檻姫視点。
あぁ……初めて貴女を見た時僕はもう、二度と貴女以外など愛せないと思ってしまった。
白く滑らかな肌を優しく包み込む
夜空の様な黒い髪。
薄く桜色に色ずいた唇。
こぼれ落ちそうな程の大きな目
月並みの表現だけど、美しく、綺麗でまるで月の住人の様だと思った。
彼女を見掛けて3日たった。
彼女が12人の姉と川遊びをしている所を見掛けてしまった。
咄嗟に彼女の服を隠してしまったのは仕方ないと思う。
なにせ、それぐらい美しかったのだ。
彼女と12人の姉が川遊びを辞めて服を取りに近付いてきたので木が茂った場所に身を潜めた。
手を伸ばせば届きそうな距離まで彼女と近付いたのは、初めてかも知れない。
「お姉ちゃん……私の服が無いの……知らない?」
「馬鹿ねぇ。無い訳ないじゃない。探してらっしゃい。私達はそろそろ仕事に行かないと行けないの。一人で探せる?」
「うん。行ってらっしゃい。頑張ってね。」
彼女の声は綺麗だった。
穢れなき清水の様に滞り無く流れる彼女の声は鈴を鳴らした様に澄んでいて、聞いていて不快感を驚く程与えないのだ。
「あれぇ……どうしよう。お洋服が無いと帰れないわ……」
「返して欲しい?」
「きゃっ……誰?」
怯えた声も素敵だと思った。
もっと怯えさせたいと思わせる……
加虐心を煽る様に怯えるのだ。
あぁ……彼女を怯えさせたいとも思うが、彼女に好かれたいとも思った。
僕はなんて罪深いのだろう。
「さぁ?普通の一般人だよ。」
「そう。ところでお洋服を返してくれない?帰れないわ。」
「……僕のお嫁さんになってくれるなら返すよ?」
「そう。じゃあなるわ。」
驚く程すんなり承諾した……
条件を出しておいてこんなにもトントン拍子でいいのだろうかと思ったのは内緒だ。
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「ここが、貴方のお家?ところで名前を教えてくれないと困るわ。
私は織江織江柊よ。」
ふーん織江さんか。名前まで綺麗なんだ……なんだか羨ましい。
「僕は……引田薫だよ。」
僕の名前って女々しいからあんまり好きじゃないや……何度薫ちゃんって呼ばれた事か……
「そう。薫さんね。凄く私の好みだわ!
健康的に色ずいた肌に優しそうなモスグリーンの瞳!
それに、亜麻色のサラサラの髪!
閉じ込めたいぐらいだわ! 」
あっ…思ったより織江さんは変な人でした。
僕が好みだなんて、変人にも程がある。
「ねぇ!いっその事薫さんを閉じ込めて仕舞いましょうか!あっ!食事や衛生面は心配しないで?私が管理して上げるから。金銭面も心配しなくて大丈夫だわ。私が養って上げるから。」
……命の危機かな?
自立した生活が出来なくなるね。
ヤバイかも。
「ヒッ……大丈夫だよ。自分の事は自分で出来るから……」
「ヘェ……なら、出来なくしてあげる……私が居ないと生きてけないぐらいに。まずは……手足が邪魔だから切り落としちゃおっか?」
ヒィィ……こっわ!
恐怖だよ!?ホラー映画さながらだよ!?
ちょっ!近付かないでぇぇぇぇ……
ってところで視界が真っ暗になった。
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「んん……えっ?ここ何処?」
「私の部屋かな?」
「そっ……そうなんだ……ところで……手足のコレ外して欲しいんだけど……」
そう。僕の手足が、可愛らしいリボンでラッピングされてあるのだ。
え?意味が分からないって?
拘束されてるって言えば理解出来る?
「可愛いから嫌だわ。」
「えっ……」
「美味しそう……ヤバッ……可愛い……」
なんか、凄い怖いかも……指をバラバラに動かしながら段々近づいてくる様子は恐怖以外の何者でもない……
「イヤッ……辞めっ……」
「フフフ……可愛い……」
あっ……駄目だ……潔白の危機だよ……
身の純白が失われちゃう〜
処女を奪われちゃいそう……
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「うぅ……酷いよ!出して……」
「まだ、そんな事言うの?昨日みたいにされたい訳?変態……」
「ウグッ……女の子の格好して、町を出歩く織江さんの方が変態だもん!」
そう、女の子だと思ってた織江さんは男の娘でした。
えっ?川遊びの時服を脱いでたんじゃ無いかって?
水着の上に膝丈のパーカー着てたんだもん!気づかないよ普通!
「ふーん。そんなに要らないこと言う口はどうして欲しい?
「どうしても、こうしても解放して欲しい。」
「要らないこと言う口は塞いでしまおっかな?」
あぁ……なんだか失言の予感です……
やってしまいました。どうやら、火に油を注いだようで……怪しく、艶めかしい笑みを浮かべて居ります……そして僕の唇はあっという間に織江さんの唇で塞がれ挙句の果てに舌が中に入ってきました……
「んぅぅ!酷いよ!織江さんなんか、大嫌いだ!」
「ふーん私は大好きだよ?一生離さない。」
あぁ。僕の可愛いお嫁さんは実は男で僕がお嫁さんにされてしまいました……
だれか、僕の人生設計取り返して来てください。
僕は、織江さんの檻から、出られそうに無いんで。