「迷-しんじつ-宮」 14
京介は紗江を抱きかかえた・・・
『京ちゃん、怒らないで愛美・・いい子にするから・・・』
京介の心にどこにもぶつけようもない、どうしようもない感情がこみ上げた・・・
「母さん・・・俺は貴方の望む京介じゃないんだよ・・・」
自分を父親の哀川 京介と錯覚し縋りつく母を京介(小川)は優しく抱きしめた・・・
どうしようもない気持ちに包まれ涙が知らないうちにこぼれ落ちた・・・
顔は違うのに・・・何故か、この子に母を感じている自分にも怒りみたいなものがこみ上げてきた・・
『怒ってないよ、大丈夫、大丈夫だから・・安心して・・』
優しく声を掛ける京介に紗江の人格の中の現在の「愛美」は安堵を感じるように
胸に顔を埋め甘えてきた・・・
首の後ろに手を回し顔を近づけキスをせがんできた・・・
京介の精神は現実を受け入れるべきなのか、今ここで起こっている事は真実なのか
気が動転していた、故に成すすべに逆らわなかった・・
母を感じる全くの別人の要求を受け入れキスをした・・・
涙が止まらなかった・・・・
何故・・何故・・なんだ・・・
母さん・・・この娘・・・
何故、こんなことに・・・
紗江は京介との口づけに満足したのか次第に体の力が抜けるように眠りについた・・・・
京介は眠りについた紗江を抱きかかえ室内のベットに横たわらせ毛布を掛けた
『流石だね・・小川 京介・・・やはり君は鍵を握る存在なのかもしれないな・・・』
『鍵だと・・・ふざけるな・・』
『ふざけてなどいない、全ての物事には始まりが存在する、つまり同時に終わりも存在するものだ・・・今までに私では制御できなかったことを君は出来る・・しかも・・何か知識があるわけでもなく、やり方を知ってるわけでもない君がだ・・・』
『そんなの信じられるか偶然に決まっているだろ』
『物事に偶然など存在しない、全てに存在するのは理由だ』
『理由?』
『そうだ、君の母、紗江、この二人は哀川 京介以外は完全なる制御は出来なかった、故に彼の肉声を残しておいたボイスレコーダーを使ってきた。だが、これは発動と終了しか使えない・・・君は違うだろ』
『言ってる意味がわからないよ』
『君は傀儡に好まれ、求められている、つまり、君を見て哀川 京介との同一のものを彼女たちは感じているのだ・・・私のような小細工を使わずとも君ならばこの最終形態と呼ばれる「紗江」を完成させることも可能だし、もしかすると入院している君の母の意識も正常なものに出来るかも知れないと言っているのだ・・・』
『母さんが・・・まともに・・・』
『そうだ、だからこそ君は傀儡を知るべきであるのだ・・・母さんの為にもな・・・・ニヤリ・・・』
母親を非常に大切に想い、哀れに想う 京介の気持ちを工面しジャニスはそう投げかけた・・・
「紗江も愛美もそんなに簡単には事は運ぶわけがない・・・今まで数えきれないほどの調整をしてきた、だがどうしてもこの「紗江」は自制が強く、意識の飛び方、人格の変化の仕方が普通ではない、サタン(狂気の人格)が強く残りとても危険な存在でもある・・・小川 京介が傀儡師として目覚めどう扱うのかが見てみたい・・
母親、愛美の完全回復など無理に等しいものであろう、実際近くに居ながら(小川 京介)何も変化の無かったのが愛美だ、傀儡師として覚醒をしたとしても京介(哀川)さんの掛けた傀儡の呪縛を解くのは無理に決まっている・・・・」
『母さんが治るって本当かよ・・・』
『君が傀儡師として覚醒すれば可能性はあるという事だ』
『傀儡師ってなんだよ』
『人間という生き物は実に身勝手な生き物だ、自分が人生の主役であり他者を気遣うふりをしながら一生を過ごすものだ・・・他人の目を気にし、自分の評価を気にし、人に好かれたい、嫌われたくないなどとくだらない事に拘るのも人間だ』
『・・・』
『人は弱い・・とよく言う人間がいる、決してそうではない・・人間のくらいガサツで下品な生き物はないのだ・・・弱き人間が集まり世の中にルールを作る、そしてそのルールに縛られる弱き人間は今度はそのルールにすら文句を言い始める・・・当たり前の事を望み、平均を求める中で必ず皆がこう思う・・「私は特別だと」・・』
『弱き心が作りだしたものが神だ・・・実際は神など何処にも存在などしない・・・君の母さんや紗江、神がいたとしたら何故こんな事になってしまった?・・神とは実に無情な存在とは思わないか?』
『・・・』
『世の中の殺人事件、そこで殺される人間は神は与えた死だと思えるか?』
『思わねーよ・・・一体、傀儡師と何が関係あるんだよ』
『傀儡師とは人間の本質を変えてしまい、その相手を思い通りにする・・・歩むべき道を変えてしまうのものさ・・・』
『そんなの許されるわけないだろう!』
『では、誰に許されない?神とでも言いたいのか?』
『・・・人間的にだよ』
『では、人間とはなんだ?』
「何を言ってるんだ・・・こいつは・・・」
『君はこの傀儡にされた者たちを理解し、そして解放することが出来る、壊すこともできるんだ・・』
『壊す・・・』
『そうだ、君の母を含め全ての傀儡を葬り去ることがね・・・ニヤリ』
『全てのって二人だけだろう』
「傀儡を受け入れ始めているな・・・・」
『紗江の中にはまだ数対傀儡が存在する、それを一人一人解いていくうちに傀儡を理解できる・・・そして対処方法も解決策もだ・・・』
色んなことが頭の中を駆け巡った・・・
何を言っているのかわからない・・
ただ、母さんとこの娘を助けたい・・
それだけしかなかった・・・
。




