3話 出会いと非日常
外から鳥の声が聞こえ始めてくる。
そして、なにより太陽の日差しがとても眩しかった。
「ピピピッ、ピピピッ……カチッ」
いつものように俺はだるそうに目覚ましに手を伸ばすと、目を開く。
そして、いつも通りの汚い天井が視界いっぱいに映る。
「はぁ、今日も一人か……」
そう呟き、いつもと同じ変わり映えのない一日が始まる。
はずだった。
「……?一人じゃないよ?」
「どぅわぁ!?」
声がした先にいたのは、金髪の短いツインテールをした少女だった。
え?なんで俺以外に人が?
俺は寝起きの頭をフル回転させて考える。
「なんで女の子が俺の家にいるんだ?
もしかして、酒の勢いで……いや、昨日酒は飲んでないはず。
……それにしても、見たことない子だよな。
これって下手したら誘拐になるんじゃ……!?」
「なに一人で喋ってるの?」
ぶつぶつと俺が呟いていると、不意に少女が顔を覗き込んできた。
うん、とりあえずは、彼女に聞いてみてみよう。その方が話が早そうだ。
とは言っても、幼いからまともな返事は期待できないが。
「ねえ、お譲ちゃん。お家は何処なのかな?」
なんか、誘拐犯みたいな言い方になったが気にしないでおこう。
で、問題は彼女の返事なのだが……
「ここが私のお家!」
「は?」
いやいや、意味が分からないから!?
これは、とりあえず交番に届けた方がいいのか?
でも、それはもう少しあとでもいいか。
朝のコーヒーを入れると、俺は少しでも情報を得ようと質問を続けた。
「えっと。じゃあ、お父さんかお母さんが何処にいるか分からないかな?」
「う~ん。お父さんて言うか、ご主人様ならいるよ」
「…………?」
「私のご主人は天野浩太!」
「ブフ―ーッ!!」
それを聞いた俺は盛大にコーヒーを噴いてしまった。
だって当然だろ?
それ、俺の名前だもん。
見ると、訳が分からないという顔を浮かべる俺に対して、少女は自慢げに笑っている。
「ちょっと待て!なんで俺の名前知ってるんだよ!?」
そう言うと、少女は履歴書を指差した。
ああ、なるほど。あれを見たのか。
どうりで俺の名前が分かる訳だ。
一つ謎が解けた俺は、立て続けに質問した。
「じゃあ、俺が主人ってどういう意味だ?」
なんか、砕けた言い方になってきたけどまあ、気にしない。
「えっとね、私ペンだから」
「…………は?」
「だから、私は浩太のペンだって」
いや、意味不明だ。
何だこの謎少女?
俺が良く分からないという顔をすると、少女は言った。
「むうっ、私の言ってる事信じてないな?」
「いや、それ以前に意味が分からない」
「分かった。じゃあ、分からせてあげる」
そう言うと彼女は、ギュッと目を閉じた。
すると不思議なことに、どんどんと体が半透明になり、しまいには見えなくなった。
そして、俺の足元には一本のペンが転がってるだけだった。
昨日、無くしたはずだったあのペンだった。
「おいおい、マジかよ……」
そう、彼女は本当にペンだったのだ。
意思を持った、俺の。