ボクが生まれてきた理由
子供が小さかった頃、実際に話して聞かせたことを短編にしました。
こんなアホなことばかりを教えてきたんですね~(-∀-`; )
「ねぇ、ママ。
ボクはどうして生まれてきたの?」
「それはね、神様が決めたことなの」
「神様?」
「そう。
こーちゃんがママのお腹に入る前に、お空のずっとずっと上で、神様とお話して決めたのよ」
「どんなお話?」
「それはね―――」
~天界~
神様が雲よりも、ずっとずっと高いところから下界を見下ろしていました。
そこに、下界へ下りたいと願う天使がきました。
天使は、小さな小さな羽を広げて、神様に話しかけました。
「神様」
「おや、なんだね。私に用かい?」
神様は振り向くと、じっと天使を見ました。
そして、その天使がそろそろ下界へ下りる順番が来ていることを知りました。
「ぼく、人間になりたい」
「……天使のままでよかろう」
「いやだよ」
「なんでだい?」
「だって、天使のままでいるのは飽きたんだ」
天使の世界は、とても平和ですが、平和すぎてつまらなくなるらしいのです。
「飽きたって、贅沢だな」
神様は小さな声で独り言を言いました。
「まぁ、いい。どっちにしても、そろそろ下界へ下りる順番がくるころだった」
「え? そうだったの?」
「そうだ。その順番が少し早まったところで、大した違いはないだろう」
結構適当な神様です。
「よし、ではお前はどの人の子供になりたい?」
神様は下界を指さしました。
天使は、神様が指差した下界に目を向けました。
「そうだな~」
下界には、たくさんの人間の姿があります。
太ってる人、痩せてる人。
若い人、お年寄り、子供。
学生がいたり、働く女性がいたり、女性の格好をした男性がいたり。
それを見ているだけで楽しそうです。
その中で、天使は一人の女性に目を止めました。
「ボクはあの人がいい!」
「どれどれ……」
神様は、天使が指さした女性を見てから、持っていたファイルをめくりました。
あるページが開かれると、今度は指で上から順番に見ていきます。
その指が、あるところで止まりました。
「あ~、これか」
「どう?」
天使は目を輝かせて神様をみました。
「うん、あの女の人がいいの?」
「うん、とっても優しそうだし、綺麗だよ」
「そりゃ、若いからね。みんな若い時は綺麗なんだよな……」
これまた、独り言です。
「え~と……。あの人のところに生まれると……だ。
……あの人は、かなり貧乏だけど……まぁ、いいか。
今月はノルマが上がってないしな。
神なのに、仏心を出すから、俺は出世できないんだよな」
最後のほうは、天使には全く聞こえません。それほど、小さな声でした。
「うん! いいよ~。あの人の子供になると特典がつく!」
今度はやたらと大きな元気な声です。
「え? 特典?」
子供の天使は『特典』の意味がわかりませんでした。
「まぁ、おまけみたいなものだよ」
「おまけ? どんな?」
おまけと聞けば、ワクワクするものです。天使も例外ではありませんでした。
「まず、心臓病がもれなくつく」
あまり、付いて欲しくないおまけですが、神様に言われると得した気分になりました。
「え~! そんないいものがつくの? 嬉しいな~」
冷静になれば嬉しくはありません。
「それに、かなり病弱だ」
「へぇ~」
「それに、お前は動物好きな子供になる」
「動物? 犬? 猫?」
「ん……。生まれてからのお楽しみにしておこう」
というよりは、まさかのブタ好きとは言えないだろう。
「そうか~。ボクは動物が好きな子になるんだね」
「そうだ。大人になった時には、自分で大好きな動物を飼えるようになる」
「ということは、ボクは大人になったら、動物と暮らせるんだね」
「そういう筋書きだ」
「ワクワクしてきたよ!」
「じゃ、あの人で決まりだね」
「うん! ボク、あの人がいい!」
「ということで、こーちゃんは、ママのところに生まれてきたの」
「そうか、だからボクの心臓はトクトクって言わずに、ザーザー音がするんだね」
こーちゃんの心臓には穴があいているのです。
神様との約束通り。
「ボクの動物好きって、ブタさんだったんだね」
お母さんは笑っていいました。
「そうね、こーちゃんのブタさん好きには、呆れるほどだものね」
「そっかー、そっかー。ボクは、神様とお話してママのところに生まれてきたんだね」
「そうだよ~。こーちゃんがママを選んでくれたんだよ」
「よかったー。ママを選んで」
こーちゃんがママの膝に顔をうずめます。
ママは嬉しそうです。
「でもね、ママ。ママはこーちゃんでよかったの?」
「なんで?」
「だって、ボクじゃなかったら、もっと元気で、心臓も悪くなくて風邪もひかなくて元気な子がきたかもしれないよ」
「それはね、こーちゃん。
ママのところに誰が来ても、やっぱり心臓病で風邪を引きやすい子だったんだよ」
「なんで?」
「それはね。ママの子になるための特典だから」
ママはちょっと悲しそうに笑いました。
こーちゃんは、ママの言葉を聞いて、とっても嬉しそうです。
「そっかー。ママの子になると、心臓病のおまけがつくんだね。
それは、ボクじゃなくても、誰がママの子になっても同じだったんだね」
「そうだよ」
「よかったー。ボク、心臓病でもママの子に生まれて、本当によかった。ママ大好き!」
ママは、優しく こーちゃんの頭をなでながら、本当に小さな声でこう言いました。
―――ごめんね、おまけ付きのママで……
いかがでしたか?
やっぱり、アホだってwww だよね~としか言いようがないww
さて、次回作は真面目に長編をアップします~
明日の20時です。
またきてくださいね~•(●´ω`●)ゞエヘヘ