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第十五話:名実ともに

第十五話

 テスト期間中の放課後、憧れの先輩である加賀美美奈子先輩と一緒に図書館でお勉強できる。そんな人間がいたらマジで羨ましい。

「風太郎~ここがわからないんだけど」

「中州君に聞きなさい」

「今回の当番は新戸君ですよ」

 現実はピンキリのクラスメートと共に教え教えられの勉強会である。勉強なんて本当は1人でするもんなんだけどな。田畑に教えなくてはいけないと言うプレッシャーの為、いつもの倍勉強する羽目になった俺の事を誰かいたわってほしい。

「ねぇ、風太郎~早く教えてよ」

「そこは……おっと、単純な計算ミスじゃねぇか。最初の方のミスだけだぜ」

「え、そうかぁ…このぐらいの計算ミスなら今回は満点採っちゃうかも」

「中州、あんなこと言ってるぜ?」

「誰しも一度は自分の事を特別だと思うものです。そして、挫折を味わうのですよ」

 そんな感じで茶化していたのが期末前日。その日の晩は愛夏の勉強を教えてやって寝たわけだ。

 まぁ、安定した感じで期末試験は終わりを迎えた。そして、数日経って結果が返ってくる。

 結果報告としては中州、田畑共に全教科満点。俺が平均八十点程度といったところだろうか。

「へへ~ん、どう?どう?すごいでしょ?惚れちゃ駄目だよ?」

「あ~はいはい、すごいすごい。中州、特別視していた奴は挫折を味わうんじゃないのか?」

「次からですよ、新戸君。これから驕って勉強をしなくなるのです。じゃあ最下位だった新戸君は約束通りジュースを奢ってください」

「へいへい」

「あ、わたしは大きい奴じゃないと嫌だから」

「あたしも加わっていいかな?」

 中原さんがやってきて机の上にテストの結果を置く。どれも九十越えばかりで俺の最下位はかわらないようだった。

「……はぁ、じゃあ場所は中州の家でいいか?」

「構いませんよ」

 途中お菓子とジュースを買って中州の家へと向かう。

「ねぇ、風太郎君」

「ん?」

「中州君の部屋ってやっぱり本ばっかり置いてあるの?」

「ああ、そうだな。それと結構大きなモニターがある」

「モニター?」

「中に中州の彼女がいるんだよ」

 いまいち納得できていないような表情である。無理もないだろうな。

「それってどういう…」

「ほら、もう付くから実際に見たほうがいいぜ」

 比較的大きな洋風の家。それが中州の家である。もっとも、高級住宅街に建っているわけでもないので周りの家が小さく見えるだけなのかもしれない。泥棒とか結構頻繁にやってきているようだがこれがすごいことに一度も侵入されずお縄となっている。

「ただいま」

「お邪魔します」

「おじゃましまーす」

「おじゃまします」

 中州の両親が帰ってくるのは夜遅く。休日に会った事があるけどとてもいい両親で此処の家に生まれてくればよかったと何度思った事だろうか。ただまぁ、放任主義者みたいなもので『お前が学びたいと思うのなら学べ、必要なものは買いそろえてやる。だらけた人生を歩みたいのなら勝手に歩むといい』そういった事を中州に言ったそうだ。やっぱり中州じゃないといい点数とれないんだろうなぁ。俺が此処の家の息子になったらだらけてそうである。

 階段を上って部屋に案内される。

「しっかし、大きくて綺麗だよなぁ」

「うん、風太郎の部屋ってば汚いもんね」

「うるさいわい」

「はじめてみたけど本当、整頓されてるね。あ、あれが噂のモニター?カメラもあるね」

 何も表示されていないモニター、そしてカメラを中原さんが指差す。中州が俺の事をじーっと見ていた。

「新戸君、出来ればそういう事をあまり他言して欲しくないのですが」

「あ~……悪い」

「もう行ってしまったので仕方がありません」

「すまん」

「やーい、怒られてやんの」

 田畑にからかわれても反論は出来ない。クラスの九割がその事実を知っているが(田畑が言いふらした)それでも中州は秘密にしておきたいらしい。クラスの連中はそれを尊重している為、それ以上の秘密漏えいは守られている。

「このモニターは外国にいる僕の許嫁の部屋とつながっているのです」

「え?許嫁って…子供のころから結婚する人が決まっているあれ?」

「はい。からかわれるのが嫌いなので秘密にしているんです」

「今また風太郎が広めちゃったけどね」

「元はお前が秘密をばらまいたんだけどな」

「程度はどうであれ、秘密をばらしたという事実には変わりませんよ」

「すまん」

「ごめん」

 中州に睨まれて頭を下げる俺と田畑。まったく、中州も友達を選ぶべきだ。

「ねぇねぇ、ジュディーちゃんと話さないの?」

「ジュディー?」

 首をかしげる中原さんに俺は軽く説明する。

「金髪碧眼の可愛い女の子なんだよ。でもまぁ、ひきこもりらしい。うん、海外にも引きこもりっているんだな」

「新戸君、何勝手にしゃべっているのですか」

「あ…すまん」

 謝りっぱなしである。どうせなら俺の家にいけばよかったかな。

「田畑さん、今日はジュディーの部屋とはつなげませんよ。嫉妬深い性格なので今度は中原さんの事について詳しく説明しなくてはいけません」

「そっかぁ、残念」

 田畑が最初にカメラに映った時はおもしろか……いや、とても大変だった。鋭利な刃物を取り出して部屋を出ようとするジュディー……しかし、すぐに戻ってきて憤怒の表情を俺達に見せてくれた。それから約一時間ほど田畑の事を説明し、何とか収まってもらったのだ。いつも冷静沈着な中州が慌てまくっていたから面白い以外の何物でもなかった。

「あたしがカメラに映らない場所にいれば大丈夫だと思うけどどうかな?」

「無理ですよ。ジュディーはすごく勘がいいのです。聞いてみたところ女の勘だそうです」

 女の勘……ねぇ。そこはちょっと納得できるかもしれない。

「ああ、そうだね。ちょっとジュディーちゃんの顔を見たかったけど恋する女の子の勘ってすごいからやめておくよ」

 暗に俺に対して言われているような気がするのは俺の心がやましいからだろうか。

「そうしてもらえると助かります」

「ぽちっとな」

「おい、田畑…」

 モニターに金髪少女が現れる。下着姿の女の子でさすが海外、レベルの高い身体をしていらっしゃる。

「風太郎、久しぶりね。それに焔も」

「やっほー」

「ひさしぶり」

「あらあなた……その女の子は……誰?」

 まぁ、何だろうか。その後はカメラに映る中原さんを見て激怒。一生懸命説明する中州を俺と田畑はカメラに映らない場所からすごく心配しながら見守っていた。

「あ、このお菓子おいしいねぇ」

「新商品だったからスーパーとか行けばまだ売ってるだろ」

「今度買ってみよーっと」

 スピーカーから聞こえる怒号は恐ろしいもので中州の身の破滅が近付いているような気がしてならない。

「新戸君、助けてくださいっ」

「はぁ?俺が?」

「ええ、早くこちらへ来てください」

 言われて中州の隣へと赴く。中原さんと腕を組まされた。

「ジュディー、この二人が恋人同士なので僕とはあまり関係が無いのです」

「……風太郎本当?」

「えーっとだな……」

「本当ですっ」

 中原さんは胸を俺に押しつけながら宣言した。そんな俺らを見ながらジュディーは黙り込んでため息をつく。

「そうみたいね、あなた、ごめんなさい」

「やっと信じてくれましたか……」

 力なくその場に座り込んだ中州は老けこんで見えた。お疲れ様である。

 中原さんとジュディーが一緒にしゃべっている中田畑が俺に近づいてきた。

「ねぇねぇ、名実ともに恋人同士になっちゃったようだけど本当にどうするの?」

「どうするって…」

「自然消滅なんて限りなく無理だと思うよ。まだ何とかなるって思ってる?」

「……」

 楽しそうに笑う中原さん。よく思えば悪い子じゃないし、むしろいい子だ。いや、だからこそ俺のような優柔不断な男には不釣り合いのはずである。

「ど、どうにかするさ」

「お、言ったねぇ。期待してるよ」

 田畑がジュディー達との会話に参加しに行ったようなので俺は中州と話すことにした

「大丈夫か?」

「ええ、今回は結構早く終わってくれましたからね。これも新戸君のおかげです。しかし、田畑さんの保護者である新戸君がしっかり見てくれていなかったからあのような事が起こるのです」

「別に俺はあいつの保護者じゃないが……すまん」

「今回は助けてもらいましたから何か困った事があったら言ってください。その時は出来る範囲で新戸君を助けますので」

 田畑が俺の事を助けてやると言ってくれるより、やはり中州の方が頼りになる。今後は中州の方にも相談した方がいいかもしれないな。


祝、アクセス数十達成。予定としては夏休みが終わるぎりぎりってところで終了なんですがね、予定は未定ですからわからないものです。しかし新戸風太郎という男は確実に追い込まれていってる感があって残念です。中原美奈子と仲良し子良しになってしまうのか、それとも加賀美美奈子と一緒にいることができるのか、はたまた違う未来が待っているのか、どうなんでしょうね。

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