった。


「素晴らしいショーね」


 ローズが上ずった声で呟いた。


 サクラとシャムロックは、物言わず、じっと中空を見つめていた。


 ステージから見て、客席の上辺り、三人の視線の先に、無数のドローンが浮かんでいる。


 当初送り込まれてきたものとは異なる圧倒的な軍勢。


 それぞれは小型に見える――しかしまだ距離があるはずのそれらの、本来サイレントであるはずの羽音が、塊となって、厚みを持って三人の前に迫ってきた。


「ショー、ショーね。サクラ、とても良いことを思いついたわ」


「何でしょう――お姉様?」


「とても簡単なこと――それは私たちが常にやってきたこと」


 ローズはそう言った。呟くように、言い聞かせるように、ほんの小さな声だった。しかしそれはドローンの大群がもたらすひどい騒音にもかかわらず、サクラとシャムロックの耳にはっきりと届いた。




「歌いましょ」




*********************************************************



「ローズ! サクラ! シャムロック!」


 四十二番が、メインステージの出口付近から叫んだ。リッキーがそれを羽交い絞めにしている。


「トゥルーズさん、今はダメだ、貴方まで巻き添えになってしまう!」


「いやだ、私も戦う!」


 四十二番はもがいた。三人は遠い。こちらとあちらの間に、無数の戦闘ドローンが浮かんでいる。


「せっかく会えたのに、また一緒になれたのに――」


 四十二番は泣きじゃくり、何度も体を動かしたが、リッキーがこれを制した。


「トゥルーズさん、今は! 彼女たちを信じなければ!」


 四十二番の視線の向こう、サクラが笑っているように見える。


「大丈夫よ!」


 サクラの声が妙に近くに聞こえた。


「言ったでしょう、誰一人死なせないと――」


 不意に、ギターフレーズが轟いた。


 それは彼女たちの代表曲だった――ドラマチックなギターリフから始まり、突き上げるようなミドルテンポ、ドラムスの重いビートが続く。


 そして、ローズのボーカルが入る瞬間、「それ」は起こった。


 三人がそれぞれ手にしていた武器が強く発光を始めた――それは次第に強まっていく。


そしてそれらが収束した頃、四十二番は、三人がそれまで持っていなかったものを持っていることに気付いた。


 四十二番は大きくその目を見開いた。


 よく見えない――それは逆光のせいだ。光の中に吸い込まれてしまったように見える三人、それはステージの演出にあったものだろうか?


「どうか見ていてね――マイ・リトル・スウィートハート」


 絞り切ってはちきれそうなワイヤーのような、鋭く眩しい声が、サクラの告白が響き渡った。

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