#35 出生の秘密
「リア!!ただいま!」
私とウィル様は転移石を使い、ヴェルナー家からリアの家の庭園へテレポートした。ちょうど庭園では、リアたちがお茶をしていたわ。
「エスター!?おかえりなさい。」
「ただいまって。おまえの家じゃないって言ってるだろ!?それにしても。戻るのが、ずいぶんはやかったな。誕生日はまだ先だぞ。」
「あら、パトリック。あなた、また来てたの?」
「また来てるのは、おまえもだろ!?」
「パトリック。悪いけど少しリアを借りるわね。大事な話があるのよ。」
いつものように、ブーブー文句を言ってくるラザラスのことは華麗にスルーして、パトリックへ声をかける。そしたら。いつもはリアから離れないパトリックが、珍しく私へ寄って来たの。私とウィル様が突然現れたのが、ものすごく不思議だったみたいで、目を輝かせて見上げてくるのよ。
「フィリアさん、すみません。僕たちの結婚式なんですが、なるべくはやく挙げるように言われたのです。なので申し訳ないのですが、式の準備の方を急いでもらえませんか?」
「『挙げるように言われた』ということは。なにか、事情があるのですね??」
「そうなの!急いで帰るよう言われて、ヴェルナー家へ行ったらね。辺境伯様とお母様が再婚するって言い出したのよ!?」
ウィル様はバツが悪そうに肩をすくめ、リアは大きく目と口を開けて驚き、ラザラスは飲んでいたお茶を吹き出した。
「それでね。辺境伯様は、ほんとは明日にでも籍を入れたいところを、私たちに先を譲るって言ってくれたの。そのかわり長くは待てないから、はやく式を挙げるように急かされたのよ。」
「ふふっ。『明日にでも』なんて、辺境伯様は、ウィルバート様と同じことをおっしゃるのね。」
「はじめはお義母様に、断られたらしいです。父の魔力の乱れを受け止めるために関係を持ちはしたけれど、その責任を取るために娶るだなんて、そんなことしなくていいからと。そんなつもりで助けたんじゃないと言われたそうです。」
「けど、辺境伯様の勢いにあっさり負けたみたいよ。お母様って、案外押しに弱いのね。」
「それは、おまえもだろ!?ウィルバート様からプロポーズされたのに返事を一旦保留にしておいて、それからわりとすぐに、あっさり承諾したじゃないか。」
言われてみれば…。私も、ウィル様の押しに負けたんだったわね。
「でもね!再婚を決めてから間もないのに、お母様たちの距離がものすごく縮まってたのよ。辺境伯様は、シルヴィなんて呼んでるし、お母様なんて女の顔をしているんだから!?」
母の表情筋が動いてるのを見て、驚いちゃったわよ。伯爵家にいたときは、夫婦そろって表情筋が死んでいたから。
「それは、おまえもだろ??婚約して間もないのに、ウィルバート様の客室で、ふたりきりで夜を過ごしていたんだからな。俺とリアには結婚式が終わるまで、ふたりきりで部屋にいたら駄目だって言ってたくせにな!!」
「でも僕たちは、一線を越えてません!」
「そうよ。ウィル様は、待てができないダメ犬のあんたとは違うんだから!」
「あぁ、うん…。その、一線"は"ってくだりは、もういいよ。リアに聞かせられないからな…。」
堂々と胸を張る私たちに、ラザラスは、リアに聞こえないよう小さな声でつぶやいた。
「ふふふっ。エスターとウィルバート様は仲が深まったのね!?結婚式が楽しみだわ。それで式場は決めたの?」
「ヴェルナー領にある氷河でチャペルをつくろうと思うの。ウィル様とリアにも手伝ってもらってね。」
「氷を削ってチャペルをつくるってこと??」
「わぁ。フィリアさん、よくわかりましたね。僕なんて最初に話を聞いたとき、意味がわかりませんでした。」
「毎年冬になると、ふたりで湖畔に雪像をつくってますからね。といっても、私は雪に水をかけるだけですけど。」
雪像をつくるのは、冬も湖畔へ観光客を呼び込むためなのよ。リアには雪に水をかけてもらい、私が風の力で削りながら形をつくっていくの。その要領で、氷のチャペルをつくるつもりよ。
「それ、1日やそこらで終わらないだろ?リアもヴェルナー領へ滞在する必要があるよな??」
「心配しないで。今双子が転移石を量産しているから、リアの分も用意するわ。リアの魔力量なら簡単に行き来できるわよ。私としては滞在してくれた方が嬉しいけどね。」
「あのバカみたいな値段の転移石を量産してるのか!?ものすごい儲けになりそうだな。」
「あくまで、身内や事業関係者の分よ。それから氷河のチャペルまで、ゲストを移動させる手段にも使うつもり。だから。量産といっても、売るためじゃないの。だって。売った転移石が悪用されたら困るじゃない!?戦争とか。暗殺とかに。」
「うゎ。いきなり物騒な話になったな。便利な道具も、使い方次第ってことか。で。リアがヴェルナー領へ行くなら、俺も行くからな。」
「でしょうね。問題は、あんたの魔力では転移がギリギリってことよ。」
ラザラスがリアと離れるわけがないのは、わかっているわ。だけど。こいつの魔力量だと、ここからヴェルナー領まで転移するのは心許ないのよね。
「悪かったな。ちっぽけな魔力量で。」
「まっ、リアと一緒なら大丈夫でしょ。足りない魔力を補ってくれるわ。」
「ラス任せて。魔力量なら自信があるから。」
なんだか、台詞がいつもと逆ね。いつもは、リアが自分の力をちっぽけだと言っているもの。
「でも。チャペルづくりも大事だけど、ドレスづくりにも取りかからないと。あぁ、はやくドレスについてミアさんと話し合いたいわ!」
「あっ!ミアで思い出したわ。辺境伯様から、お母様のドレスをつくって欲しいって頼まれたんだった。」
「ドレスってウエディングドレス??辺境伯様とシルヴィア様も結婚式を挙げるの?」
「違うわ。舞踏会用のよ。ふたりで、陛下へ新年の挨拶をして、舞踏会へも参加するんですって!注目の的になるに決まっているのに、なにを考えているのかしら??」
「父はたぶん…、お義母様との仲を見せつけたいのだと思います。」
「え"っ!?辺境伯様って、バカだったの!?」
「エスター!!失礼でしょ!?」
「おまえっ!!失礼だろっ!?」
リアとラザラスから、そろって注意されちゃったわ。
「おぉ、息ぴったり!さすが、夫婦ですね。」
ウィル様は妙に感心していて、例のメイドは肩を震わせ笑っている。つられて笑うパトリックを見て、付き添いの伯爵家のメイドは困惑しているわ。
「だってぇ。仲を見せつけたいって、お母様は別に若くもないのよ??例えば、ほら。皇后様はお若いから、国王様が見せびらかしたいとお考えになるのは、理解できるじゃない?」
「もう、エスター!!不敬よ!」
「おまえっ!!不敬だからな!」
国王陛下への不敬には、みんな固まってしまったわ。
「でも…。両陛下へのお祝いを贈る際、若くて美しい皇后様をお迎えになられて、羨ましいですわって言っちゃったわよ?国王様も笑っておられたし。あれからしばらく経つけど、不敬罪に問われてないから大丈夫よ。」
あらっ…??安心させようと思って説明したのに、パトリック以外、みんな顔が青ざめちゃったわ。
「そういえば。スカーレット様からの手紙に、エスターとウィルバート様が腕を組んで買い物していたことが、王都で噂になってるって書いてあったのだけれど。辺境伯様と同じで、ウィルバート様も、エスターと仲がいいところを見せつけたかったのですか??」
リアの指摘に、ウィルバート様へ視線が集まる。
「父と思考が同じだなんて、複雑ですね…。」
「気持ちはわかりますよ。俺もまわりを牽制してましたから。リアは俺のだって。」
「そういえば、あんた。舞踏会やパーティーで、リアは病弱だから1曲踊るのが限界だなんてホラを吹いて、自分以外の誰とも踊らせなかったわね…。リアと踊れるのは、自分だけだって牽制して。」
でもまぁ。リアに関しては、実際に狙ってる相手がいたから牽制するのもわかるわ。でも…。
「でも。愛想も愛嬌もないお母様を娶りたいって変わり者、辺境伯様くらいよ??きっと、牽制相手なんていないわよ。」
「いや確かに、伯爵邸では愛想も愛嬌もなかったけど、社交の場では違ったろ?誰かさんと一緒でな!?」
そう言って、ラザラスは含み笑いを浮かべた。
そうね…。家と外で極端に態度が違うのは、私もだわ。社交の場で、偽りの笑みを振りまくのは、母親譲りなのかもしれない。
それに、家では私も表情筋が死んでいたわね…。
リアは、自分用の転移石ができるまで、ドレスのデザインや、チャペル内装、式の進行など、侯爵邸でできることを進めると言ってくれた。私の誕生日か、双子がリア用の転移石を完成させるか、どちらかはやい方に、また来ることにし、私とウィル様はヴェルナー家へ帰ろうとした。
そしたら。パトリックが自分も一緒に行くと、私の足にしがみついてきたの。『また今度』と言って聞かせたけれど、嫌だと言って泣き出してしまったわ。向こうには、お母様がいるのよ??鉢合わせでもしたら大変だから連れて行けないのに。
大泣きするパトリックを見てウィル様が、このままだと魔力暴走を起こしそうだから連れて行こうと言うので、急遽、パトリックを連れて転移したの。
あぁ…。やっぱり私、子どもって苦手だわ。けどウィル様の方は、意外と子どもをなだめるのが上手いわよね。双子のことも。あ"っ。あのふたりは、子どもじゃなかったわ…。
こうして。お母様の仇とも呼べるパトリックを連れて来てしまった。もう…、不安しかないわ。
でもね。私のこの不安は、から回りするのよ。
パトリックは、どうしても自分も転移したかったみたい。転移の意味はわかってないけど、一瞬で別の場所へ着いたら、ものすごくはしゃいでいたわ。さっきまでは、大泣きしていたくせにね。
3人でヴェルナー邸を歩いていると、母が使用人の手伝いをしているのが目に入り、とっさにパトリックを背後に隠した。
それにしても。あの母が、使用人の手伝いをするなんてね。そんな母へ、ばあやが感謝の言葉をかけている。
その様子を見ていたら…。両親は離縁してもう夫婦じゃなく、赤の他人だとわかっていても、口を出さずにはいられなかった…。
「ウィル様…。パトリックを見ていてくださる?私。母と、話をしなければ…。」
手伝いを終えた母に声をかけ、庭園で遊んでいるウィル様とパトリックの姿が見えるバルコニーへと移動した。
「あら。このお屋敷に、あんなに小さな子がいたのね。何ヶ月もいるけど、はじめて見るわ。」
魔道具を使ってパトリックの髪と瞳の色を変えているからか、母は庭園にいる子が、お父様が連れて来た子と同一人物だとは気づいていなかった。あんなに警戒していたのに、拍子抜けだわ。
だけど、もしかしたら…。そもそも、パトリックの容姿をちゃんと見てなかったのかしら?
「お母様…。お父様が連れて来た、男の子の髪の色を覚えていますか?」
「そんなこと聞くなんて、今更何なの!?」
「かなり目立つ色をしていて、侯爵様も、あの子の髪と瞳の色を指摘していたのですが、わかりませんか?」
嫌々ながらも、母は目をつぶると、少しうつむいた。
「…覚えてないわね。侯爵邸では視界に入れないようにしていたし、伯爵邸に連れて来られたときはフードをかぶっていたいたもの。けれど、それが一体なんだと言うの!?」
タラレバなんて、今更言ったところで仕方がないのに。だけど。もしも母が、パトリックの髪や瞳の色をちゃんと見ていたら…。
「お母様は、もしかして…。伯爵家へ連れて来られた男の子のことを、お父様の子だと思っていますか?」
「…っ!?それは、どういう意味??まさか…。あの人の子ではないというの…。」
「やっぱり…。赤髪に金眼だと、リアのお父様も言っていたのに、それすら聞いていなかったのね。赤髪に金眼を併せ持つ容姿がどこの家門を意味するか、この国の貴族なら誰でも知っているのに。」
…ウィル様は、首を傾げていたけれど。
「赤髪に金眼といえば、筆頭公爵家じゃない!?」
「言っておきますけど。公爵家のどなたかと、お父様の子というのはありえませんからね。公女様はまだ幼いですし、前公爵夫人と現公爵夫人は他家の血筋ですから、赤髪は生まれませんもの。」
言葉を失う母へ、私はさらに畳み掛ける。
「お母様は、パトリックをお父様の婚外子だと勘違いして、あんなに大暴れしたのよ。リアの家で話し合いをしたとき、誰もがパトリックの正体を察していたのに。」
…ウィル様は、首を傾げていたけれどね!?
「魔力暴走を起こし、屋敷を破壊し、ウィル様や使用人へ怪我を負わせた原因が、ご自分のただの勘違いだと知って、今どんな気持ちですか?これまで、ご自分のことを被害者だと思っていたのでしょう?夫に裏切られ、外に子どもをつくられたと。」
手で口を隠し、視線を泳がせる母に対して冷めた視線を送る。
「お父様がパトリックを家へ連れて来たとき、お母様がちゃんとパトリックの姿を視界にとらえ、あの子の正体に気がついていたら、これほどまでに大事になることもなかったのよ!?」
もし母が、パトリックの正体に気づけていたのなら…。お父様の婚外子などと疑うこともなく、母は魔力暴走を起さなかったし、屋敷も壊れず、ウィル様も使用人も、怪我をせずにすんだはずなのよ。
それに…。例の未来で、私が、命を落とすこともなかった。そしたら。リアだって早産にならず、エミリオだって健康で、リアは心身を病むこともなかったはずなの。そうなれば。リアを救う力を探し回り、家へ帰らなかったラザラスが、リアに浮気を疑われることもなかった。あの未来だって、母の小さな気づきひとつで、最悪を回避することができたのよ。
「確かに、非はお父様にあるわ。家へ寄りつかなくなったわけも、子どもを連れて来た経緯についても、なんの説明もしなかったのだから。でもね。お父様は、ご自分の所在も状況も調べたらわかることだったから、隠しているつもりはなかったの。実際。私は、所在を知っていたわ。」
でも私も、パトリックがお父様の子どもではないとわかったのは、あの容姿を見てからだった。
「それでお父様は、私が、お母様にも説明しているものだと思っていたの。ほんとになんて、ご都合主義なのかしらね?」
「知っていたですって!?ならなぜ、私に教えなかったのよ。」
「あなたが、なにも知ろうとしないからよ!お父様のことだけじゃない。男爵家のお祖父様のことも。ご自分の魔力過多のことも。前伯爵夫妻のことも。私は、惰性で生きてるだけの人に、なにも教えるつもりはないわ!」
「親に向かって何て口をきくのっ!?」
母が右手を振り上げ、それを風をおこして防御する。
「親らしいことなんてしてもらった覚えはないわよ!!」
魔力の衝突を感知したウィル様が、心配そうにこちらを見ているのに気づき、はっとしたわ。深呼吸をして気持ちを落ち着かせ、風の壁で母を取り囲む。
せっかく、みんなが未来を変えてくれたんだもの。それをムダにするまねはできないって、わかってるのに…。はぁ…、ダメね。母が相手だと、どうしても冷静でいられないの。感情を抑えられないし、手を出されたら応戦してしまう。話したいこともぐちゃぐちゃになっちゃって、うまく伝えられなくなるの。母と会話するより、取引先と交渉する方が断然楽だわ。
認めたくはないけど…。母に対して、些細なことでイライラしたり、気に障ったりするのは、きっと同族嫌悪ってやつのせいなのよ…。
「私は別にね、お父様の味方というわけではないの。お父様も、お母様のご実家のことを知ろうとしなかったもの。そして私もまた、お父様にもお母様にも関心がなかったわ。あ〜あ…。だからほんとは、他人の人間関係に干渉するつもりなんてなかったのに。」
パトリックへ視線を向けると、ばあやと庭園の花を見てまわっていた。
「お父様が、パトリックを引き取った理由もわからないのでしょう?」
「…公爵家から圧をかけられた??伯爵家の者として育てるようにと…。」
「公爵家の方々は、パトリックの存在すら知りません。パトリックの母親が、身ごもったことを悟られる前に退職し、公爵家を出たから。だけど。行くあてもなく、さまよっている最中、体調を崩してしまい、そこを偶然通りかかったお父様が助けたそうです。」
「なんてこと…。いくら婚外子とはいえ、公爵家の血を引く者を無断で匿っているなんて。このことが知られれば、反逆と捉えられても言い逃れできないわよ。」
「お父様は、お腹の子の血筋を知らなかったのです。母親も、パトリックの容姿が公爵家の特徴を受け継いでいるのを見て、隠せないと諦めたようですわ。そして。お父様へ事情を説明し、パトリックと国外へ逃げるための手助けを求めたけれど…。体調を崩した母親には、逃げるだけの力は残されていなかった。」
「母親の実家には頼れなかったの?」
「実家の家族には、頼れないでしょうね。母親を、金づるとしか思ってないそうですから。帰ったら、どんな扱いを受けていたか…。まぁ。両親に大事に思われていても、実家に帰りたがらない人もいますけどね。」
男爵家の家族は、離縁して帰っても、お母様を温かく迎え入れてくれるわ。それなのに、頑なに帰ろうとしない母へついつい嫌味を言ってしまう。はぁ…。こういうのが、話が脱線したり、言い合いの原因なのよね…。風の壁の中からは、母がこちらを睨みつけている。この人に、実家の話はタブーなの。
「覚えてますか?お父様が、急に王都へ行くのを見送ったり、王都から突然領地へ帰ったりしたことがありましたよね。あれは、母親が危険な容態だったからだそうです。…ですが、疑問に思うでしょう??偶然出逢っただけの相手に、そこまでするなんて。」
「それは…。よほど、好みの女性だったのではない?」
「ぷっ。あははっ。それは、予想外の返答ですわ。」
母が真面目な顔で答えるから、不覚にも吹き出しちゃったわ。私の笑い声が庭園まで響いたようで、パトリックがこちらを見て、つられて笑っている。それに。ウィル様と、ばあや…マリーさんも、こちらを見ている。
「お父様は、あの親子のことを他人事とは思えなかったのでしょう。ご自分の生まれと、同じ境遇なので…。」
「同じ、境遇…??」
「伯爵家のお祖母様は、お父様への当たりが厳しかったじゃないですか。私も、毛嫌いされてましたしね。血の繋がりがないから、仕方ないのでしょうけど。…お父様は、先代の伯爵であるお祖父様と、伯爵家に仕えていたメイドとの間に生まれた婚外子なのです。そして…。そのメイドというのが、あそこにいるマリーさんなんですよ。」
「━━━っ…!?」
「お父様の母親の行方は、個人的に何年も前から探していたんです。たまたま、ばあやがアンダーソン伯爵領が故郷だという話を耳にし、『マリー』という名前を聞いて確信しました。もう…。どうりで見つからないわけだわ。私の情報力は、このヴェルナー領までは及ばないもの。」
お母様は瞬きもせずに、マリーさんを見つめている。お父様の子だと思っていたパトリックは、お父様とは赤の他人で、偶然出逢ったばあやが、お父様と血の繋がりがあるなんてね。情報過多で、思考が追いつかないみたいだわ。
そんな母へ、追い打ちをかけるように問いかける━━。
「お母様は、お父様の前で、婚外子や私生児を蔑むような発言をしたことはありませんか?」




