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姿見に映った未来は…、不仲な婚約者との(想像以上に)冷え切った結婚生活だった  作者: IROKA


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33/53

#33 辺境伯からの伝言鳥

ラザラスがリアとエミリオを診察し、ふたりとも経過が良好だったため、私は安心してウィル様と侯爵邸をあとにし、伯爵家が仮住まいしている湖畔の別荘を訪れた。


まずはウィル様と一緒に、お父様へ婚約の報告をしたの。そしたら相変わらずの無表情で、『そうか』のひとことが返ってきたわ。

でもね。結婚後は、伯爵家を出てヴェルナー領で暮らすと言ったたら、驚いていたの。

お父様は、私が、手綱を握りやすい結婚相手を自分で探し、その相手にうちの爵位を譲りはするけど、これまで通り好きに事業を続けていくのだろうと考えていたのですって。だけど。その結婚相手がウィル様なら、話は変わってくるわ。そのことに、気づかないはずなのに…。お父様は、私がヴェルナー辺境伯家唯一の跡取りであるウィル様を、アンダーソン伯爵家の婿養子にするのだと思っていたみたいなの。いくら私でも、ひとり息子のウィル様を、うちの婿養子にしようだなんて思うわけないじゃない!?私利私欲にまみれた娘だと思われていたなんて心外だわ。もちろん、ここまで大きくした事業を手放すつもりはないわよ。

だけど。私に無関心だと思っていたお父様は、私の事業のことも、母の実家の男爵家から人材を引き抜いていることも、彼らの耳を使い情報を集めていることも知っていたわ。私の事業に詳しいことに驚くとともに、普段はほとんど動かないこの口から、どんどん言葉が出てくるから、お父様の口元に釘付けになっていた。


『湖畔の観光客が増えているため、宿泊施設が足りない状況も解決しなければいけない。ホテルなら一度にたくさんの宿泊数が見込めるが、貴族は他人と同じ空間を共有したがらないからな。しかも。別荘を建てるにしても、他人と同じものを嫌うため、デザインもひとつひとつ違うものにする必要がある。まぁ。はなから、貴族と庶民の差別化を図るつもりでいたのだろうがな。貴族や富裕層には高級なヴィラやコテージをあてがい、宿泊料を高額に設定し、庶民にはロッジ、バンガロー、ホテルを手頃な料金で提供するのだろう?それについては別に構わない。だが。ひとつひとつ違う建物を建てるのは、設計に時間がとられる上、手間もかかる。それに。建設量が多い分、相当な費用になるはずだ。それでも伯爵家の財源を使わず、今回も自分の財産から支払うつもりなのではないのか?じつはな。国王陛下から、うちの湖畔に別荘を建てて欲しいと書状が届いているのだ。伯爵領内のことなのだから、資金が足りなければ、うちの財源から使うといい。王族相手に半端なものなど建てられないからな。』


わぁ…。この口、ほんとはこんなに動くのね。この口から、たくさんの言葉が出てくるのが、不思議でたまらないわ。お父様、何年分かの声を使い果たしちゃったんじゃない!?…なんて思っていたけど。さすがの私も、国王陛下からの書状と聞いて我に返ったわよ。たぶん陛下のことだから、かかった費用はあとからお支払いいただけるはずだけど、ちょっとくらい損したとしても投資だと思うことにするから平気よ。王室の別荘があると知れ渡れば、うちの湖への観光客がさらに増えるもの。

陛下は、愛用しているうちの商品に、王室御用達おうしつごようたしを与えられないことを気にしてくださっていたの。だって、精力増強剤と潤滑ゼリーに王室御用達を与えるのはちょっとね…。きっと、この別荘の話は、そのお詫びなのだと思うわ。

資金繰りの心配をするお父様へ、ヴェルナー領でたくさん魔物を狩ったから、その魔石や素材を換金すれば大丈夫だと、アイテムボックスから魔物の氷漬けを1体出して見せたの。けど。資金の心配はいらないって言ってるのに、お父様は顔を引きつらせ、眉間にしわを寄せてしまったのよ。無表情な父が、こんなふうに表情を変えるのも珍しくて、いちいち見入ってしまう。

会話が途切れたタイミングで、ウィル様が、自分の考えを話しはじめた。アンダーソン伯爵家を継ぐことはできないが、現辺境伯はまだまだ元気だから領地のことは父に任せ、しばらくの間はヴェルナー領に縛られることなく自由に行動できる。それに転移石を使えば、簡単に領地を行き来できるため、頻繁に帰って来れるのだと。それから。伯爵領に姿を見せなくても、自分たちは隣のロックハート侯爵領にはいるはずだってつけ加えたの。

それには私もお父様も、ものすごく納得したわ。自分でも、リアの家に入り浸って、ラザラスに嫌味を言われている姿を想像できるもの。


婚約の報告を終えた私たちは、パトリックを連れて湖畔の散策へ出かけた。そこで、ロータステロの惨状を目の当たりにしたウィル様は、お腹を抱えて大笑いしてるのよ。

「さすが。フィリアさんの水の力はすばらしいですね。これなら、食糧難に陥る心配も必要ありませんね。」

「さり気なく、リアの力だけのせいにしてますわね?この惨状は、ヴェルナー領産のロータスの繁殖力が強いせいでもあるんですからね。」

私とウィル様の話を聞いていたダグラスが、会話に入ってきた。

「フィリアお嬢様の水の力がすばらしいとは、どういう意味でしょうか?まさか、このロータスの尋常ではない増え具合の原因は…。」

「ええ。このロータステロは、リアの水の力によるものみたいなの。思い返してみたらミントテロのときも、リアは水やりしていたのよね…。」

大変だったミント駆除を思い出したダグラスは、大きなため息をついたわ。

あれは。リアとラザラスが、はじめて家に遊びに来たときのこと。庭園の隅にあったプランターに、料理に使うミントが植えられていたのを見つけたリアが、ミントには喉の炎症を抑え、咳を緩和する作用もあるって教えてくれたの。この頃のリアは体調を崩すことが多かったから、増やして薬にしようと思って、ミントをプランターから広い花壇へ移したのよね。今思えば、子どもってなんて軽率なのかしら…。その結果。あっという間に庭園が、ミントに侵食されてしまったのよ。ミントは、ただでさえ繁殖力が強いのに、リアの水の力によって、普通よりもさらに成育速度がはやまったんだわ。

ラザラスが、それらのミントでミントティーやミントキャンディをつくったのだけれど、リアには匂いも味も不評だったのよね。あの子は昔から、薬を調べたり調合するのは好きなのに、自分が口にするのは大嫌いだったから。それを知っていても、私とラザラスは懲りずに、体によさそうなものを探しては、リアにバレないように飲ませたり、食べさせたりしてきたのよね。バレたときには、リアがものすごくふてくされて怒っていたわ。私とラザラスは、そんな怒ったリアの顔さえ好きだった。でもでも。薬を飲ませるのはリアの体を思えばこそよ!?薬に気づくかハラハラするのが楽しいわけでも、口を尖らせるリアの顔が見たいからでもないわ。そう、すべてはリアのためよ。

私とラザラスは、お互いに負けないくらいリアのことが大好きだからね!


伯爵領に戻った私は、忙しく過ごしていた。

国王陛下から頼まれた、王家の別荘を建てるにあたり、立地や景観が1番いい場所を実際に歩いて探したり。そのついでに、増設予定の別荘やホテルの建設場所も目星をつけたわ。あとは、湖畔でかき氷のテスト販売や、領内にある自分の店や、領民の暮らしぶり、農作物の実り具合の視察をしたり。それから。工事中の伯爵邸の様子も見に行ったわ。

作業の邪魔にならないよう玄関ホールの隅に立つと、私が落ちたとされる階段を見上げた…。今となっては、例の未来で私の身になにが起きたのかを知るすべはない。だからね。訪れることのない未来に思いを馳せるのはもうやめて、これから訪れる未来を想うことにするわ。

みんなのおかげで、私は今、生きているのだから。


所用が一段落ついたため、今日はウィル様とふたりで、母の実家の男爵家を訪れていた。

娘が離縁した悪い話と、孫が婚約したいい話を聞かされたお祖父様とお祖母様は、複雑そうだったわ。それでもおふたりは、式には呼んでと気丈に振る舞い、私たちを祝福してくれた。当事者のお母様は、手紙のひとつも送ってないようだし。ほんとに薄情な娘よね。まぁ。私も、母のことは言えないのだけれど。母が実家へ帰りたがらないため、私も幼い頃は滅多に顔を出さなかったから。そのくせあるときを境に、使用人をどんどん引き抜いていったのよね。もちろんタダで、ではないわよ。使用人を引き抜く対価として差し出したのは、魔力過多に苦しむお祖父様のために、イーサンとネイサンに頼んでつくってもらった魔力を吸収する魔道具だった。

身内に対価を求めるのはどうなのと思われるかもしれないけど、身内にさえ魔道具を無償で提供しないのが私なのよ。


婚約の報告を終えたあと。お祖父様へ新しい魔道具を渡し、今身につけていた、魔力を吸収した状態の魔道具のネックレスを回収する。この吸収した魔力は、新たな魔道具をつくる際に有効活用させてもらうの。お祖父様だけでなく、私やリアの魔力もよ。そうだわ。これからはお母様の魔力も、いただけるわね。

こんなふうに、たまに顔を出したかと思ったら使用人を引き抜いていくわ、溜まった魔力をいただいていくわで、自分でもほんとかわいくない孫だって思うわ。


男爵家からの帰りに、双子の隠れ家へ向かった。

木に囲まれた小さな池を通り越すと、突然、家が現れたからウィル様が驚いているわ。

「これって、隠蔽魔法ですか!?」

「ええ。隠蔽魔法を解く鍵を持つ者だけが、この隠れ家にたどり着けるのです。」

「ふたりは、貴重な術師ですから、厳重に保護する必要があるんですね。」

「確かに、ふたりの力は狙われていますが…。これは、みんなを守るための隠蔽ですの。」

「みんな…ですか??」

ウィル様は、みんなと言われもピンとこないみたいだったわ。

「ふたりは自身や、つくった魔道具、王都にある魔道具屋に防御魔法をかけているのですが、その力が強過ぎるんです…。魔道具の仕組みを解析しようと分解した相手が大怪我を負ったり。うちの魔道具屋が繁盛しているのを妬んだ同業者から嫌がらせを受け、店の窓ガラスに石を投げられたときなんて、石が何倍もの力ではね返り、まわりの店にまで被害が及んだのです。そんな事件があったので、そのあと魔道具屋は裏通りへ移転させましたわ。」

「悪事を働く方が悪いに決まっていますが…。仕返しの度が過ぎると、こちらが加害者になりかねませんね。」

「えぇ、ほんとに…。魔道具の方は保護魔法に変えさせたので、今では解析しようとしても機能が停止するだけです。だけど。移転した店には今も防御魔法がかけられているので、危害を加えないよう店内外に注意喚起の貼り紙を掲示しているんですの。」

こちらは注意を促しているのだから、それでも危害を加える者に対しては怪我をしたって文句は言わせない。

「それから。ふたりが、自分たちへかけた防御魔法が発動したらどうなるかは、自分たちでもわからないなんて恐ろしいことを言うので…。もういっそのこと、あのふたりは、世間から隠すのが一番安全だと思ったんですの。」

「ああ、なるほど。それでこの隠蔽魔法が、みんなを守ることに繋がるわけですね。」

ふたりが自分たち自身にかけた防御魔法は、最悪を想定した念のための保険にしなければ。発動させないために最重要なのは、うちの魔道具の製作者がふたりだと嗅ぎつけられないこと。だから。隠蔽魔法で、ふたりの存在を隠しちゃったのよ。

『お嬢!』

ふたりが声をそろえて、私を呼ぶ。

「転移石完成した!!あとは、座標を登録するだけ。」

「この転移石には、3ヶ所まで登録できる。」

「3ヶ所なら…。まず、1番はリアの家でしょ。次に、ヴェルナー辺境伯邸。最後は、王都の事務所ね。」

「エスター嬢。ご実家の伯爵邸は、登録せずともいいのですか?」

「だって、3ヶ所しか登録できないんですもの。仕方ないですわ。」

私だって、伯爵邸も転移先に登録しておきたいとは思うけど、優先順位があるのだから仕方ない。ちなみに、4番目に登録したい場所は湖畔の別荘よ!

「3ヶ所"しか"!?お嬢の言い草がひど過ぎる!だったら、もっと転移石をつくって解決する。」

「この転移石で移動できる定員はふたり…。お嬢なら、ふたり"しか"って言うに決まってる!だったら、次つくる転移石は、座標の登録数も移動人数ももっと増やすしかない。」

『もっといい魔石必要!!』

「魔石次第で転移先の数も、移動人数ももっと増やせるのね。なら、どの魔石がいいかしら?」

アイテムボックスから魔石を取り出し、テーブルに並べる。ふたりは同時に同じ魔石をに手を伸ばした。それ以外の魔石を、再びアイテムボックスへ戻すと。

『鬼畜…。』

ふたりは、ものすごくうらめしそうな目でアイテムボックスにしまわれていく魔石たちを見てきたわ。

「いくつも魔石を渡すと、あんたたちが寝食せずに、魔道具づくりに没頭するからでしょ!?これからは、魔道具ができたら、次の魔石をあげるって話したわよね?」

『ひとでなし…。』

もう、こいつら!人のこと鬼畜とか、ひとでなし呼ばわりして!!いい加減にしなさいと言おうとしたら、その前に、ウィル様がふたりへ話しかけたの。

「じつは、おふたりに頼みがあるんです。僕の家の保管庫には整理されていない魔石が山になっているのですが、それを分類してくれませんか?それでも。魔道具をつくるための魔石を、一気に渡せないことには変わりないのですが…。」

『魔石の宝庫に、連れて行ってくれるんですか!?』

「はい。おふたりさえよろしければ、今度ヴェルナー領へ行くときに、一緒に行きましょう。」

『行きます!!』

ふたりは即答すると、目をキラキラさせてウィル様を崇めた。

『神だ!?』

「ちょっと、どういうこと!?どうしてウィル様は神なのに、私は鬼畜なのよ!?私だって、あんたたちをヴェルナー領へ連れて行くつもりだったわよ!」

「…どうせ、転移石に座標の登録をさせるため。それって、お嬢自身のため。」

「そうそう。登録するには、実際にその場所に行かないとダメだから。」

『鬼畜お嬢の考えは、お見通し。』

ふたりは、こそこそ耳打ちしているけど、そのやり取りが聞こえたウィル様は吹き出していたわ。

こうして見ていると、ウィル様とふたりの年がひとつしか違わないなんて、信じられないわね。ウィル様が老けてるって意味ではないのよ。やっぱり。人ではなく、魔道具ばかりと向き合ってきたのがいけないのかしら…。年下の私でさえ、弟たちに思えるもの。

「あのう、お嬢様…。兄たちがここを出て行ったら、私はどうなるのですか??」

双子の兄のお世話をしているメアリーが、不安そうに尋ねてきた。

「そうね。とりあえず、メアリーも一緒にヴェルナー領へ行ってみましょうか?今まで、ふたりの面倒をみてきて大変だったでしょう。だから旅行だと思って。そのあとは、男爵家に戻ってもいいし、王都で働いてみるのもいいわね。仕事なら、紹介できるから。」

「旅行…。」

男爵家で生まれたメアリーは、私に引き抜かれるまで男爵領から出たことがなかった。いつか王都へ連れて行くという約束が、もうすぐ守れそうだわ。



王家の別荘建設の目処が立たないうちは長い期間領地を離れられないため、結局、リアの家と湖畔の別荘の座標を転移石に登録してもらったの。双子には、最初に言ってた登録場所と違うってボソっと指摘されたわ。

だって。リアに会いに行く時間が欲しいからって、国王陛下の頼みごとを先延ばしできるわけないでしょ!?でもリアに会いたいじゃない!!

そんなわけで、転移石の最初の登録場所は、湖畔にある我が家の別荘と、ロックハート侯爵邸になったの。


湖畔の事業に追われ、その合間に転移石を使ってリアに会いに行くのを繰り返し、気づけば2ヶ月が過ぎた。

そんなある日のこと。

辺境伯様からの伝言を、ハリオアマツバメが運んできたの。鳥の首輪には魔道具がついていて、ウィル様が魔力を流すと、辺境伯様の声が聞こえてきた。

『エスター嬢と一緒に家へ戻るように。なるべくはやくな。』

この魔道具は、魔物討伐の際に鳥につけ伝令に使っているものらしいわ。手紙と違って、紙やペンもいらないし、文字を書かなくてもいいという反面、録音できる時間が短いため詳細を伝えるのには向いていないそうよ。ウィル様が言うには、手紙を書く時間が惜しいから魔道具を使ったわけではなく、たんに辺境伯様が手紙を書くのが面倒だからみたい。それでも、なるべくはやくとおっしゃっていたから、急を要する用件がなにか気になってしょうがないの。

ウィル様が何ヶ月も領地を留守にしたせいで、辺境伯領でなにかあったのかしら?それとも。まさか、お母様が魔力暴走を起こしてしまった?



ヴェルナー辺境伯邸へ向かうため、あちこちに留守の間の指示を出してまわった。それから。双子とメアリーを迎えに行って、リアの家へ寄った。頼んでいた手荒れ用の軟膏を受け取るためにね。以前、ヴェルナー家のメイドたちにハンドクリームをあげたのだけれど、彼女たちの手荒れは想像以上にひどかったの。ぱっかり割れちゃってるんだから。あれは、予防目的のハンドクリームなんかじゃ治らないわ。ラザラスに治療してもらうのが手っ取り早いけど、辺境伯領へ連れて行くのは現実的じゃないでしょ?だから。ラザラスには軟膏を、リアには、リアの水をつかった保湿液をつくってもらったの。

「エスター。少し早いけど、誕生日おめでとう。当日はお祝いできないかもしれないから、プレゼントをもうあげちゃうわね。ヴェルナー領からいつ帰って来られるか、わからないでしょう?」

「リア!!ありがとう。向こうについたら座標を登録するから、当日は転移石で帰って来るわよ。」

リアに抱きつくと背後から、ラザラスの、別に来なくていいという声と、双子の、登録するのは自分たちだという声が聞こえてきた。さらに…。

「ネイサン!?これ、フィリアお嬢の魔力を感じる!!」

「イーサン!!これ、あのチートポーションと一緒!?」

「ちょっと、信じられない!あんたたち、先にプレゼントを開けないでよ!?それにこれは、ポーションじゃなくて化粧水よ。化粧水なんて、興味ないでしょう?」

一度、リアお手製ポーションを飲用したふたりは、リアの魔力に興味を持ってしまったのよね。化粧水だと聞いて、双子の興味をなくすことには成功したけど、今度はラザラスが食いついてきたの。

「リアのつくった化粧水??」

「そうよ。ここ数年はエスターとスカーレット様から、毎年、化粧水を頼まれるの。年に一度、肌へのご褒美なんですって。」

「義姉さんまで…。それは、ものすごく美容効果の高い化粧水なんだろうな??」

あ"…。とうとうバレちゃったわ。ラザラスとは、リアのつくるものは規格外だから、世間に露見しないよう注意しようって約束していたの。だけどじつは。こいつには内緒で、私とスカーレット様は、リアに化粧水をつくってもらっていたのよね。

「まさかあんた、化粧水が欲しいって言うんじゃないでしょうね??」

「欲しい!!リアのつくったものなら、なんだって欲しいに決まってるだろ!」

「…そうだったわね。あんたって、リアがつくったっていうだけで、馬用のポーションすらも大事にする奴だったわ。勝手に使ったら、ものすごく怒られたもの。」

「勝手に使った、おまえが悪いんだろ!?」

あのとき。ラザラスが怒っていたのは、もちろんリアからのポーションを私が使ってしまったからだけど。ほんとは、それだけじゃなくて。私を助けようと、馬に回復魔法をかけてまで追いかけたのに、追いつけなかったラザラス自身に対しての怒りでもあったのだろう。

「でも。家の惨状を目の当たりにした上で、まさかポーションを使ったことをあんなに責められるとは思わなかったわ。傷心の私に、よくあそこまで怒れたものね?」

「おまえが傷心するのなんて、リアに怒られたときくらいじゃないか。」

「人聞きが悪いわね。傷心なんてしないわよ。私のリアに怒られるなら、本望よ。」

「俺のリアだからな!?」

「もう。ふたりとも相変わらずなんだから。」

毎度お決まりの私たちのやり取りに、リアはあきれていて、ウィル様は笑っている。


「そうだわ!この夏の、かき氷の売れ行きを発表するわね。」

今この部屋には、あのメイドもいるから、テスト販売の結果を報告するにはちょうどいいわ。

「売る場所やシロップのグレード、値段設定を、貴族と庶民で別にしたの。だけどね、どちらもいちごシロップが売り上げ1位で、いちごシロップにミルクソースをかけるのも人気だったわ。」

「シロップにグレードなんてあるのかよ!?」

「貴族向けには、果肉入りシロップやフルーツを乗せて高級感を出して、その分値段も上乗せしたわ。庶民向けは、果肉が入ってない分、財布に優しい値段よ。」

「僕は、どちらもおいしかったですけどね。」

ふふっ。ウィル様は、なにを食べてもおいしく感じられて幸せよね。

「それに。庶民の夢というのは、本当でしたよね。つられて、パトリック君もまねしてましたけど。」

「そうなの。庶民向けの店舗を視察していたら、シロップを全部かけたいって言う注文が、結構あったのよ。」

「ほら!私の言った通りじゃないですか!?シロップ全がけは、庶民の夢なんです。」

メイドが、得意気な顔をしてみせた。

「胸を張ってるところ悪いけど。シロップの全がけを注文したのはね、庶民は庶民でも子どもたちだったわよ。つまり。あなたの夢は、子どもたちと同レベルってことね。」

みんなに笑われても、このポジティブなメイドは、自分は童心を忘れていないだけだと言い訳していたわ。

そうそう。ウィル様のガリガリ氷も一部の者たちに好評だったのよ。仕事帰りのお父さんたちが氷だけ買って、その上に持参したお酒をかけていたわ。来年は、貴族向けにお酒のシロップをつくろうかしら。

こんなふうに、氷を氷菓子に使えるようになるなんて夢みたいだわ。これまでも毎年冬には、氷を切り出して夏に使用できるように保存してきた。その氷は患者へ使うためのものだから、ラザラスのお父様へ渡すの。夏場の氷は貴重だからね。でも。これからは、ウィル様がいるから、贅沢な氷の使い方ができるのよ。


リアの家をあとにして、数日後。

王都へ着いた私たちは、酒屋を巡り、辺境伯様が好きそうなお酒を大量に購入した。

(もう!飲んだのは、お母様なのに!!)

それから。久し振りに王都へ出て来たイーサンとネイサンは、魔道具屋へ行きたがっていたのだけど、ウィル様にお願いして拘束してもらったわ。魔道具屋へ行ったら最後、入り浸って、『帰らない』と大騒ぎするのが目に見えるもの。


今は、辺境伯様から急いで帰るよう言われているから、双子のわがままに付き合っている暇はないのよ。

ハリオアマツバメ=繁殖期以外ずっと飛んでる鳥

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