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Harness1/2  作者: キャラメルポップコーンさん
24/27

XXIV

 時刻は午後16時、祭りが始まって一時間経ち、さらに一時間後には聖火リレーの開始が控えていた。

 これほどの事件があったにもかかわらず、例年ほどの来訪者がおり、杜一らに運営を変わった町内会はその多忙に呆れていた。

「…ご参加ありがとうございます。それでは、17時よりリレーを開始いたしますので、20分前までにはスタート地点にお越しください。」

 町内会に勤める母の付き添いとして、富田は運営の手伝いをすることになり、エントリー受付を担当していた。

 与えられた仕事に集中しようとするも、彼女の頭の中にはある不安が染み付いていた。

 それに振り回されまいととる行動は、周りの風景を眺めることだけだった。

 リレーの経路に沿って開かれている屋台では、各々が独自の商品を展開し、ここでしか食べられないようなものばかりが並んでいた。中には、水曽町産の紅葉を焼いてみた、なんて看板を立てているものも見える。

 屋台の背には葉を失った木々が点列している。それを眺めるだけで、富田は少し物寂しい気になった。

「広瀬くん…。」

 頭の中で呟くも、それが無意味な行動と悟り、再度作業に専心し始めた。



-----「ハックション!」

 この寒冷な気候が風邪を呼んだのか、杜一は盛大なくしゃみを1つ。

 そんな彼を横目に、萊輝を腕時計を確認する。

「もう祭りは始まってるな。いつ行く?」

 鼻をかきながら杜一も時間を確かめた。

「まだここで待機だ、リレーが始まって少し経ってから。」

 彼らは今、本部と樹湖の丁度中間にある林の中に身を潜めていた。警察が祭りに集中しているため、ここは安全な区域であった。

 真っ裸の木に囲まれているだけのため、太陽の光はよく届く。朝に凍った土壌もその日輪によって溶け始め、水分を増してぬかるんでいた。

 どうせなら本部で待っておけばいいのに、益弥は震えながら心の中でそう呟いた。

 


 日が沈み始め、あたりは暗さを増していく。スタート地点に集まる炎が、その存在感を拡大し始め、辺りを照らす光となっていた。

 運動着を着た様々な年齢層の人々がそこでスタートの合図を待っていた。片手にはもちろん一本ずつ松明が握られている。

 経路を囲んだ屋台は看板を下ろし、走路の妨害とならないよう、テントをはけ終わっていた。その傍らで、警備にあたった警察官たちが、身構えて360度全体に注意を払っていた。

 水曽町の緊張感は最高潮に達している。

-----パン!

 開始のピストル音が鳴り響いた。それに合わせて松明を片手に人々は走り始める。

 カタカタと足音は不規則に響き渡り、炎を絶やさないよう、誰もが慎重にその足を動かしていた。

 冬の風に晒され、早速火を消してしまった脱落者も現れている。今年は天気に恵まれていないようだ。

 その様子を警備として高槻、四宮、そして杖志摩は眺めていた。

「高槻くん、四宮さん、それではここは任せました。」

「どこか行かれるんですか?」

「黒崎さんがこっちに来いと。」

 そう言って足早に彼はその場を立ち去った。

 小さくなる背中を見届けた後、高槻は再びその競争絵図に目をやった。

「すごいですね、こんな近くで初めてみました。」

「水曽町出身で超人祭りに興味を持たない奴なんてお前だけだぞ。」

 残された2人の間に緩んだ雰囲気が漂った。

「まだ、現れませんね。」

「あぁ、しかし今はできることに集中するんだ。」

「はい、わかってます。」

 現れ始める夕日が、彼の瞳を輝かせた。

-----カサカサ

 背後から物音が聞こえた。草が擦れ合うような。急いで振り返るも、そこに物陰は一切ない。

「四宮さん、聞こえましたか?」

「?何にも聞こえなかったが。」

 自分だけか、自分の耳に疑念を抱きつつも、再び警備に集中しようとする。

-----カサカサ

 再びその音は聞こえてくる。気をおかずにはいられなくなった高槻は、恐る恐るその音源に近づいた。

 それに気づいたのか、一斉に走り出す3人の姿が見えた。そのうち1つは鮮明に脳裏に染み付いていた。

「四宮さん!広瀬たちです!」

 その声に反応した四宮もその姿を確認する。

「追うぞ!それから黒崎さんに今すぐ伝えろ。」

 茂みに足を踏み入れた警察2人は、犯罪者3人の背中を追いかけ始めた。

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