王子視点
随分前に可愛らしい身なりの男の子を見かけたんだ
五年前だったか、六年前だったか、定かではないけどな。
俺は、女が正直苦手だった。
遺伝なのか、背は伸びないわ、姉達に髪を伸ばせと無茶振りはされるは、姉のお下がりを着せられるお陰で女だと思われるわ。
踏んだり蹴ったりだ。
でも、あの男の子は俺が男であると告げて(『そっか……僕のお嫁さんになってくれないのは残念だけど、お友達にはなってくれる?』って恥ずかしげもなく告げたのだ。
俺が男であると告げたら【男女】【オカマ】と虐げられる事が大概だったので、嬉しかった。
今思えば、あれが初恋だったのかも知れない。
ある日姉達に引き摺られ川遊びに出掛けた。
しばらく遊んでから、姉達が仕事に出掛けるので、お開きとなった。
でも、俺の服だけ無いのだ。不思議に思って姉達に聞いてみたが案の定知らないと言って俺を放って帰ってしまった。
「返して欲しい?」
誰だろうか?惚けてしまいそうな程甘い声だ。もし、俺が本当に女だったら腰砕けになっていると思う。
振り返ると、其処には初恋の君が居たわけだが、嬉しくないわけが無いじゃないか。
ここで逃せば一生手に入らないとも思った。
久しぶりの彼は可愛くてカッコよかった。
彼は俺を嫁に欲しいと言ったわけだが、まぁ、これが願ったり叶ったりな訳で……
俺は二つ返事で承諾した。
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久しぶりの彼の家は彼の匂いがした。
さり気なく名前を聞いてみると、
『引田薫』だと言う事が分かった。
紛れもなく俺の初恋の君だ。
うとき決まれば行動有るのみ。
やんわりと薫を説得し、俺の部屋に連れ込んだ。
俺の部屋っても普段俺が過ごしてる部屋じゃない。
最愛の人と住むために用意した部屋だ。
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薫は逃げたいと言っていたがわざわざ説得してまで、俺の部屋に連れてきました薫を逃がすわけが無い。
まぁ、逃げたとしても連れ戻すから関係ないか。
薫は疲れたのかぐっすり眠ってしまった。
少しやり過ぎたかと思ったが、まぁ、逃げたいと思った薫が悪いのだ。
それに、俺としては、万々歳なのだ。
もっと逃げたいと願っても大丈夫だ。
むしろ、welcomeだ!
そっと、薫の頬に口付けし
「一生一緒にいような?薫はもぅ誰にもあげないから。」
そう、告げたが熟睡しているのか、答えは帰って来なかった。
だが、小さく身じろぎ、キュッと俺の服の袖を掴んだあたり肯定したと考えていいだろう。と一人自己完結した。