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第十一話:見られている気がするだけ

第十一話

 天気予報じゃ雨が降るなんて言わなかったはずだ。おかげで傘を持って行っておらず、帰りはひどく濡れてしまった。相合傘をしてくれる相手はいるにはいる……ま、先輩は生徒会で遅くなるし、結構早い段階で分かれ道に来てしまうからあまり意味がない。

 中原さんも用事があるようで何も言っていない俺に謝りに来た。朝に真っ赤な目立つ傘を持ってきていたのは既に確認済みである。

 一応、田畑と帰りが一緒になったから恥を忍んでお願いしたところ

「しょうがないなぁ~けど、新戸のお願いだからねぇ」

 等といいつつも傘を広げてくれた。

 開いた瞬間、田畑の傘の上部分はすぽんと取れて風にあおられ飛んで行ってしまったのだ。

「……あ、相合傘する?」

「その銀のステッキじゃ出来んだろ」

「新戸、青春って言うものは雨に打たれるのが最高なんだよっ」

「お前の頭が雨に打たれてよくなるといいな」

 後日、飛んで行った傘の上部分がお地蔵さんの頭の上に無事着陸しているのはまた別の話である。

 田畑と共に文句を言いつつ俺は家に帰りついたと言うわけだ。当然、家に帰りついたらお風呂に入ることにする。シャワーでもよかったんだけど、やっぱり全身濡れちゃうからな。少し冷えた身体を温めたいわけよ。

 風呂から上がってパンツを装着。そのまま自室へと行こうとしたら愛夏がいた。

「お、来てたのか?」

「うん、今日お母さん達帰ってくるの結構遅いし、雨でぬれちゃったからシャワー借りようと思ってさ」

「そうかそうか、風呂という選択肢もあるからな」

「うん、わかった」

 一応愛夏の部屋のようなものもある為に着替えに関しては問題ない。その点に関しては問題ないけど、パンツ一丁の男を見て何とも言わないのは問題があると思う。

 脱衣所へと向かう愛夏を呼び止め、少しばかり説教する事にした。服は着たのかって?パンツは立派な服だから大丈夫だろ。

「愛夏、ちょっとそこに座りなさい」

「何?濡れてるんだから早くしてね」

「ああ。愛夏、お前もお年頃の女の子だ。親戚とはいえ、俺のパンツ一丁の姿を見て少しぐらいは騒いだほうがいいぞ。高校生の頃から達観した態度はいかがなもんかと思うんだ」

「じゃあ兄貴、パンツ脱いでよ。さすがに脱いだら騒ぐからさ」

 待て、なんで右手に携帯電話をカメラモードで待機してるんだ?そしてなんで笑ってるんだよっ。

「じゃ、愛夏はお風呂に入ってくるからね。あ、そうそう…」

 言い忘れていたと言わんばかりの態度だった。

「……やっぱり、愛夏から言わせてもらえば別れたほうがいいと思うよ」

「そうか」

「うん、それと……」

 歯切れが悪いと言うか、何と言うか……去り際に残したのは実に信じがたい言葉だった。

「出来れば、生徒会長とも…」

 ただ、この言葉は微妙に聞きとれなかった為にもしかしたら『出来れば Saint And Kind』と愛夏がいった恐れもある。意味なんてわからんけどな。

 愛夏があがってくるまで暇だったので携帯電話が光っていたのでメールの相手をすることにした。登録した事のないようなところからのメルマガや『二十七歳の人妻ですが…』なんてメールが多量に来るために迷惑メール対策を一応はしている。

 今回のメールをしてきていたのは中原さん。内容は…

「………お風呂どうだった?………か」

 あの人、俺の私生活でも覗けてるんじゃないだろうか。いやいや、そんな事はあり得ないだろうからな。雨降っていたし、こりゃ家に帰ってお風呂に入ろうかしらとか言ってたからそれで予想しただけだろ。

 中原さんに『うん、よかったよ』と送ったところすぐに返信が…

『そっか、いいね。あたしも入りに行こうかな。ところで、今あたしは“何”をしているでしょう?』

 そんな内容のものだった。

 何をしているのか?息してるじゃないの……なんて送ったら馬鹿にされるか。真面目に考えたっていい答えは思い浮かばないので、中原さんのメールをまねることにした。

「シャワーを浴びている……で、いいか」

 メールが一分程度で返ってくる。

『正確にはシャワーを浴びながら・・・・してる。また学校で』

「何してるんだろ」

 結局詳しい事は謎のまま。

「兄貴、あがったよ」

「おう……って、こら、なんで下着姿で出てくるんだよ?」

「未だパンツ一丁の兄貴が言っても説得力無いよ」

「俺はいいの。ほら、服着せてあげるからこっちに来なさいっ」

 愛夏に服を着せ、その後は制服の乾燥を行った。お風呂に入る前に愛夏が言っていた事を聞いてみたけど教えてくれず、メールの事もあって変に想像してしまう。ほんの少しだけ中原さんがどういった人間か知りたくなった。いや、表面じゃなくて裏の方ね。怒ったりしたら素の顔が出るだろうし……。


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