永遠に生きられたら…
「ブラッドが6歳を迎えられないってどう言う事だ?」
小さなブラッドを抱えて部屋まで運んできたフレディは震える手に力を込めて、唇を噛み締めながら聞いてきた。
そんな真剣な表情の少年に対してベルベットはホコリを被りススだらけの暖炉の前で面白くなさそうに唾を吐くと、最早火を起こす事を忘れていた暖炉に僅かに残っていた木の破片が火を灯したかと思ったらすぐさま大火のように燃え始めた。
そこでようやく火の明りと同じ赤色の瞳で少年を見た。
「生物として産まれた以上死ぬ事は運命づけられている事だろう。貴様の弟は少しばかり早くそれを全うするただそれだけだ。それの何に悲しむ?」
「………何だよ、それ?何なんだよ、お前?たった一人の家族が、たった6歳で亡くなる。そんな事実受け止められる訳無いだろう?お前等、助けてくれるんじゃなかったのかよ?」
わなわなと震える唇から出てくる言葉は少年とは思えない陰々滅々の物で胸をえぐられる思いだった。
だが、人間ではないベルトラムの言葉は余りにも非情な物だった。
「勘違いするな、拙者は助けるなどとは一言も言っていない。だいたい運命を覆してまでも弟を助けたいと言うのか?それがどれだけ愚かな事なのか分かっているのか?」
坦々と語るベルトラムは今は人間の青年の姿の筈なのに、一瞬悪魔に戻ったかのように見えたので目をこすったが、それはいではない事が分かる。
どこまでも真っ黒な影、頭には二つの角が生え筋骨粒々の大きな黒い影が壁全体に写し出されていたのだ。
彼が怒っている事は明らかだった。
「例えば貴様は永遠に生きられたら永遠に生きるのか?あらゆる生物は命を受けたその日から全て運命に委ねられている。森羅万象、それが全てだ。どの生物にも決められた命がありそれを生き抜くためだけにこの世は成り立っている。亡くなったモノに対して悲しんだりするのは生きているモノの勝手な気持ちだ。先逝くモノは逝った先で悲しいだなんて思っていない。それは残された人間のエゴだ」
永遠に生きられたら永遠に生きるのだろうか?
死にたくないと言う気持ちは誰もが持っているはず。
この世の誰一人死にたくないと思っているはずだが、それは死と言うモノを知らなすぎるからなのか?
死んだら何も無い。それはもしかしたら生きてるモノが勝手に思ってるだけで。
死ぬと言う運命に逆らってまで生きるのはやはり間違いなのでは無いだろうか?
永遠に生きられたら…永遠に生きたいなんてきっと私は思わない。
「ならば…その命…無駄にする事などない。その少年の命をお前の助けたいシャルル王子やらと交換すればよいのでは?」