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第七話:広がる事実

第七話

 中間テストが始まり、すぐに終わった。それ以上でも以下でもない、勉強しているものはそれなりの点数を手に入れ…

「まずまずです」

「相変わらず安定して満点揃えてるな」

「ええ、努力の賜物です。次回も頑張らなくてはいけません」

 勉強もせず、友人を無理やり誘って遊びに行くような愚か者にはそれ相応の点数を授けるいわば通過儀礼…

「えぇ~なんで新戸は一つも真っ赤な点数とってないのっ」

「そりゃまぁ、お前と違ってちゃんと勉強しているからな」

「だって、一緒に遊んでたじゃん」

「家に帰ってちゃんと勉強したんだぜ?くくく、まぁ、期末で頑張る事だな。じゃないと夏休みは補習漬けだ」

「ぶーっ」

「中州、こいつに勉強を教えてやったのかよ?」

「ええ、ちゃんと教えましたよ」

 眼鏡をついっと上げて俺の質問に答える。

「ですが、僕の勉強方法と田畑さんの勉強方法は違ったようで受け入れてもらえなかったのです」

「だって中州君の難しいんだもん」

 こりゃまたとんだ問題児である。一年の頃は隣のクラスだったからこいつの点数は知らなかったけどまさか赤点常習者だったとはな。

「今度は新戸君が教えてあげたらどうですか?」

「えぇ~俺が?」

「ええ、だって田畑さんの友達でしょう?」

「友達じゃない」

「呪ってやる。わたしは残りの人生を全部新戸風太郎の事を呪って生き抜いてやるっ」

 まるで親の仇を見るような感じである。

「でもよぉ、俺は中州より頭悪いぜ?」

「いえ、教える程度ですから大丈夫ですよ。こういったものもやはり阿吽の呼吸が無ければいけません。この前のテニスの授業でもいかんなく発揮されていたでしょう?」

「どうだか…テニスと勉強は違うと思うけどな」

「ともかく、僕が教えたのだから今度は新戸君が教えてあげてください。友人が夏休みの補習に参加しなくてはいけないのは見ていて辛いですからね」

「じゃあ中州が教えてあげてくださりゃいいんじゃねぇのん?」

「順番ですからお願いします」

「ちぇ~」

 愛夏に勉強を教えるのならともかく、何故に同級生の勉強を見てやらねばいけないのだろうか。期末まで時間があるからいいけど、そろそろ始めないとこいつの場合はまずいんだろうなぁ。

 とりあえず放課後、中原さんに一緒に帰らないかと言われる前に(最近よく誘われる…部活があるだろうに)図書館に連れ込んだ。

「ちょ、ちょっと新戸、こんな人気のないところに連れ込んでどうする気?」

「くくく、想像に難くないだろう?」

「わ、わたしをむいてあんなことやこんなことを…」

「そうだな、とりあえず返してもらった答案用紙を全部出してもらおうか」

 アホに付き合ってやるのは一行だけである。

「日本史は自信あったんだけどね。満点かと思ったんだよ?」

 無い胸張ってどんと叩く。

「ああ、そうだな。一問ずつ上にずれていれば合計で九十六点だった」

「でしょー?」

 結果論である。最後の文章問題の欄に『一問ずれとは定番ですね、次回は頑張ってください』と先生からの言葉が書かれている。

「落ち着いて解けよ」

「反省してま~す」

 本当にしているのだろうか?俺がこいつの点数を心配してやる義理はないんだけどなぁ。

 そのあとも悪かった答えは何処か調べ、基本から問題を解かせてみた。

 そんな時、加賀美美奈子生徒会長が図書館にやってきた。

「新戸、こんなところで何をしているんだ?」

「見ての通り友達の勉強を見てやってるんです」

「ほぉ、それはいいことだな」

 俺の希望は『先輩、俺と一緒に放課後期末テスト対策しましょう。わからないところ教えてください~』で色々と進展するはずなのに現実はアホとのお勉強会だからな。

「ども、新戸の親友の田畑焔っていいますっ」

 解いておくようにと言った問題をやめて俺の隣にやってきていた。そして、自己紹介をして握手を求めている。

「ああ、これは丁寧にありがとう。私はこの高校の生徒会長、加賀美美奈子だ。一応、新戸の彼女でもある」

 握手を満足いくまで堪能し、放した後田畑はしきりに驚いていた。そりゃそうだろうな。まさか先輩が初対面の相手に対して『彼女だ』と言うとは思いもしなかった。

「へぇ~」

「意外か?まぁ、私のような女では新戸も物足りないだろうがな」

「そんなことないです」

「ふむ、そうか…おっと、私は用事があるから失礼させてもらうよ。新戸、また今度だ」

「ええ、がんばってください」

 一冊の本を掴んで図書館から出て行った。受付顔パスとかさすが生徒会長である。

「さ、俺たちは勉強に戻ろうか。それ終わったら今日は終わりだ」

「うん、わかった…ところで新戸」

「何だよ?」

「一緒に帰ろうよ」

「ああ、いいぜ」

 どうせこの後部活に行くわけでもない。部活に入ってないのだから。

 たった一問の問題を解くのに数十分かかった友人をどうしたものかと思案するが答えは出ない。いっそ、家庭教師でもつけたほうが(十人ぐらいいればいいかな?)いいかもしれない。そんな結論が出たところで珍しく黙っていた田畑が話しかけてきた。

「あのさ、新戸」

「何だよ」

「あれってどういうこと?」

「あれ?あれって何だよ?」

「さっきの生徒会長が言っていた事。彼女だって言ってたけど?」

「あ、ああ、あれか。あのな、実はだ……」

 俺はアホでもよくわかるように説明しておいた。

「…つまり、二股かけてるって事だよね?」

「いや、大丈夫のはずだ。まずは友達からお願いしますって言っているからな」

「……はぁ」

「何だよ…その人を馬鹿にしたようなため息は」

 夕方でもそれなりに暑く、日もまだ強い。そんな最中、田畑は途中で歩を止めた。車が一台田畑、俺を追い抜いて行く

「どうしたんだよ」

「おんぶ」

「おんぶぅ?何わけのわからない事を言ってるんだよ。暑さで頭やられたんじゃねぇのか?」

 両手を俺の方へと突きだしている。しかし、ちゃんとおんぶしてしまう自分が悲しい。

「あのさ、新戸。二股してるって事がどちらかにばれたらどうなるかわかってるの?」

 後ろからそんな声が聞こえてくる。

「ばれるって、なんでばれるんだよ?まだばれてないぞ」

「わたしのことを適当にあしらったり、のけものにしたら今後ポイントがたまって見事満点になると…なんと…」

 ポイントの溜まる方法がまるでマゾみたいである。

「何かもらえるのか?」

「中原さん、そして加賀美生徒会長に二股している事をばらします」

「……」

「新戸、おんぶして」

「してるだろ」

「うん、でも大丈夫だよ」

「何が?」

 一呼吸置いてさっきよりも小さい声が聞こえてきた。

「中州君と、わたしは多分、そんな人類の屑みたいな新戸と友達でいてあげるからさ」

「そりゃどうも……しっかし、お前重いなぁ~いたっ」

「そりゃそうだよ。だって二人分の鞄持ってるんだから」

「あーはいはい、そうね、だから重いのね」

 田畑が中原さんにぽろっとこぼす確率九十パー超え。辞世の句でも考えたほうがいいんじゃないかと真剣に悩んでいる俺…これが青春なんだろうか?それに、悩む事はまだあって先輩の誕生日も近いのだ。


どうも作者の雨月です。長期連載をする予定は今のところありませんので適当に読んでもらうのがいいかもしれません。今回の報告は以上です。

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