2話 孤独と異変
「ピッ」
バイト先へ着くと、俺はタイムカードを通した。
「おっ?おはよう。天野君。いつも通りだるそうだねぇ」
「えぇ、まあ二十歳でこんな生活してるし当然ですよ……」
今、話しかけてきた人は、池沼さん。
バイト先で働いている、正社員の人。
あ、因みに俺が行ってるのは建設関係のバイトだ。主に肉体労働。
ホントにシンドイ……
そして、この池沼のおっさん、フレンドリーなのは良いんだけど、いつでもハイテンションでとにかく疲れる……
「それじゃあ、今日も一日頑張っていこ―!」
「おー……」
数時間後……
バイトが終わった俺はそそくさとバイト先を出た。
特に予定がある訳でもないが、早く家に帰りたかった。
「ドンッ」
「あっ、すいません!」
急ぎすぎたせいか、人とぶつかってしまった。
その人に睨まれて、俺のテンションはまさに最底辺だ。
「あ―……」
さっきぶつかった弾みにカバンを落としてしまったみたいだ。
俺は、地べたに落ちた物を拾い集めながら思う。
俺の人生最悪だ……。
結局そんな、気分のまま家に着いてしまった。
ブルーな気分には変わり無かったが、もうすぐ面接の日だ。
俺はラジオをつけると、気持ちを切り替えて履歴書の紙を取り出す。
『巨大な太陽フレアが今夜中にでも……』
ラジオが意味もなく流れ続ける。
はっきり言うとラジオなんて聞いちゃいない。
とにかく、俺は孤独なんだ。
「あっ……」
履歴書を書こうとしていた腕が止まる。
「しまった、ペン無くしちまったみたいだな」
あれだ、人とぶつかった時に落としたかな?
しょうがなく俺は新しいペンを買いにコンビニへと向かった。
『……特殊な光線が含まれており、影響が懸念されて……ジジジッ、……影響ねぇ~』
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「なんか、今夜は空がおかしいな」
俺は、帰り道を歩きながら思う。
夜中なのに赤い夜空。火事でもあったのだろうか……
しかし、距離からして俺のボロアパートには火の手は来ないだろう。
我ながら不謹慎な発言だな。
ガチャッ
「ただいま~」
部屋の中ではラジオの音が流れ続けていた。
返事が返ってこない部屋を眺めて、俺はため息をついた。
相変わらず、この孤独感には慣れない。
慣れたくもないが。
俺は履歴書を書こうと床に座り込む。
ちゃぶ台型のテーブルの上を眺めていると、ふと異変に気付いた。
「あ……れ?このペン、俺無くしたんじゃなかったっけ?」
そう、無くしたはずのペンがテーブルの上にあったのだ。
それも、あたかも元々そこにあったかの様にして。
「こ、怖っ!?」
ホラー映画でも見たような、いや、それよりリアルな恐怖が俺を襲う。
いや、もしかしたら、俺が何かを勘違いしてペンを無くしたと思ってしまったのかもしれない。
俺はとりあえず履歴書を書くと、そそくさと布団の中に入った。
なぜだろう、その時は誰かに見られている気がして気分が悪かった。