吸血鬼と僕
僕は吸血鬼になった。僕は目覚めたときそのことが分かった。
「よう、目覚めたか?」
急に声をかけられた。僕を襲った吸血鬼の声だ。
「ひっ」
僕は怯えてしまった。
「そう怯えるなよ」
吸血鬼は僕にそう言った。そして、
「気づいていると思うが、お前は俺の眷属になった」
そう宣言した。
「な、何で?」
「ん?」
「何で、僕を吸血鬼にしたんですか!?」
僕は吸血鬼にそんなことを訊いていた。自然と敬語になってしまった。恐怖のせいだろう。
「眷属が欲しかったからだ」
吸血鬼はそう答えた。僕が襲われるときと同じように。いや、訊きたいのはそう言うことじゃないんだが。
「いや、どうして僕を選んだんですか?」
「気まぐれ」
「即答!」
最悪だ。僕は人間ではなくなってしまったのである。ただ一人の吸血鬼の気まぐれで。
「僕を人間に戻してくれませんか」
「……それは出来ない」
吸血鬼は重々しく答えた。
「一度、吸血鬼になってしまったら人間に戻ることはできない」
「……そうですか」
僕は黙り混んだ。しかし、吸血鬼が僕の事情に構うわけもなく。
「お前の雇用条件を決めたい」
その言葉に僕はビクッとしてしまった。僕は別の職業就いているのだが。
「どうした?」
「いえ、何でもないです」
「まず、その敬語をやめろ、虫酸が走る」
吸血鬼は僕にそう言った。
「分かりま、分かった」
「そう、それで良い」
吸血鬼は多いに満足したようだ。
「お前は何が欲しい?」
吸血鬼は僕に訊いてきた。
「自由だ」
「ほう」
「何だ?」
「いや、面白いなと思ってな」
僕が言った答えに吸血鬼は笑った。
「よし、自由を保証してやろう」
「ありがとう」
僕は吸血鬼にお礼を言った。
「俺からお前に要求するのは」
「何だ?」
「俺が命令したことには全力をもって応えてもらう」
吸血鬼はそう言った。
「分かった」
僕はしっかりとそう答えた。
「よし、契約成立だ。と言っても、俺は条件なしでお前を従えさせられるんだが」
確かに、僕はこいつの眷属なのだから。
「そう言えば、お前の名前を聴いてなかったな」
吸血鬼は思い出したかのように僕に名前を訊いてきた。
「僕は血常傷治。あんたは?」
僕は吸血鬼の名前を訊いた。
「俺は真祖、ブラッド・ワン」
どうやら、僕は吸血鬼として、この目の前の吸血鬼、ブラッドの眷属として生きていかなければならないようだ。
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