アンタ誰さ…
私は思う。神様の衣装の布ってワンピースじゃないかと…
次に私が目を覚ましたのは一面灰色だった。
そこは明る過ぎず暗過ぎず、目に優しい快適な空間だった。…たぶん。
…目が見える?…良し治ったってことで。
妹の耳も治ってたらいいな。
取り敢えず、妹を探そう。って、いたー!
隣にいたー!?
今、私達が言うべき事は再会できた事もだけど、まず…
私達は、無言で顔を見合わせ言った。
「「白くねーのかよ!!」」
壁、天井、床、空間。死後の世界って言ったら、これ「普通白だろと」いう気持ちをてんこ盛りにして突っ込んだ。
「だって目痛くなるだろあれ。」
誰だ。男の声だったぞ。ていうか此処多分、死後の世界。で、こんな変な所にいる奴って…絶対マトモじゃない…!
意を決して振り抜くとそこには…
白いワンピースを着て純白の翼を背負った
コスプレ変態がガラガラ(くじ引きのあれ)を持って立っていた。
ほらなマトモじゃない。
灰色の髪に同色の眼でけだるげな感じのイケメンだが、コスプレ変態という事で全部マイナスだ。
そんな不審者に話しかけられるなんて…
「「!?」」
びっくりするよね。
「今の状況理解できてるか?…出来てるわけねーか。まあいい、これまわしてくれ。」
そしてガラガラをわたしてきた。
「はやくやっとけよ~。」
「え、はあ!?ちょ、ま、ええ!?」
妹よ、動揺するだけ無駄さ。長いものには巻かれろ…これ鉄則。
言いたい事だけ言うとコスプレ変態は忽然と消えてしまった。
はぁ、突っ立っててもしかたがない。やりますかね。そう思って、取っ手を回す。
ガラガラ〜、ガラガラ〜、コロンッ
「…ティッシュ、か....」
出てきた色は…白。ティシュ。…詫びしい。
ま、まぁ、妹もティシューーー白が出るかもしれない。妹よ君もやりたまえ。
妹の方を振り返ると、全てを受け入れた様な表情していた。
どうしたのだろう。モアイと菩薩を掛け合わせた様な顔をして。面白い事この上ない。
「回さないの?」
「うん。姉ちゃんはこういう人だった…。何でもない。回す回す。ちょっと待って。」
ん?
「そう?じゃあ、ほらはやく回して。」
「ああ……うん。もういいや……。」
妹は、力いっぱい回した。私も念力をかけた。白、しろしろーーーティッシュ、ティッシュ、ティッシュ
しかし、私の願いとは虚しくコロコロと白とは逆に真っ黒の玉が出てきた。
「黒ってなんかあったっけ?」
「さあ?」
いたって冷静に返した私だが内心では戦慄していた。あれは、超プレミア系なのではないか、と。それを引き当てる妹マジ天使、と。
それからは、天使な妹と他愛もない話をして時間をつぶして不審者コスプレ変態を待った。
そして、その間ずっと妹の”モアイ像菩薩”顔は治らなかった。
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「よー、ちゃんと引いたかー?」
目の前の空間が不自然にねじ曲がり”ダルダル不審者コスプレ変態”が現れた。
空間から出てくるって、簡単に不法進入出来るよね。そんなくだらない事を考えてると、マイエンジェルが不審者に熱視線を送っていた。
「変態さん、遅いよ。」ボソッ
妹よ、聞こえたぞ。不審者に対して、度胸のある子である。変態紳士と言われても怒らない、不審者の寛大な心を期待する。
「へ、変態さんだと!?これは好きでやってんじゃねえよ!!」
いや、変態と思われる様な格好してんのが悪いと思う。ワンピース+羽。これ以下に。
「あの。と言うか俺……自分たち死にましたよね?何でこんな所…ここにいるんですか?」
おぉ、妹の余所行きver.挨拶だ…。久し振りに淑やかだ。何か変な感動をした。祈りを捧げねば。
と言うか、そうだよね。もう、トマトの様にプチっと逝きましたよね。プチっと。
「ああ、そうだった。まだ説明をしてなかったなぁ」
そう言うと変態は真面目な雰囲気を出して語り始めた。
「お前らは勇者召喚に巻き込まれて…いや、もっとディープにいやぁ、勇者の力増大の元にされたんだ。ーーーーー勇者推しの駄女神に。あ、その勇者は『神道勇気』って奴でお前らが茶マリモ茶マリモ言ってたやつな。」
…………女神にも推しメンとかあるんだ…。
つか、増大しなきゃいけない程のショボさなのかよ。
テンプレよろしく、元からスッゴゥい力とかじゃないのか…何か初めて、茶マリモに同情した気がする。
てか、茶マリモの名前、久し振りにちゃんと聞いた気がする。
「まぁ、そんな非道なこと許される訳ねーから、お前らの魂を保護。あと地球にはもう戻れなくなっちまったから転生の手伝いをさせて貰えないかと、ここに呼んだ訳だ。
それとプラスして、心苦しいんだがーーその勇者を見張って止めてほしい。違法に世界へ侵入する筈だから、そいつが大事おこしたら絶対ヤバい事になる。
被害者に頼むなんて酷だが、地上にはこっちの立場からじゃ、手が出せないんだ。
勇者と女神については何してくれても構わん!
今ならすっげぇ特典もついて超お得!にするから!転生してみねーか?あと、出来ればプラスも承諾してくれたら嬉しい。」
真面目な雰囲気出してんのに、言っている事は深夜にやってる胡散臭いテレビショッピングとあまり大差無いという、見事な残念っぷり。しかも、白いワンピースつき。うん、不憫?
転生するのは良いだが、プラスな…また、あのクソマリモに近づかなくてはいけないが、やり返すチャンス…か?
本心では、すぅっごく、本当に、これっぽっちも?近づきたくはないが?やられたままでは癪にさわる。
私達が死ぬ事になったのは、クソマリモの所為だし。クソマリモにもっと力があれば死ななかったし。
プラスして、学校生活での諸々の怨み、充分に思い知って貰いたい。
多分、妹もそう思った事だろう。隣の顔が怪しいもんね。顔面結合崩壊しなきゃ良いんだけど。
気を抜くと、すぐ神顔(何人たりとも真似出来ない顔面)をつくりだすんだから。
死んだ理由とクソマリモに絡まれた日々を思い出したら、奴らの邪魔してボコして伸して、地獄を見せないと腹の虫が治らないよって事で、ヤル気マンマンになった。
しかし変態よ、流石にマジで、すぅんばらしい能力がない限り勇者、女神には敵わないだろ。て事で、そこら辺の微調整は何とかしてくれると信じている。
何でも、言う事きいてくれそうだし。
私達の返事は決まった。
「「完膚なきまでに叩きのめしても OK?」」
私達の言葉を聞くとその人はニヤリと笑った。
「楽しんでこい」
「「ラジャー(!!)」」
当然だよね。楽にはくたばらせないよ。
私は淡々と、妹はMAXボイスで返事をした。
「ハッハッハッ!んじゃ改めて自己紹介だな。俺は『創世神』のジンって言う。自分から振っておいて何だが、お前らタダじゃ起きないな。受けてくれて、恩に着る。これからよろしくな。」
…神様だったねー。人は見かけによらないな。
うん…腹の内は、何考えてこの話振ったのか分からないけど、害を与えてくる様には今のところ見えないし。特典あるって言ってたし、そっち側の事情から殺されたんだから、いざって時にお話出来そうだし。
総合してメリットもこっちについた方がデカそうだ。
「「こちらこそよろしく。」」
こうして「未来を楽しく&仕事を楽に片付ける」という目的のもと、一つの契約がなされた。
「んで、早速その話何だが、今くじ引きをしてもらったのは転生先だ。ある程度地位が高くないと勇者と接触出来ないから結構権力がある所だなぁ」
「なるほど、そんで自分等はどんな所に転生するん…デスか?」
妹よ。さっそく淑やか仮面が剥がれて来ているぞ。
やはり長くは持たなかったか…。
「えー、…………お前らは王族で末の姉弟の双子だとよ。すげえな、双子とか全部バラバラにして入れたんだが……。」
へぇ、姉弟ね。来世も一緒とは嬉しい誤算だ。まぁ、弟…についてはフォローしてやろうか。最初は戸惑うだろうけど、後からは間違いなく喜びそうだし、放置でも大丈夫だろう。
「ジ、ジンさん……、今言った、弟って、どっち?」
妹よ。そらお前だ。さっきの説明からして。
「ん?何言ってんだ。」
ジンは不思議そうに首を傾げ、妹の現実逃避を割る勢いで現実を叩きつけた。
「弟なんて、お前に決まってんだろ?」
「Oh,…マジかよ……。」
ここで、淑やか仮面は無惨にも粉々に砕け散った様だ。
しかし、やはりと言うべきか、転生先が男だと知った妹は少なからずショックをうけた。此処で私のメンタルケアがモノを言う。
よし、優しく諭すのだ。私は菩薩顔を展開した。
「どうしたの?前から男になりたいって言ってたじゃない?」
「うん、そうだけどね、こう、急に言われると、ね?心の準備が……」
いくら、男になりたいって言ってても、やっぱり少しはショックを受けるもんだよね、妹のメンタルはカレーの中でドロドロになったジャガイモより弱いからね。寧ろ溶けてるって言った方が早いしね。
「よーし、次にいくぞー」
そんな、orzしている妹を除き話は進行する。ほっとけば立ち直るだろうしね。絶対あとになったら、狂喜乱舞するだろうし。
「そうだね。ほっとけば直るし。」
「ちょ、ひどくね?俺メッチャ傷ついたよ?傷ついて無いけど。」
どっちだ妹よ。しかも…
「え、だってそのうち絶対『よっしゃああぁぁあ!男になれるー!』とか言ってハイテンションになるでしょ?」
「否定出来ない自分が憎い。」
でしょうな。
「はいはい、次行くぞ。次は特典だ、この特典は俺が『どんな願いでも五つだけ叶える』ってやつだ。」
それ知ってるアレだよね。超野菜人の。
数はコッチのが多いけど。
「「なにそのスーパーな野菜人が、星が入ったボールを集めて願いを叶えるみたいなやつ。」」
「突っ込みは受け付けん。どんなのがいい?大抵の事なら何でも出来るぞ。」
何で殺したにしても好待遇なんだ?何でも5個って、ぶっ飛んだ事お願いしたらどうするんだろ?スーパー野菜人でも3つ位だったし。他にもオプション付けそうだし。
デラ甘すぎだろ。そんな謎はありながらも、
私達は数分話し合い五つの願い事を考えた。
お互いの案から2個づつ採用して、絶対叶えたい願いは同じだったので最後のにした。
最初は私の希望。
「一つ目は『無限の可能性』で頼むわ」
「おう、任せとけ」
「二つ目は乙女の夢がつまった『超健康体』で」
「名前からじゃわからん。どんな効果があるんだ?」
「肌荒れ・無駄毛・体臭・髪質その他諸々をどうにか出来る夢の体」
これって、スッゴイ羨ましいと思う。夢の体。
あと、やっぱり妹って隠れ乙女だと思う。こんな願いが真っ先に出てくるだもん。本人に聞かれると怒るけど。
「…………なるほど。」
「三つ目は『絶対記憶能力』で」
「四つ目は『通常生きていく上での全ての知識』ね」
記憶能力と知識、大切でしょう。
「フムフム……、最後は何だ?」
「「最後は………」」
私達はニヤニヤと、いやニコニコと無邪気に笑って言った。
「「ジンさんに私達(俺達)の外見をつくってもらうこと!!」」
あ、中身のスペックとかも、割り振って。
「………はあ?」
「これはジンさんのセンスが試されるお願いだねえ。最高の逸品お願い。」
本当、センスがいい事を願うよ。
「そうだね、俺が言われたら……センス壊滅的だから絶対やりたくない。」
そう、妹のセンスは何処か違うのだ。途中までは良かったのに最後の仕上げとかがね。やらかすんだよ。
芸術的( )に。
「知ってる。」
「ひでぇ。」
私達が漫才もどきを繰り広げていると、ジンの目がキラリと光った気がした。
「ほーお…………願いはそれで全部か?」
「え、う、うん。これで全部、だけど?」
どもってるマイエンジェル、萌えー。
「一つ質問がある、最後の俺がお前らをつくるっていうのはどんな風にしても良いって事だよな?」
…不安になる聞き方だな。
「まあ、俺達にあってるのなら良いけど……」
「でもちょっとくらいはハイスペックにして欲しいよね。」
勇者を相手取るんだ。それ相応のモノを寄越していただきたい。
あと、全力で創ってね。神のセンスに任せて、不細工とか無能なんて報われないし笑えないよ。
「そりゃ、ハイスペックにしてくれるんなら儲けもんだけどね。」
妹がそう答えた瞬間、神様が指を鳴らすとマネキンが二体出てきた。
訝しげな目でそれを見ていると神様は(表情筋の死んでる顔を頑張らさせて)爽やかな笑顔で言った。
「後悔すんなよ?」
その言葉を聞いた瞬間、私達は意識を手放した。
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「おーい、生きてるかぁ?」
はっ。
意識を手放した私達は神の声で目が覚めた。ここに来てから意識が飛ぶのが多い気がするよ。
「お前らの体はもうできてるからな、てかお前ら死んだ影響で記憶が若干無くなって名前も欠如してたから勝手に名付けたぞ?」
訂正、飛んでたのは意識だけじゃなかったみたい。
名前…今までの会話で名前無しで成り立ってきた凄さよ。
まぁ、
「「ああ、うん。そんなのはどうでも良いよ。」」
名前なんてどうでもいいけどさ。妹さえいればNOプロブレム。
「どうでもってお前ら………ああ、もう良い。転生の準備は出来てるからさっさと逝け。」
「ちょっ、それ漢字違う……」
「はいはい、わかったわかった、わかったから早く逝ってくれ。」
そう言うと神様は、私達の背中を押して変な紋章っぽいのが書かれてる所に押し出した。
途端にその紋章は光始め、私達が光に飲み込まれていく。
眩しいんですけどぉぉぉっ!!
「まだ自分の体すら見てないのに?!待って待って、最後に名前!名前だけでも教えて!」
そう、ナイスだよ!妹よ!これから名無しなんて有り得ない!
「ああ、そうだった。お前らの名前は姉が『ユラ』、妹ーー弟が『ルキ』だ!転生したらこっちもできるだけ援助するからなぁ!」
ユラーーールキ。いい名前の響きだね。新しい名前にハイスペックな身体。
しかも、神様が保護者って…最強だよね。
「「ありごとう、ジンさん!ジンさんの事はいつまでも忘れないよ!」」
「俺が死んだ見たいに言うんじゃねえ!!」
ははっ!さぁて、行きますか!!
とりま、勇者wに会ったらバリカンで髪を刈り取ってやる。
見送りの言葉と、野望を胸に私達は転生した。
未知の異世界へと。
サブタイトルの答えはコスプレ変態のジンさんでした。
ジンさん、保護者認定されちゃいましたね。(笑)これから彼等の行く末を見守ってあげて下さい。