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監獄のプリンス

悪徳女王の住むお城から少し離れた森の中に、寂れた塔が立っていた。

今にも崩れてしまいそうな塔の中に一人の少年が捕らえられていた。

ブロンドの髪、蒼い瞳を持つ少年は、罪人でも何でも無い彼は産まれて間も無い時からこの塔に閉じ込められていた。

今の季節が何なのか、外では皆がどのような暮らしをしているのか?

知る術も無かった。


少年の記憶にある一番暖かい記憶。

それは母親と二人で暮らしていた時間だけだった。

貧しいながらもとても幸せな暮らしを送っていた。

父親と言う概念は全く無く、何故自分に父親がいないのだろう?と考えたこともなかった。

そんなある日、突然幸せは奪われた。

家に押し入ってきた物盗りのような数人の男たち。

突然の恐怖に動揺しながらも必死で自分を守ってくれていた最愛の母親。

その母親を男たちは持っていたナイフで刺し殺した後、複数回少年を殴った。

その後の記憶は全く無い。

次に目が覚めたは彼が見たものはこの塔の中の景色だった。

それから、彼はずっと閉じ込められていた。


シャルルは自分が何故このような場所に閉じ込められているのかも知らない故に逃げ出そうと言う気持ちも無かった。

ただ、唯一の楽しみは、生存確認のために運ばれてくる一日二食の質素な食事が運ばれてくる時だけだった。

食事を運んでくる彼女の名前はジョディと言った。

この狭い世界でたった一人話せる大切な存在。


ああ、階段を昇ってくる足音が聞こえる。

もうじき、彼女がこの部屋の扉を叩くだろう。

「シャルルさま。お食事の時間です」

彼女の声がする。

胸を踊らせながら、食事だけが通れる小さな扉が開く。


彼女がどういう経由でこの仕事に任命されたか分からないが、彼女の前の人間たちは最悪だった。

毎日少年に暴力を振るうため、少年の心も体もボロボロだった。

瞼も開けられないほど腫れ上がった顔。

治ることのない傷だらけの体。

生きている意味なんて全く無いと思っていた。

毎日死にたいと思っていた。


「シャルルさま?」

しかし、彼女に会えてからほんの少しだが、生きていたい……。

この塔から外に出てみたい、塔の外の景色をもう一度見てみたいと思うようになった。


「おはよう、ジョディ。今日も君の話を聞かせてくれないか?」



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