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プロローグ

青年は、黒く澄んだ目で窓の外を見た。

既に深夜を回っているからか、街明かりは殆ど消えていて、とても暗い。

寧ろ、地上数十メートルという高さもあわさってか、暗闇のようにも見えた。


「私は本当は、記憶障害なのかもと、時々思うことがあるのですよ山崎さん」


「へぇ、何故ですか?」


部屋に真っ赤な液体が入ったコップを持って入ったきた女性は、手に持ったコップを青年に手渡し、聞き返す。


「最近2000年くらい前に何があったのかが、全く思い出せないんです。むしろ、3日前に食べた晩御飯でさえ思い出せません」


「安心してください、皆そうです。」


女性は雑に言い返し、腰辺りまである長い桃色の髪の毛を束ね始める。

とても大きい胸は服を押し出しているためか、『お前は蟹だ』と大きくプリントされた文字は横に広がって見える。


「そういえば、2000年ほど前ってキリストが生き返りましたよね。もしかしてそれじゃないんですか」


「いやいや、私は確かにキリストさんに晩餐に招待されましたが…あっ」


「何か思い出したんですか?」


「そういえばその前にキリストさんが隠れてた場所を少しの銀貨で売っちゃったんですよねぇ。上手いこと彼の弟子に罪を擦り付けることが出来たんですよ」


長い悩みが解消されたのか、青年は笑顔になった。


そして、真っ赤な液体に口を浸けた。


「少し鉄臭いけど美味しいですねコレ。どこ産のトマト使ったのですか?」


「どこ産と聞かれましても…強いて言うなら私でしょうか」


青年は無言で窓を開け、半分以上残っている飲み物を、コップごと窓の外に向かって思いっきり投げ捨てた。

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