「迷-しんじつ-宮」 9
「小川 愛美」
紗江の現在の意識の位置を知らせる内容だった
「予測通りではあるが、何故、紗江はここに一人でいることを望んだんだ・・、小川 京介への配慮なのか?傀儡がそんなことを考えるのか?それとも母親、愛美の母性なのか・・・」
ジャニスの脳裏には幾つもの疑問が浮かんだ・・
「・・どうであれ、現状を受け止める他ないか・・・」
ジャニスはそういいモニターを眺めた
砂嵐のような画面の奥に会話をする二人、紗江は京介に近寄り体を求めていた、内面は完全に愛美になっているようであり、息子の京介を哀川 京介と思い込んでいるようであった・・・
互いの会話がそのうちズレはじめ、小川 京介は母を侮辱するなと紗江に殺意に近いものを感じていた
紗江の首を絞め、嘆く小川 京介・・・
どうしようもない現実と過去への苦しみが入り混じる言葉を発していた
ジャニスは爪を噛み、小川 京介の心理を考えていた
「君は来るべくしてここに来た、しかも、自分の意志でだ・・・母を愛するなら、嫌でも過去を知る必要がるんじゃないか・・・・」
ジャニスは呟くように言った・・・
絶望の嘆きの中、小川 京介は意識を過去へと飛ばした・・・
幼少期の頃、母親を色眼鏡で見続けられたことへの屈辱、そんな母を自分しか守る人はいないんだと誓った瞬間・・・
色々な感情の中、小川 京介は紗江に抱かれるようにし意識を失った・・
その後の視点は全て紗江の映像となった、紗江は、か細い体で小川 京介を抱え1Fロビーまで運んだ
その間、何度も小川 京介の顔を眺めたり、触ったりしているようだった
1Fロビーのソファーに小川 京介を寝かせると、横に立ち、京介を眺めはじめた
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「・・・?何だ」
ジャニスは1Fロビーに設置されているカメラの視点を変え、モニターを眺めた
「パッ」
紗江の顔が正面から映し出された
「ブツブツブツ・・・・」
明らかに口元が動いている・・だが、紗江自体の声が発せられていない・・・
紗江の記憶から吸い上げてるデータにも発声は確認できない
「謎の多い傀儡だ・・・」
ジャニスは紗江の口元をクローズアップした
「・・・わ・・たしは・・・誰なの・・・」
そんな風に言っているように汲み取れた
「あり得ない発言だ・・・データの提示とはまるで中身が違うようにしか思えない・・自分が誰かなど考えれる隙間などあり得ないはずだ・・・ならば何故、紗江はあのような言葉を発したのか・・・データを超える傀儡化が行われているのか・・・」
紗江は数十分の間、小川 京介を眺めた後、地下部屋へいきもがき苦しんでいるようであった・・
「京ちゃん、京ちゃん」と叫び、意識は愛美へ移行していたように感じた
「不安定だ・・脆いくらいに不安定さを感じる・・」
完全なる傀儡のはずの紗江が今までの中で一番不安要素の多いものに感じていた
ジャニスは紗江のモニタリングを続けた
倒れた後、意識の居場所はどこに所在しているのか気になった
オリジナルと呼ばれる意識は紗江本来の物とは違う、こちらの言うがままの性質でただ生きているというようなものである。故に疑問など生まれることはないものだった
「カチャカチャ・・」
PC上で再び、数字の羅列が物凄い勢いで動き始めた
「バ-・・・カチ、カチ・・・バ-」
時折、数字が止まりそうになっては再び動き始める・・・これは、紗江の意識が色々な場所へ移動している証のようなものだとジャニスは認識していた
傀儡意識の暴走により、行き場を彷徨っているのだろう・・ジャニスはそう考えた
「カチャカチャ・・・カチ・・」
ジャニスは紗江の意識にオリジナルへ誘導を掛けた
「ドクン!」
『ぅっう・・』
紗江の体が波を打つように大きく一回バウンドした
「データ固定完了、新垣 紗江 オリジナル」
モニターにはそう表示されていた
すると、直ぐにモニター内に映像が映し出された
「・・・今までに無いパターンだな・・・これは面白い・・・ニヤリ」
紗江の意識は真白い空間の中に居た
そこには幾つもの紐のようなものを天井からぶら下がっていた
「・・・・」
紗江は、空間の中でゆっくりと辺りを見渡していた
「・・・」
空間の先には、白い扉が一枚あった
紗江はゆっくりと扉に向かい歩き始めた・・・
「あの扉はいったい何を表しているんだ・・・現実の目覚めと考えるのが妥当か?」
紗江があの扉を開けた瞬間、オリジナルとして目を覚ますのではないかとジャニスは予測した
「スッ・・スッ・・」
色白で細身の脚は扉へ向かっていた、すると無数にある紐が紗江の体へ纏わりつくように紐自身が紗江へとより始めた
次第に紗江の動きは鈍り、身動きがし難くなってきた
『放して・・放して・・』
口元はそのように動いているが、言葉になっていない・・
ジャニスはその紗江の表情を凝視していた
「あの紐は、紗江の中の傀儡達の意志なのかもしれない、閉じ込められている意志が紗江の体を欲しがりオリジナルへ帰さんとしているように見える・・・」
紗江は声にならない声を一生懸命発しているようだった・・
これを助ける方法が無いわけで無かったが、ジャニスは紗江の傀儡の進化としてどのような形へなるものか見たいと思い、手を下さず眺めていた
もがき苦しむ中、紗江はやっとの思いで大きな声で叫んだ
『京ちゃん!助けて!』
「!?・・京ちゃん・・・まだ、意識は愛美だと言うのか・・?」
その瞬間、紗江の体は紐に持ち上げられ逆さまになった
「花?・・・一体何を意味しているんだ・・・」
紗江の朦朧とし宙吊りになり半目を向いていた
「・・・このままでは・・危険だな・・・」
ジャニスはオリジナルへ戻らない紗江を強制的に戻すことにした・・・
「目覚めたとき・・本人だといいがな・・・」
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