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悪魔について

とても寒い…。

吐く息は白いを通り越し吐いたその時かは冷気になりつつある。

感覚を失った指先で母が残してくれた手帳を開こうとするものの、開ける訳も無くテーブルの下に落としてしまう。


「何をしてるのですか?」


私の行動を可笑しそうに下品な笑いながら野太い声で聞いてくるのは、先程魔方陣から呼び出したばかりの悪魔ベルトラムだ。

言葉は丁寧だが、どこか見下したようなその言い方に不信感を感じでしまった。


天上に頭すれすれのその大きな悪魔はほぼ黒色の中に所々見える青のまだら模様、真っ赤に光っているギョロギョロした目は、昔母に聞いた悪魔の姿そのものだった。

初めて生で見るその悪魔に驚きはしたものの、すぐに冷静を取り戻し、呼び出したものの、どうやって利用すべきかを考えなければならないのに、あまりの寒さが思考回路を遮断している。


「…この気温…どう、にか、ならない?」

重くなった口がなかなか開かず、いつも、聞いている自分の声とは違う声が出てきた。


「ああ…」


ベルトラムは臭い息を吐き出し、ぐへっとこれまた下品なゲップをした。


「申し訳ありません。久しぶりの人間界のためここでの適応能力を忘れていました」


そう言うと部屋中の空気を全部吸い付くしてしまうのでは無いかと思うほど、一気に空気を吸い込み始めるものだから、私まで吸い込まれそうになり、慌てて柱にしがみついた。

その間も部屋に置かれている家具がすごい勢いでベルトラムの方に向かって行く。

壁にぶつかり壊されていく家具の中私は間一髪で掴めた革手帳を握りしめてそれが終わるのを待っていた。


「ぷはー。どうですかジュディさま?」


相変わらず臭い息だったが、部屋の中はさっきまでの冷気は消し去り、過ごせる気温に戻っていた。


「ええ、もう大丈夫…でも、この方法以外何か方法は無かったのかしら?この家具は元通りになったりするのかしら?」


「生憎、私は魔法使いでは無いので…」


皮肉を込めた私の言葉にも動じず、悪魔はグヘっとゲップを繰返し私のミジメな左手を見ていた。


「そんなに焼けただれるほど、私の事を呼び出したかったのですか?」


爬虫類のようなヌメヌメとした皮膚で覆われた右手が私の左手を掴もうとしたので、反射的に振り払ってしまった。


「あ、ごめんなさい」


「いや…こんな成りだから仕方がない…」


そして、またグフフと下品な笑い声を上げ、長い爪で私の後ろの壁をつつき。


「ジュディさま。少々お目を閉じていただけないでしょうか?」


「え?」


「閉じていただけないのならば、この手を瞼の上に置かせていただきますが…」


それは…。

何とも答えられずに俯き目を閉じた。


瞬間、目を閉じていても強い閃光を感じた。


「もう大丈夫ですよ、目を開けてください」


あれ?悪魔の声が先程と違い、わりと近い位置で感じられる。


ゆっくりと目を開けると、そこにいたのは…。


「え?」


先程までと全く違う成りをしていて、それ以上言葉が続かなかった。

目の前にいたのは、金髪をきっちりと一つに纏め上げた長身の凜とした貴公子だった。


「人間界で過ごすにはこの格好の方が動きやすいと、あなたの母親に言われていた事を今思い出しました。あなたの願いは分かっています。その願いを叶えるには協力者が必要です」


「協力者?何だそれは?」



「協力者には体のどこかにこのような紋章があるはずです」


ベルトラムは左腕の袖を捲り肘の内側に描かれている紫色のバラの花のような形のアザを見せた。


「協力者には必ずこのようなアザがあります」


「何なんだ、その協力者と言うのは…」


「…。…。この世の全ては運命付けられているのです。人一人の行動全て…。すなわちあなたがこうして生きる事、あなたのために現れる協力者もまたしかり」


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