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第十七話:男の悩みは尽きません

第十七話

 男が困っているのだ、誰に相談する?ママか、先生か、それとも行きつけのバーのママか……いや、どれでもない。男に相談するものだ。ナニが問題ある?病院に行ってお医者さんに相談しろ。

 そういう理由で俺は許嫁のいる中州に相談することにした。これこれこういった事情で相談したいのでファミレスに来てほしいと呼んだのだ。来てからすぐにパフェなんか頼みやがって……しかも、新戸君が払ってくれますよね?とか……相談しているほうだから文句なんて言えないけどさ。

 明日は学校に行かなくてはいけない。しかも、生徒会選挙があるのだ……。俺は立候補しないけど、中原さんがするとかしないとか……とりあえず、中原さん、先輩、そして田畑に出会う確率は非常に高い。

「中州、俺はどうすればいいんだと思う?」

 中原さんの事、先輩の事、そして田畑がキスしてきた事を包み隠さず話した。あした、学校だし…中原さんの前で田畑と会っちゃったら俺はどうなってしまうのか想像もできない。

 外の方が若干うるさいようだが、そんな事は関係ない。俺の耳は今、中州の言葉だけしか聞こえない様に集中している。貴い意見を待っていると、さっさと口を開いてくれた。

「怪我をしたとき、すぐに処置をするのが基本です。新戸君はちょっと処置するのが遅すぎたのではないでしょうか?」

「じゃ、じゃあ俺はどうなるんだ?」

「それはまぁ…運任せという言葉がお似合いですかねぇ」

「……そうかぁ……」

 意外とどうにかなっちゃうものかもしれないし……いや、甘い考えかもしれないな。

 考え込んでいると中州がテーブルを軽く叩いていた。

「なんだよ?」

「外、ここから見える路地裏で不良が一人、集団戦で一方的に殴られていますよ」

「はぁ?そんなの放っておけよ。不良同士のけんかだろ?そんなのに首をつっこんでいられるかよ」

「相手が不良だろうと助けなくては生徒会長に嫌われるのではないでしょうか?」

「別に……先輩は見てないだろ?」

「見ていない、だからこそ助けなくてはいけません。もっとも、僕が見ているので後で告げ口しようかと考えていますけどね」

 心の中で舌打ちし、立ち上がる。全く、変に正義感のある面倒な友人だ。しかも、ついてこないし……。

 基本、普通の人間というのは不意打ちに弱い。不意打ちに強い奴がいたらそいつは小さい頃から特殊な訓練を受けさせていること間違いなしである。

 一人蹴飛ばし、俺は中指を立てた。

「何だてめぇ?」

 そういった奴の顔面に遠慮なく拳を叩きこむ。残った奴の胸倉をつかみ、俺はにらみをきかせる。

「てめぇら、誰だかしらねぇが警察に連絡させてもらったからなぁ。見たところ高校生のようだが……ははぁ、暴力事件か。面倒なことしやがって。このファミレス付近は俺らの縄張りなんだよっ、余所もんがちょろちょろ目障りなんだよっ。まぁ、俺にこれ以上殴られたくないんだったらお前らが殴っていた奴、置いてけ」

「す、すんませんっ。お、おいお前ら行くぞっ」

 逃げて行く途中、あいつらが中学生だと言う事に気が付いてため息が出た。

 とりあえず怪我した男性をファミレスへと連れて行き、腰かけさせる。ちょっとざわついたがすぐに静かになった。

「あのー、大丈夫ですか?」

「ああ、なんとか…」

 おしぼりで顔を拭こうとしたら自分でできるようで手を差し出される。

 見た目がチャラい割に意外と普通の口調だった。そして何気にイケメンである。ちょっとでいいからそのイケメン度を分けてほしい。

「いやー、ここらも変わったんだね。まさか目があっただけでここまでやられるとは思わなかったよ」

「そうなんですか?」

「ああ、やはり茶髪にしてピアスはやめておいた方が良かったな。彼女と待ち合わせっていうことで気合を入れてきたんだけどなぁ……ついてないよ」

 鼻血も拭きとり、やっと見えるような顔になった。それで何処かで見た事があるような顔だと言う事に気付いた。いや、ここ最近会ったとかそういった感じではない。

 中州もそれに気が付いたようで口を開こうとすると声をかけられる。

「あ、けんちゃんまったぁ……って、どうしたのその怪我?」

「ああ、結衣ちゃん」

 結衣ちゃん、といわれた人物を見て俺と中州は口を開けていた。何だろう、ちょっと失礼だけど結構太めなのだ。ふっくら、じゃなくてデブなのだ。およそ目の前の人物の彼女とは思えないほど不釣り合いなんだよ。そして、どう見ても歳が違うように見える。目の前の男性は二十代だろうけど、女性の方は間違いなく三十以上だ。

「結衣ちゃん、悪いけどこの人たちと合い席でいいかな?さっき襲われていたぼくを助けてくれた人たちなんだ」

「え、あー、うん、あたしはぁ、かまわないよぉ」

 しゃべり方もうざいっ。

「じゃあ、あたしはぁ…ちょっとお手洗いに行って来るねぇ」

「うん、いってらっしゃい」

 これは困ったことになったぞと俺は中州の方に視線を向ける。中州も俺の方を見ていたようでお互いにため息をついた。

「似合わないカップルだって思っただろう?」

「え、い、いや…」

「いや、いいんだ。よく言われるからね。でも彼女の前じゃそういうのはやめてほしい。傷つくからね」

「あ~はい」

「あの、僕達が御邪魔なら出ますけど?」

「いやいや、助けてもらったお礼もしたい。ここはぼくが払うから好きに食べて構わないよ」

 人助けってたまにはいい事があるもんだな。まぁ、そんなに高いのは頼めないし、もう何か頼もうとも思わないけどさ。

 見知らぬ人と何を話して間を持たせようかと考えていると中州が喋り出した。

「あの~、もしかしてあなたは羽津中学校の生徒会長をやっていませんでしたか?」

「え?ああ、やっていたよ」

「ああ、だからどこかで見たなぁって顔だったんだ」

「もしかして君たちは羽津中学の生徒さんなのか?」

「いや、その中学出身の羽津高校生徒です」

「なるほど…」

 何か話したほうがいいのかもしれないが、会話はそこで途切れてしまっていた。はやく彼女さん帰って来ないかなぁと思っていると男性は両手を俺達に合わせてくる。

「じゃあOBの相談をうけてくれないかな?」

「俺たちもOBなんですけどね」

「じゃあ先輩として…実はね…」

 声のボリュームを一段下げる為に必然的に俺たちは男性の方へと顔を近づける。

「ぼく、今…二股状態なんだ」

「え?」

「それはまた…」

 中州はあきれたような顔をして何故か俺を見ていた。類は友を呼ぶんですね、最低ですよという意味の視線に間違いない。

「それがどうかしたんですか?」

「いや、ねぇ、これがどうすればいいんだろうかと悩んでいるんだ。何だろう、今の彼女とは小さい頃からの付き合いで勘づいているっぽいし、僕も成り行きで後の方の彼女を受け入れてしまったんだけど………やっぱり、結衣ちゃんの方がいいんだ。後にできた彼女ともこの前も一緒にプールに遊びに行ってしまった。本当はすぐに断るつもりだったんだけど楽しそうな彼女を見るとどうしても切りだせなかったんだ」

「……何か言ってあげてください」

 この屑やろうっ、てめぇなんてさっきの連中にやられちまっていればよかったんだっ……と言いたいところだが、ブーメランで俺へと戻ってくること間違いなし。

「ん、ん~それならしょうがないんじゃないんですかねぇ」

 中州は頭を押さえてため息をついた。

「新戸君……」

「ん?新戸?」

 繁々と俺の顔を見て首をかしげる。

「もしかして…新戸風太郎君かい?」

「はぁ……俺の事を知っているんですか?」

「あ、いや……ごめん。今のは忘れてくれ」

 男性は慌てたようにそう言って愛想笑いを浮かべている。

「ただいまぁ」

 間延びした声が聞こえてきて、温度が少し上がったような気がした。男性の横に結衣と呼ばれた女性が座る。

「何の話してたのぉ?」

「え、ああ、助けてもらったお礼についてだよ。ね?」

「嘘ばっかりぃ、どうせ新しい彼女の話でもしていたんでしょう?」

 何、鋭い人だな……。

「そ、そんなことないよ」

「あたしにはぁ、わかるもん。けんちゃんがそっちの子がいいって言うのならあたしぃ、別れるからさぁ」

「嫌だよっ、ぼくは結衣ちゃんがいいんだっ。今度家を出るときは家族に結衣ちゃんの事をちゃんと紹介するつもりなんだっ」

「けんちゃん…」

 ひしと抱きしめあっている二人を俺たちは手持無沙汰に眺めていた。あ~、全世界のカップルに不幸が訪れねぇかなぁ。

「ごめんね、結衣ちゃん。ぼくは、ぼくは君との幸せのために他人を傷つける事を迷わないよっ」

「うんっ、あたしたちの仲を引き裂こうとした女にはびしっといってやってよっ」

 この男性の二人目の彼女は気の毒だなぁと思いつつ、俺と中州は立ち上がった。

「あ、もう帰るのかい?」

「ええ」

「お邪魔のようですし…」

「気にしないでくれ」

 見ていても心がすさむだけだ。いや、俺には彼女いるし、中州には許嫁がいる。でもまぁ、幸せかと聞かれたら不幸のどん底にいるような状態なので羨ましくて嫌なのだ。

「じゃあ失礼します」

「御馳走様でした~」

 結局、俺は何をするためにファミレスにやってきたのかいまいちわからないままだった。

「そういえば明日は学校に行かなくてはいけませんね」

「そうだよ、だから中州に今日相談したんだよ」

「しかも、生徒会選挙ではありませんか」

「どうすりゃいいんだよ、俺。中州に相談したつもりが、無駄な時間をすごしただけじゃねぇか」

 落ち込む俺の肩に中州の手が載せられる。

「大丈夫です、新戸君」

「中州…」

「何も持っていない状態に戻るだけですよ」

「………」

 今度、ジュディーちゃんにエロ本を見せよう。うん、徹底的にお仕置きしてもらわないと俺の心が晴れない。


たまにはあとがきっぽい事をやろうかなと思います。この小説は元『My Room Guardian』で投稿するつもりでした。主人公のもとへ親戚の引き籠りがやってきてハートフルなお話の予定だったんですけどね。なぜか今のような話になってます。少々粗雑ですが、終わりの方も頭の中では出来ていますので終わりも近いですかね。

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