運命
「ただ無駄死にさせるんじゃあ子供の魂も不憫だろ…」
ベルトラムはおおよそそれっぽくない事を言いながら、小さな火箸に手を翳し消えかけてゆく火が勢いを取り戻させた。
「このぐらいなら魔法じゃなくてもできる…、だが、死にゆく人間の生を伸ばすと言うのは意味が違ってくる。お前等の命の長さは生まれた時から決まってる。抗おうなんて愚かな考えは捨てるべきだ」
「でも……神はきっと僕たちを見捨てたりしない…」
「つくづく思うんだが、人間ってのはどうしてこうも浅ましい生き物なんだろうと。生を与えられたからには長く行きらえたい。それ自体が強欲だと思わないか?自分さえ助かればいいと思ってるんだろう?もし…お前の信じている神が存在しているとして、そんな情けない声をその神が拾うと思うか?」
「…!」
大きく見開かれたフレディの瞳がワナワナと震え、乾ききった声が出た。
「じゃあ、オレ達はどうすれば…」
「神では無い拙者ができるのは初めに言ったように無駄死にはさせない、それだけだ」
「…無駄死にはさせない?」
ベルトラムの言葉は残酷だ。
現実と言うのはどうしてこんなにも残酷なのだろうか。
「…ブラッドの命はあとどれぐらい?」
だけど、フレディは至って冷静に言葉にした。
まだ僅か10歳やそこらの少年とは思えない素振りは、この腐った国がそうさせているのだろう。
命の重さが平等だと言うのなら、この少年の死は何も間違っていない。
だけど、やっぱり、子供が基本的な生活さえ送れないこの今の世界は間違っている。
「私が…、私が、最後までブラッドの側に、貴方の側にいる」
気が付いたら、私はフレディの手を握っていた。
震えている冷たい小さな手を私は包んでいた。
ああ…。
神様!
私にできる事は何でもします。
だから、この子達が幸せに生きられる未来をください。
「感傷的になってるところ悪いんだが、拙者の話の腰を折るな!人間ごときが!」
ベルトラムが声を荒げたタイミングで火が大きく燃えた。
「この少年の命の灯火が消えた瞬間、お前が助けたいあの少年の身代わりにする」