「迷-しんじつ-宮」 11
私は新垣 紗江という女の子・・・
多分・・歳は二十歳くらいだと思うけど・・・沢山の時間が私の中で経っているような気がする・・
何年も・・何年も・・私は眠り続けた・・・
何時かは分からないけど、気が付くと私は見たこともない世界の中に居た・・
そして、自分の意志が自由にならない世界と気づくまではあまり時間もかからなかった・・
それは、何故、そうなのかは自然と受け入れることが出来た・・
私は、恋人を自分の手で殺してしまった・・
そして、私は地獄に墜ちた・・・愛する人を殺めた代償は受けなければならない・・ここは地獄なんだと
そう思ったから・・・
自分だけの不幸だけではなく、ここには沢山の不幸な人間が存在する
自分の不幸だけでは償いは許されることはない、他者の不幸も背負い、償い、浄化され・・
生まれ変わるのだと・・・そうどこかで感じていた・・
思い出そうとする記憶の中で、私が思い浮かぶのは彼(佐原)の殺害シーンばかり・・楽しい思い出や愛し合った日々があった筈なのに浮かぶのはあの残酷なシーンばかり・・・許されることはない・・
愛するといった言葉はお前には不必要、愛する人を殺した事だけ考え償い続けろ・・と言われているような気がした・・・
私の居る世界には沢山の女の人が存在した・・・
私の意識は常に誰かの意識の中、もがき苦しんだ・・・愛、憎悪、疑念、疑心案義・・どれにも属し、どれも言葉では説明が出来ないほどの想いだった・・・
名前は思い出せない・・・私は誰かの中にいた・・・
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絶望の淵にいた・・・
信じれるものは「彼」一人・・・それ以外のものは私を闇へと陥れようとするもの・・・
私は「彼」だけの為に存在し、その「彼」の為ならば何でも出来る・・・
そう思った・・・
「彼」と一緒にいるだけで全ての不安はかき消された・・・
「彼」に愛されることを望み、「彼」に嫌われることだけを恐怖と感じた・・・
それは・・とても暖かく・・とても冷ややかな世界・・・
少し間違えると、地獄の底に落ちるような感覚さえ存在した・・・
だけど・・「彼」が居ない世界など、生きる意味すらない・・・
そう感じていた・・・
迫りくる恐怖・・・突き抜けるような安堵・・・
それは相反するもの・・だけど、それが無いと存在価値すらない・・
私は「彼」に必要とされることだけが憂いで喜びだった・・・
『結衣・・辛かったやろ・・・ごめんな・・』
(楽~はじまり~園参照)
彼は私にそう言葉を掛けた・・
『これで、京介さんとずっと一緒に居られんですね・・』
『あぁ、そうや・・結衣・・』
その後・・彼は私にこう告げた・・・
「ガラスの破片」
その言葉は聞きたくなかった・・・
その想いがその言葉を聞いた瞬間・・浮かんだ・・・
深い眠りに落ちると同時に・・気持ちの入れ替わりを感じる・・・
だけど・・私はこう思うことにした・・・
全ては二人の幸せのために、彼が準備をする期間なのだと・・・
深い闇に墜ちていく感覚の中、沢山の人とすれ違う・・・
繰り返すこの感覚はいつも同じ場面ばかり繰り返される・・・
墜ちていく最中、誰かが私の身体を掴む・・・そうして・・私は次の人へ入り込むような感覚に陥る
それは永遠に繰り返されるのではないかと思うほどの恐怖と安堵の繰り返しだ・・・
時には、とても懐かしい気持ちになる時もある・・・
それが何故かは分からないけど、そこにいつもあるのは「彼」の存在だった・・・
結衣という女性は死んだ・・・女性に殺されて死んだ・・・
首を真っ二つにされ・・・即死した・・・
深い眠りの中、再び目覚めた時に暮す「彼」との思いの中・・・
そして・・殺した女性の名は「真美」、私は何故彼女が「結衣」を殺したのかも理解できる・・
それは、彼女の中に居た時の感情を知っているから・・
自分が自分で無い、その人が私・・・そんな渦に飲み込まれながら私は存在を維持していた・・・
そう今なら理解できる・・・でも・・目覚めた時は・・何も分からなくなる・・・
どうしてなんだろう・・・
自分が自分で無い・・・私はいったいなんなんだろう・・・
ただ、存在している・・そこには何を意味し、何をすればいいのか分からない・・・
突如、起こる体の異変にただ、ただ、私は翻弄される・・それはいったい何時まで続くのだろう・・・
そう思うだけ・・・
深く寒い水の中に体が落ち、浮かぶような感覚の中、私は繰り返される意識の変化に
ただ私は身を任せる事しかできなかった
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『辞めるんだ!』
頭の中に大きく響いた声・・・
それは、とても懐かしく感じる声だった・・・
「あっ・・・・貴方は・・・・」
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