目覚め
朝、けたたましく鳴る目覚ましを止め、青年は目を覚ます。
時間は丁度5時を指していた。
「・・・眠たいですなぁ」
ぼんやりとそう呟くと、再び布団を被って眠りに落ちていった。
「滝沢さん起きてください。折角の作ったご飯が冷めてしまいます」
2時間後、滝沢と呼ばれた青年は女性に起こされて目を覚ます。
女性はピンク色の長い髪を後ろで纏めており、表面に文字が書かれただけの半袖のTシャツとズボンを着ている。目は気怠そうではあるが、じっと青年の顔を見つめている。ちなみに胸はとても大きく、『ココアはおしるこじゃない』と大きくプリントされた文字は広がって見える。そして、左腕は肘から下が無かった。
「おや、おはようございます山崎さん。早速で申し訳ないのですが貴方の左腕はどうなされたのですか?」
滝沢は眼を擦りながら、山崎へと尋ねる。
「あ、コレですか?朝食のハンバーグを作るときに混ぜました」
山崎は嬉しそうに答えた。
「・・・朝食は健康食品で我慢します。僕はカニバリズムの趣味は無いって言ってるじゃないですか」
「でも私の肉は美味しいと巷で評判なんですよ?」
「だからといって食べる気にはなれませんよ」
滝沢は溜息を一旦付き、着替え始める。
「そうだ、滝沢さん。また政府から依頼がきてましたよ」
残念そうな顔をしながら、山崎は滝沢に封筒を手渡す。
だが、滝沢は封筒を見る事無く、丸めて脇にあるゴミ箱へ投げ入れる。
「またですか。政府もしつこいんですよね・・・僕は人殺しは好きではないのに」
「そうは言われましても、了解の返事を出してしまいましたので内容を読んでください」
ゴミ箱に入ったクシャクシャに丸められた封筒を拾い、再び滝沢へ渡した。
「勝手に見たんですか?」
「今月入ってコレが来たの5通目じゃないですか。そりゃあ気になりますよ」
「・・・なぜ勝手に決めるのですか?」
「だって報奨金が10億ですよ?滝沢さんは合法的に人を殺せる。私は10億で死ぬほど肉まんが食べられる。誰がどう見てもwin-winの関係です」
全く悪びれる事無く、山崎は言い返す。
「まぁ、良いです。但し、もう27億しか貯金が無いので、報奨金は事務所で管理するという事で」
滝沢は再び溜息を付きながら、コートを羽織った。
「嫌です。あと滝沢さんどこ行くのですか?」
「コンビニですよ。朝食は貴方が片付けておいてくださいね」
「あ、じゃあついでに肉まん買ってきてくださいねー」
返事を返すことなく、コートのポケットに財布をしまい、滝沢は部屋を出た。