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「傀儡2」  作者: 強者☆
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「迷-しんじつ-宮」 4

翌日、紗江の導きなのか、本人の意思なのか、小川 京介は(株)MIOのビルの前に居た




「ビルの中にあの女が見えた・・これは幻覚なのか・・数回も同じ人間を見る幻覚は有り得るのか?もしかしたら俺は頭がおかしくなっているのかもしれない・・例えそうだとしても、俺は母さんをあんなにしたこのビルの連中は許せない・・」




京介はビルの正面玄関の窓に向かい、力一杯ドアを蹴った




「ドガッ」




「割れない・・防弾ガラスなのか?普通の会社のビルにしては妙だな・・」




京介は辺りを見渡し、ビルの廃材と思われるコンクリートの一部を手に取った




「何年間も放置されて劣化し落下してきたものだろう・・」




母は壊れてしまっていく中、このビルは少し壊れただけ・・・やるせない想いが込み上げた




『この野郎!!』




大きく振りかぶりコンクリートをドアに叩きつけた




「ガシャン」




「ガラン ゴロンロゴロン・・」




投げたコンクリートは室内へ入り込み、勢いあまり転がった


京介は割れたガラスの周りを数回足で蹴り、何とか人が入れる大きさにして入り込んだ




「ガシャ・・パリ・・パリ」




「こ・・これは・・・」




外からは見えなかった室内に愕然とした





『母さん・・・』





(株)MIOビルの中はまるで時間が止まっているかのようだった・・・


ホコリまみれの受付カウンター、錆びついているエスカレーター・・・


何よりも、(株)MIOの惨劇の引き金となった母親「てんてん」の巨大パネルがその止まった時間を象徴しているかのようだった




パネルの母は水着でとても優しい笑顔だった・・・




母の全盛期、この会社は母をイメージガールとして起用し、売り上げを伸ばした、それと同時に母も芸能人として成功し良い生活をしてきたのだろう・・・


ならば、何故?母とこの会社は壊滅的な末路を歩んだんだ・・・




母が言う「京ちゃん(哀川 京介)」という男、一人の存在でこうなったとは考えきれない・・・


幾つもの疑問が頭の中を駆け巡った




「今更、それを知ったとしても何かが変わる訳ではないか・・・」




ロビーにあるソファーのホコリを手で払い座った




「ドスゥ」




「カチッ」




京介は煙草に火をつけた




「フゥ・・」




『母さん・・・』




俺は目の前の、母である、てんてん(小川愛美)のパネルを眺めた・・・




この時の母さんはどんな事を考えていたのだろう・・・


幸せだったのだろう・・・


好きな人を信じて、先のある未来を考えていたのだろうか・・・




そう思うと、無性に体の奥底から怒りのようなものが込み上げてきた・・・









『一体、何が起こったんだ!母さんが何をしたというんだ!!』






京介の声はホールに響き渡った・・・




『母さん・・・母さん・・・』




物心ついたとき、母は既に廃人のようになっていた・・・


いつも、窓の外を眺めては独り言を繰り返していた・・・




時々、俺を京ちゃんと呼び、苦しいくらいに抱きしめ・・愛を求めた・・・


子供の頃は分からなくて、ただ嬉しかったけど、真実を知った日から母さんを憎んだ・・


母さんが悪いわけではない、それは分かっていた、でも、子供の俺にはそれを理解できなかった・・


自分は誰かの代わり・・・そして、俺の名も、そいつと同じ名前・・・


自分を見てくれない母親に死んでほしいとも思った・・・




「母さん・・・今はそうは思ってないよ・・・」




何故かそんな事を無意識に呟いた・・・




『このビルの中を探索してみるか・・何か分かるかもしれないし、あの女が居るかもしれない』





辺りを見渡した・・




改めて見てみると室内はとてもだだっ広く、1Fロビーだけでも相当な広さだった


壁に沿うようにコーナー型のカウンターが設置されていた、そのカウンターはホコリだらけで見るも無残な感じだった・・




『少し奥に行ってみるか・・』




「カツカツ・・」




「カチ・・カチ・・」




『つくわけないか・・』




ビルの電気は止められているようだった・・




『ここは明るくなってからにするか・・』



京介が(株)MIOのビルに入り込んでから知らぬ間に時間が経っていた



「もう、こんな時間か・・」




腕時計は既に23時を示していた




月明かりがぼんやりビル内を照らす・・・寂しげに感じた




「昔、ここには何百人と言う人が働いていたんだろうな・・・」




事件が起き、その日からこの会社は時間が止まった・・・




そしてマスコミは面白可笑しく取りただし母を攻め立てた・・・




犠牲者は母だけではない・・・ここの女社長は失踪したままだ・・




「絶対にここには何か秘密がある・・」




俺はそう確信していた



ホールの中央へ行き、エスカレーターの先、天井を見た・・・


吹き抜けで作られたホールはエスカレーターの昇った先からもホールが見えるよう通路が作られていた




「あの女はこの先に居るのかもしれない・・・」




今すぐにでも探し出したいが、どうも足が竦んで前に進まなかった




「移動のしすぎかな・・脚が重いや・・」




少し休むことにした



ぼんやり、考えた・・・




今までの事・・・




これからの事・・・


・


・


・


・


・




考え過ぎて何がなんだから分からなくなってきた・・・







時折、外を走る車のライトがビルの中を微かに照らした、俺は見つからない様に体を隠した


ようやく見つけた、この場所を簡単に追い出されてたまるか、そんな気持ちだった


そうこうしている内に、強い眠気に襲われ、いつの間にか眠りに着いてしまった・・・


・


・


・


「ぅん・・」




朝の肌寒さに目が覚めた・・




「ここは・・・そうか・・俺はここに辿り着いたんだ・・・」




腕時計を見ると午前5時を示していた


こんな所にいつまでも寝そべってては外の人間に見付かるかもしれない・・そう思い


鞄を持ち、エスカレーターを昇り始めた




「カツカツ・・」




一段一段、階段を昇る度に、母のパネルに近づいた・・・




とても可愛らしい笑顔のてんてんは自分を見ているかのようだった・・











「母さん、俺、初めてアンタの笑顔を見たよ・・・」










そう呟き、廊下を歩き始めた









「会議室」「営業部」「企画室」・・・大きな会社だったのを物語るように過去の形跡を感じた




京介は一つ一つの部屋のドアを開ける事にした























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