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Harness1/2  作者: キャラメルポップコーンさん
10/27

 周りに注意を払いながらも、杜一たちはその土地を踏みしめ、今後の自分たちの動向などを考えていた。

 益弥が携帯電話で事件の情報をごまごまと調べ上げている。

「最初事件が起こったのは、今年の8月10日。禄郎(ろくろう)公園で小学校校長の遺体が見つかる…。」

 その時は…、杜一は当時の自分たちを思い出す。祭りの運営担当に決まったのは7月、8月は喜びに浸っていただけかもしれない。

「そして8月28日は生良駅(きらえき)で、9月15日には赴任する学校で、それぞれまた小学校の校長が殺害されている。」

 彼が口にする一報を聞くだけでは、現場の共通点などはまったく見えてこない。

 その間警察は何やってたんだ、杜一の頭に疑問が走る。

「時間が空いて10月27日、また小学校の校長の遺体が草野駅で発見。11月4日、ローマンモールで今度は中学校の校長が。」

 変わらない音調で話し続けているが、彼が話しているのは殺人事件について。そのことを思ったのか、蒼は少しばかり身震いをした。

「そしてこの前、間蘇川に高校の校長の遺体が浮いているのが見つかる、と。これが一連の事件。」

 耳を使っているだけで1キロほどは歩いていた。向かう場所もなく歩き続けていた自分たち自身を、杜一は空に飛ぶ鳩に重ね合わせる。自由に生きる彼らを羨ましく感じた。

「校長を標的にしてるってことは、水曽町の教育に文句があってこんなことしてるってこと?」

 萊輝が一言。確かに、犯人の目的はまったく読めてこなかった。

 小中高、そして大学も地元の学校に通っている彼ら4人。その生活に不便を感じたことはあまりなかった。

 周りは自然ばかり、田舎とはいえ環境には恵まれている。空調設備もあり、給食制度だって整っている。

 むしろ、教育制度への不満足感を抱いているのなら、こんな疎らに校長を襲っていく理由が感じられなかった。

 そんな会話を続けながら歩くも、彼らを睡魔が襲っていた。

 シャトーを出てから、一睡もできていなかった。泊まれるようなところがまずなかった。

 4人全員、目の下を黒く染めている。

 飽き飽きした調子で、蒼が話し出す。

「どこかで寝ないと、真犯人見つかる前に死んじゃうかも…。」

 話し合いには口を出さず、こういうところにだけ首を突っ込む彼を、杜一たちは嫌そうに見つめた。

 しかし彼の言うことは正しいことには正しかった。日も暮れ始めている。

 ホテルのような人が集まるところには行こうにも行けない、結局出た結論は山の麓に入っての野宿だった。

 霜のつき始めるこの季節に山の中で野宿など、

 何かの拷問かと感じるが、今の彼らにはそうするしかなかった。


 コンビニで買った弁当で夕食を済ませ、キャンプばりに焚き火を囲む。普通だったら楽しいはずのこの行為も、彼らの背景が黒く染めた。

 明日もう1日これからのことを考える、そして証拠を探しに水曽町へ戻る、その日の彼らの決定であった。

 寝始めようとする周りを眺めながら、杜一はあることを思い出した。明日は、光留の葬式であった。

 炎が明るく照らすその場を立ち去り、木々に埋もれる暗闇に入る。携帯を取り出し、電話をかけ始めた。

「………もしもし、広瀬でございます。」

 聞こえた声は苫利のものだった。広瀬じゃない者が「広瀬です」なんて言ってることに、少し笑みをこぼした。

「苫利さん、俺です、杜一です。」

「杜一様!ご無事でなによりです。で、何かわかったこt…」

 彼の声が不意に途切れる。

「……、、杜一か。」

 図太い一言が飛んでくる。聞き覚えがある声だった。たまにテレビから聞こえてきたはず。

「…父さん、帰ってたんだな…。」

「どういうことだ。」

 父は短文ばかりをぶつけてくる。その分、言葉一つ一つに重みがあった。

「苫利さんから聞いてるだろ、俺たちは事件の犯人なんかじゃないってことを証明しなくちゃならないから。」

「お前の今やってることがどれほど家族や水曽町に迷惑をかけているかわかってるのか。」

「わかってるからこそ、真犯人を見つけないといけない、父さんにもこのことはわかっててほしい。」

 手に持つ携帯を握りしめる。

「……光留の葬式にも出ないつもりか?」

 そのことを自分から聞こうとしていたはずなのに、痛いとこを突かれた、そう感じた。

 彼の口から出たのは「ごめん」のひとこと。

 電話の向こうで父のため息が聞こえる。その様子が嫌にも頭に浮かぶ。

「お前はもう成人してる、お前がやったことに俺たち家族が全責任を負うことはもうできない。それはお前が背負わなければいけない、そのことをわかった上で、もう一度今の自分を見直してみろ。…切るぞ。」

 ぷつりと電話が切れた。

 父の言葉を反芻する。

 (真犯人が見つかろうと見つからなかろうと、今の自分が犯罪者であることに変わりかなかったかもしれない。)

「杜一、いつまでそこいるんだ、早く寝るぞ。」

 萊輝がその背中に声をかけた。

「うん、寝よう。」

 震えた声で杜一は返事を返した。



------------「四宮さん、コンビニの店員の方から話を伺いました。彼らに似た男性4人がここで弁当を買っていったと。」

 四宮は視線を下に向ける。 

 日の入前Y県に到着した捜査班たちは、いくつかに別れての調査を行っていた。

「黒崎さんに連絡は?」

「頼む、もう少しこの辺りを調べる。」

 2人はパトカーは乗り込み、右に見えた山の中へと入っていった。

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