「記-さけび-憶」 8
紗江は気が付くとその場に倒れ込んでいた・・・
起き上がり高台から降りた、そして自分の掌を眺めた・・
夢(過去の記憶)での感触が残っていた・・
少女の首を絞めた時の感触が・・・
少女はもがき苦しみながらもこの世の悪夢から解放された・・・
紗江の心の中に感じたものは、少女への哀れみと、絞め殺したという快感だった
少女は首を絞められている間、何かを言おうしていた・・
紗江にはそれが理解できなかった・・
彼女の叫んでいた言葉は「助けて死にたくない」というものだった
「助けて欲しい、この苦しみから解放して欲しい」
悪夢を繰り返す紗江にとっては命の断絶を行うのが最良の行為と思った
彼女は息絶えると安らかな顔になり、そしてただの肉のかたまりとなった・・・
紗江はそこには何の価値観も感じることなく、解放された少女の安堵と命を奪った快楽しか残っていなかった・・
「あの子はこうして欲しかった」
その判断は強いものであった・・・
紗江はビルの端まで歩るき始めた・・・
「・・・」
歩くたびにすれ合う股にヌメリを感じた・・・
スカートをまくり上げ下着の中に手を入れた
「ぬちゃ・・」
「・・・」
紗江の体は異常に興奮していた・・少女の殺害によるものだった・・だが紗江はそれに気づいていなかった・・
下着から手を抜き取りビルの端で世界を見るかのようにじっと眺めた
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[小川 京介]
京介は新幹線に乗り、うたた寝していた・・
環境の急変と母親の異変で精神的に相当参っていた・・
その中で奇妙な夢を見ていた・・その夢とは、時折、自分の前に現れた女の子のものだった
「よく、見ておくのよ・・」そう語った彼女の姿が見えた・・
彼女はどこかの高台で何かを見つめているようだった・・
その表情はとても冷ややかなようだが、どこか包み込むような優しさも感じていた・・・
それでいてとても悲しそうな感じに見えた・・・
「あの子は一体誰なんだろう・・何故、俺の前に現れるのだろう・・・」
京介は、無意識にその子に引き込まれていた・・
「どこなく・・母さんの雰囲気に似ているような気がする・・・」
顔は似てはいないが・・何故か母親、愛美の面影を感じていた・・
突然、その子は京介の方を振り向いた・・
「くるっ・・」
京介はその子に声を掛けようとした
「あの・・君は」
女の子は京介の存在に気付くことも声に反応する事もなく通り過ぎた・・・
「俺が見えてないのか・・・」
そして、その子は立ち止まり振り返った・・それと同時に京介は目を覚ました・・
「夢か・・・しかし、なんであんな変な夢を見るんだ・・・」
母親の状態が急変し始めてから、あの子は俺の目の前に現れるようになった・・・
何処かで見かけたことがあるのか?・・・
いや、そんな事は無い・・もしかしたら母さんの知り合いなのか・・・
幾ら考えても答えは想像でしかなく確信的ものではなかった・・・ただ、何故か分からないが、関東に行けば何か答えが解るかもしれないという強い感覚だけだった
母親、てんてんが人生の最頂点と地獄を味わった場所・・・
そこで出会ったはずの父親と思われる「哀川 京介」の存在があった場所・・
カバンの中にあった名刺の「HEAVENS」とかいうカフェ・・
そして、古新聞の記事であった、「(株)MIO」のある場所・・
京介はそれらを調べるときっと何かが分かるはずだと感じていた・・・
「女の子の事も、哀川という奴の事も・・・」
遠くの景色を見つめるようにぼんやりと考えていると一人の男が話しかけてきた・・
『相席イイですか?』
『えっ・・どうぞ・・』
「席が空いているのはここだけではないのに、何故ここなんだ?」
俺は何か不気味なものを感じた・・・奇妙な夢を見たせいなのかもしれないしれない・・
男は笑顔で会釈をするとゆっくりと座った
『旅行ですか?』
男が話しかけてきた
『えっ・・まぁ、そんなところです・・』
『そうですか、いいですね』
そう言うと男は目を瞑り静かになった
「気持ち悪いおっさんだな・・・」
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新幹線は大宮に着いた
すると、その男は『では、御先に・・』と言い席を去って行った・・
「アイツも関東の人間なのか・・」
そして、その男が座っていた席を見た、するとそこに何かのメモ用紙のようなものが置いてあった
「なんだこれ・・」
京介はそれを手に取り広げて見た
「(株) MIO を目指せ」と書いてあった
俺は慌てて、窓から男を探すように駅ホームを見た、だが、見つける事は出来なかった・・
「何なんだ・・あいつ・・俺の行先を・・・」
新幹線が動き出し、窓の景色が流れ始めた・・すると、あの男がホームに立っていた・・
俺は立ち上がりその男を見つめた、すると、俺に向かい会釈をしていた・・・
自分の意思と無関係に何か大きなものが動いているような気がした
「俺の行動は監視されているのか・・・・」
不自然な形で現れる偶然・・・そして奇妙な少女・・
一抹の不安を抱えながらも、京介は東京駅へと着いた・・
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