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Girls In The Showtime  作者: アベンゼン
53/57

死踏

 連合政府・オーストラリア支局陸軍の斥候部隊は、全く会敵しなかった。


 相手は少人数部隊である。実質の警戒対象はたったの三名で、それらと衝突するのは出来るだけ避け、それ以外の戦力があったら優先的に削いでいくこと、というのが作戦の趣旨であった。


数で押し切れれば、いくら強力な個体がいようとも、包囲することで戦意を喪失させることが出来る。


 歩兵部隊の間に、しきりに「デバイス」「起動」という謎めいた言葉が飛び交った。


 ほとんど全員にその言葉の意味は分からなかった。それでも進軍は黙々と続いた。


 一般人を巻き込むことも場合によってはやむを得ない、という主旨の指令もあった。ありえないことだった。各小隊の指揮官は「それほどに事は急迫している」という訓示を飛ばした。


 しかし、その一般人も、予想されていた数十名の護衛部隊も、斥候部隊とは衝突しなかった。目的地であるロックフェスティバルのメインステージまで、彼らは到着してしまった。


 ステージを包囲しようと、部隊が薄く伸びていく。


 そして、包囲が完了した頃――同時多発的に、ステージの周囲で爆発が発生した。


*******************************************************************


 ガールズの陣営で斥候の役割を果たしていたのは、最も長い射程を誇るシャムロックだった。


 歩兵部隊が通り過ぎるのを確認し、シャムロックはその背後を音もなくつけていく。


 そして歩兵部隊は、メインステージをぐるりと取り囲むように歩兵が分散した。


 これこそが、四十二番の予想した事態であった。各部隊間の連携は隊列を組んでいる状態よりも手薄になる。そこに、ステージの周囲に配置したアンドロイドたちが迎え撃った。


 それぞれ、予め仕掛けておいた小型の爆弾を作動させて、混乱を発生させてから、個別撃破を企図したのである。


 これは、半分成功し、半分失敗した。


 パルス・コンバーターを破壊されているということは、自身のうちにあるポテンシャルだけで戦うということである。


 銃撃、接近での格闘、不意打ち、様々な方法での戦闘が展開されたが、訓練された陸軍歩兵とただのアンドロイドでは戦力に差があった――不意を打つことができたケースを除いて、アンドロイドたちは返り討ちに遭った。


 それでも約半数のアンドロイドが生還できたのは、それぞれの戦闘に暴力的に介入した「衝撃波」の影響が大きかった。


 シャムロックはステージの周りを大きく駆けながら、的確に陸軍歩兵へ攻撃を加えた。


*********************************************************


 ローズは既に弾切れを起こしたサブマシンガンを諦めて腰辺りに差し込み、格闘による撃破を続けていた。


 メインステージ入り口近くでの戦闘である。最奥のステージ近くではサクラが戦っているはずである。

 戦い続けていた。


 三百という情報から、さらに五十名の援軍、さらに三十名の応援と、敵方の増援が続いている。


こちらは消耗するばかりだ。敵に容赦はなく、ひたすらに物量で押し切ろうという腹であった。


 正面に現れた影に向かって跳躍し、その勢いのまま首筋へ膝をめり込ませる。


瞬間の殺気を察知して地に伏せ、銃弾をやり過ごしてからまた物陰に隠れる。転がったライフルを掴み、短く息をする。


 ローズは、スマートデバイスに軽く触れて通話を開始した。


「サクラ」


『はい、お姉様』


「何度も貴方につらくあたったわね」


 サクラが息を呑む気配が伝わってきた。ややあって、サクラが静かに言った。


『いいえ、お姉様。そう思ったことは一度もありませんわ』


「そう、なら良かったわ――そっちはどうかしら」


『終わりませんわ――お姉様はいかが?』


「変わらないわ。シャムロック?」


『僕も一緒かなあ、あ、危ない! どんどん増えてるしね!』


 ローズはニヤリと笑った。


「二人とも、ステージに集合よ」


『承知いたしましたわ』


『オーケー』


「サム?」


『ハイ、ガールズ』


「MCに、最高のダンスチューンを用意するように言って頂戴」


『なんだ、それだけか?』


「ええ、とっておきのを頼むわよ」


 ローズは通話を終了し、高く高く跳躍した。



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