表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/19

爵位と称号

タイトルからして「女伯」なんてはいってますが、この「伯」とかについてちょこっと書いておこうと思います。


公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵 というのが一般的な序列だと思いますが、この当時は(たぶん)子爵はまだなく、男爵(=バロン)は「ちょっと違う?」感じ。かわりに辺境伯 というのがいたりします。

ついでに、「爵」 はつけずに 公、伯、という書かれ方をすることが多いような。

そして、タイトルは「伯」であってもそのへんの「公」よか実力がある、とか、称号は「公」であっても実質的には「王」より強い、なんてのがザラだったのがこの時代。


「公」の奥方が「公妃」、「伯」の奥方が「伯妃」ですが、女性自身が公の場合は女公、伯の場合は女伯 となります。

このへん、原語である横文字では区別がないため、どちらの場合も「公爵夫人」「伯爵夫人」と訳されたりしていますが、この違いはとても重要。女王さまも王妃さまもどちらも「クイーン」ではあるけれど、英国の女王陛下を「王妃」と書いたらえらいことになるはずですよね。


ヤコバ姫はホラントの伯として、伯領を統治すべき「女伯」です。ヤコバの母であるマルグリット・ド・ブルゴーニュは伯の奥方にすぎないので「伯妃」でしかありません。

この「ヤコバのお母さん」は「ブルゴーニュ公」フィリップ勇猛公の娘なので、ド・ブルゴーニュ つまり「ブルゴーニュの」と呼ばれます。つまり、ブルゴーニュの公女さまでもあるわけです。(ブルゴーニュの公女さまにはマルグリットがいっぱいいるのでややこしいことこのうえない……)


さて、この「ブルゴーニュ公」というのが 現在のフランス、ブルゴーニュ地方を支配する「公」でもあるんですが、ヤコバのおばあちゃんがフランドル女伯だったためその所領「フランドル」も支配下におき、「ブルゴーニュ公国」とまで呼ばれるようになっていきます。(「侯」の字を使われる先生もいらっしゃいますが、ここは「公」にしときます)


一方、ヤコバの最初の夫「トゥーレーヌ公」のほうは公領の支配者というよりは「称号として」の「公」ですね。この頃のフランスでは、王太子はドーフィネ領を貰って「ドーファン」と呼ばれるようになっていたので、「王太子」となったあとは「ドーファン」と書くのが本当は「正しい」と思います。でもそれじゃわかりにくすぎるので「トゥーレーヌ公」のままにしてます。「ドーファン」といえばやっぱ、ジャンヌ・ダルクが即位させようとがんばった「あの男」を連想しちゃうと思いますから。


ちなみに、フランス本国と張り合ったブルゴーニュ公国のほうも「後継ぎにやる称号」を設けまして、それが「シャロレ伯」だったりします。つまり、「シャロレ伯」は「いずれブルゴーニュ公となるべきひと」 なわけですね。


この当時、「オランダ」という国はまだ存在しませんが「ホラント伯領」が「オランダ」という日本語の語源とされています。フランクの母語であるディーツは古オランダ語 と書いてもいいんですが、ここはあえて「ディーツ」という書き方をしました。当時のディーツ、オランダ語圏は、現在のオランダの大部分、現在のベルギーのオランダ語圏=フランドルと、現在の北フランスまで含みます。「ネーデルラント」という言葉が指しているのがこのあたり。現在の「オランダ」 Nederland より大幅に広いです。


そして、ヤコバの継承すべき伯領は「ホラント」だけじゃなく、海の国「ゼーラント」及び、現在のベルギーのフランス語圏「エノー」もあわせて三つあります。フランス語でジャクリーヌ・ド・エノー、つまり「エノーのヤコバ」とも呼ばれているのはそのためです。


つまり、ヤコバが継承支配すべき土地はおおざっぱに言って、


現在のオランダ + 現在のベルギーの南部ワロン圏


となります。



なんてことを物語の中に書くと読みづらくなりそうなので省きましたが、気になる方もいらっしゃるかもしれないのでコッソリここに書いておきます。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ