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永遠でも足りない
君を手に入れたと思った次の瞬間には、
掴んだ筈のこの手には何も無い。
君の心に触れたと思った次の瞬間には、
その手応えが幻の様に消えてしまう。
君に一つ近付いたと思った次の瞬間には、
新たに知った君の側面に立ち竦み、
近付いた筈の君が遠ざかる。
きっと。
永遠に僕は本当の君に辿り着けないんだろう。
刻々と姿を変える雲の様に、
君も一時も止まる事無く変わっていくから。
だから、きっと。
僕は君を求め続けるんだろう。
それは哀しいけれど、
それは寂しいけれど、
とても幸福な事だと思う。
君を求めて、焦がれて、夢中になっていたら、
きっと永遠もあっと言う間だ。
そして君は、
永遠に僕を失うことがない。
不思議だね。
人間なんてこんなにちっぽけな存在なのに、
全部知り尽くそうとしたら、
永遠でも足りないよ。
もし神様に会う事があったなら。
愛を誓うには永遠でも足りないと、
文句を言ってやろう。
そして二人で笑ってやるんだ。
永遠なんて、大した事ないって。