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Girls In The Showtime  作者: アベンゼン
26/57

駆引

NOTIS:対象を確認/危機管理モニターを再起動しています/


NOTIS:警戒レベルⅤ/三件の動作を確認/即時の対応が強く推奨されます/


ORDER:待機続行/


NOTIS:エラーコード〇〇三四/当該レベルでは指定されたORDERが承認されません/


ORDER:クソ/じゃあどうしろってんだ/


NOTIS:推奨されるアクションを提示します/選択肢をプルダウンしてください/


ORDER:マジかよ/選択肢三を実行/


REPLY:選択肢三を実行します/管理者コード〇〇三七/


ORDER:俺はついてるな/



******************************************************


ローズが静かに目を閉じている。


その様子を、サクラとシャムロックが真剣に見つめている。鋭い目配せが走り、四十二番を射抜く。四十二番も気まずそうに緊張した表情でいる。


「サクラ――貴方、私に隠し事があるわね?」


ローズが重い口を開いた。


「いいえ、お姉様。私はお姉様に、これまで一度も嘘をついたことはありませんわ」


サクラは身じろぎもせず、平然と答える。


「そう――」


ローズもまた、眉ひとつ動かさない。


「そういうお姉様こそ、私に隠し事でもしているのでは?」


サクラの問いに、ローズはニヤリと笑って答える。


「もちろん、たくさんの隠し事があるわ――貴方にも言えないようなことが、たくさんね」


サクラの表情がわずかに揺れる。ローズの真意を掴みかねている。


ローズの方は意味ありげに、手をテーブルに置いた。


「私は乗る――貴方たちも早く決めなさい」


サクラに明らかな焦りが見える。フラワーズの神通力を持ってしても、ローズの考えを読みきることは出来ない。


誰も声を上げなかった――その場はローズに呑まれている。


サクラもまた、気後れしたような表情を見せると、下を向いてしまった。


「誰も乗らないのね?」


ローズが念押しし、やれやれとばかりにため息をついた。


そして手を返し、握られていたものを見せる。


「ワンペア」


「ええっ」


「な」


「えーっ!」


ローズの手に、クローバーとハートの7、および関連のない三枚のカードを含んだトランプカードがあった。


「僕、フラッシュだったのに!」


シャムロックはカードを放り出した。全てスペードで構成された五枚のカードだった。


「あら、それは残念ね。どうして乗らなかったのかしら」


「だってローズが自信満々だったから、もっと凄いのかと思ったんだよ」


「サクラは何だったんですか?」


四十二番が覗き込むと、8からのシーケンスで構成された、全てハートの手札が揃っていた。


その手が小刻みに揺れている。


「あれっ、サクラ、それはストレートフラッシュですけど」


「――知っているわ」


暗い声だった。まんまと一杯食わせたローズは嬉々としてカードを集め始めた。


「本当に単純で、可愛い子」


ローズのコメントに、サクラは憮然として答えない。


「あの、サクラ? さっきから手はほとんど勝っているんだから、乗ってみたらどうです?」


サクラがキッ、と四十二番を見た。鋭い目だ。


「さっき乗ったら負けたわ」


サクラが乗ったのは一回だけだった。サクラのフルハウスに対し、ローズはローヤルストレートフラッシュで答えた。


「あんなこと、滅多にありませんから――」


苦笑いする四十二番に、サクラはなおもぶつぶつと文句を言った。


「さて、ちょっとサクラが可哀相になってきたからこんなところにしておこうかしら。サクラ、勝者が次のアクティビティを決めるところだけど、貴方決めていいわよ」


ローズの優しい申し出に、サクラはとたんに目を輝かせた。


「お姉様! それでしたらみんなで映画なんていかがでしょう?」


「いいわね」ローズが笑った。「ゴダールなんてどうかしら――」


「『死霊のはらわた』を!」


一同は一度静止した。


「サクラ、今の、何て?」


シャムロックが尋ねる。


「だから『死霊の』」


「ううん、そうじゃなくてそれは何?」


「ご存じない? 私の敬愛するサム・ライミのデビュー作で」


「そういうことでもなくて――ローズ?」


ローズはニヤニヤと笑っている。


「シャムロック、勝者の言は絶対よ」


ひっ、とシャムロックが固まる。


「観ましょう、『死霊のはらわた』」


シャムロックの動きが止まった――。




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