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第十話:別れるための第一歩

第十話

 プールの底が綺麗に見えるのも数週間程度だろう。再びプール掃除がやってくるんだろうが、この苦労はあまり知られていないらしい。

 今年初めての授業での水泳。スクール水着に各々着替え、男子は女子側の方をちらちらと見たりする。

「どう?どう?わたしってば魅力的?」

 男子の中に女子が一人まぎれているんだけどな。誰も田畑の事は見ておらず、先生が来ていない間に見ているようであった。

「これぞ夏でござるな」

「そうでござる」

 また御座る共が沸いていた。

 沸いた侍ども(もしくは忍者か?)を無視して俺は一生懸命無駄なポーズをしている田畑の肩に手を置いてため息をついた。

「……田畑君、私は実に残念だ。何せ、君に無慈悲な言葉を投げかけねばならないのだから。ああ、誤解しないでほしいのだが、これは決して君の事が憎いとか、嫌いだとかそういった感情一切ぬきの真摯な言葉だから受け止めてほしい。残念な身体だ。うん……いたぁっ、なんで殴るんだよっ」

「そこは嘘でもいいから『あ~はいはい、すごく魅力的な身体だよ』っていってくれればいいじゃん。逆に傷つくよっ」

 投げやりでもいいのなら始めっからそう答えてやればよかった。

「でもまぁ、僕から見ても残念……ぐはっ」

「中州君ってばいつの間に新戸っぽい思考回路になったのかな~」

 フェンスに中州を押しつけてぐりぐりやっている。可哀想に……中州、俺の為に犠牲になってくれてありがとう。君の尊い自己犠牲は一分程度俺の脳みそに書き込んでおくよ。

「風太郎君っ」

 馬鹿を眺めていたら声をかけられた。後ろに控える男子生徒どもが感嘆のため息をもらしていた。

「はいはいどうしたの?」

 俺の目の前には中原さんがいた。当然、水着姿だ。それなりのプロポーション(俺の基準が副生徒会長の為に世間一般的にはかなり大きい方だと思う)で、実に健康的だった。

「ど、どうかな?水着、似合ってる?」

 スクール水着に似合う、似合わないなんて存在しないと思うんだ。

「あー、似合う似合う、すっごく似合ってるよ」

「そっか、よかったぁ…じゃ、またあとでね」

「はーい、またあとでね~」

「ばいばーい」

 田畑も何故か手を振っていた。男子と女子は別に授業を受けるんだけどな。

「ほら、お前ら集まれ、授業を始めるぞ~」

 先生も何か言ってやってくれればいいのに一切触れない。

「じゃ、お手本は田畑がやってくれ」

「了解ですっ」

 そして、お手本を田畑にやらせるとは……。

 俺はある程度泳いでからプールに上がり、先生に言う事にした。

「あの~先生」

「どうした?足でもつったのか?」

「いや、なんで田畑がこっちにいるんですか?」

「それは授業を受ける為だろう。それ以外に何があるんだ?」

「あ、いや、そうじゃなくて…女子はあっちでやっているじゃないですか」

 そう言うと俺の肩を先生が力強く握った。

「いいか、新戸」

「はい?」

「男女差別はよくないぞ。今は平等の時代だからな。田畑はお前と仲がいいし、スポーツは全体的に得意だ。うん、お前よりな」

「何気にひどいっすね」

「そう怒るな。人間には得手不得手と言うものがあるんだよ。そんな十人十色の友達と一緒に汗を流す、これこそまさに青春じゃあないか。さぁ、一緒に汗をかこうっ」

 もはや何を言っても無駄のようだ。俺は大人しくクロールの列に加わることにした。

 最初と言う事もあってか基本的に自由のようだった。先生はプールサイドで腕立てしているし、泳ぐのに疲れた連中は先生の近くで腕立てするふりをして女子のほうをちらちらと見ている。

「はぁ~……」

 俺はプールサイドの淵に座り込んでぼーっと水面を眺めていた。

「元気ないねぇ~」

 田畑が寄ってきて俺のすぐ隣に座る。中州もおまけで付いてきたようだが、他の男子生徒につかまってプールの中に放り込まれて遊ばれている。

「どうかしたの?まさかばれたとか?」

「いや、ばれてもないけどさ…つーか、別にそっちの話で疲れてるわけじゃないって」

「へぇー、てっきりそれだと思ったよ。他に悩み事なんてなさそうだし」

「まぁ、悔しいけどそうだな。これからどうしようかなって思ってんだよ」

「え、何が?」

 頭の中で簡単に説明できるようまとめる。もちろん、他の連中に聞かれない様に注意して話すことにしている。

「…波風立たせることなく終わらせたいんだよ」

「ん~それは虫がよすぎるだろうけどね。でもさ、それを成し遂げたいのならわたし、協力するよ?」

「ん、ああ……ありがとう」

「というわけで、まずは相手の事を知ることから始めたほうがいいんじゃないのかな?」

「開いての事を知る…か。なるほどな」

「田畑―、中州が足つったらしいから保健室に連れて行ってやってくれ~」

 先生の危機感の薄い声が聞こえてくる。どうもプールサイドでいきなり足をつったらしい。

「はいは~い。じゃ、わたしいくね」

「ああ」

 相手の事を知る事から始めるか……。

 女子の方へと視線を移すと気のせいか、中原さんと目があった……やっぱり気のせいかな。


別に記念すべきってわけじゃありませんが十話目です。この小説、書いててハッピーエンド出来そうにないんですけどどうしたらいいんでしょうねぇ。文字打ってて頭の中で勝手に話が進むのですがどうもちょっと暗い話になりそうで怖い怖い。読んで後悔した小説第一位でも目指しますかね。

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