砂漠の山
五月。アメリカのカリフォルニア州のとある町にあるビル。その最上階二十階でプーランは大きなパソコン画面で仕事をしている。国内外の時事問題や機密情報や経済状況を集めては分析し、依頼主を探しては交渉し、職場仲間に仕事を割り振る。
プーランはインドで生まれ育ったが、大学卒業後に渡米。宇宙開発や情報技術関係の企業を五年ぐらいを区切りに転々としてきた。ホワイトハッカーとして働いてもいた。
ここ十年で不思議な能力を持つ人物が確認されている。そのうちの七人は現在プーランが働く職場の仲間だ。全員が一箇所に集まる時は少ないが、頻繁に連絡を取り合っている。プーランが彼らを見つけては勧誘してきた。
最近、プーランは新たに能力者を三人見つけている。中国の宇文秋、台湾の徐学、日本の佐藤華江。プーランはこの三人とどの様な交渉をすべきか悩んでいる。特に佐藤華江は黒人を二人も殺害した事で起訴されて裁判を受けている。
プーランはパソコン画面の前で頬杖をついた。佐藤を見殺しにすべきか。それとも大胆に交渉するか。
アメリカ合衆国から遠く離れた国々による戦争を能力を使って妨害している社長にとりあえず詳細を伝える。順調に行けば今日中に和平交渉が始まるはずだ。
その前にプーランは夫と息子に連絡する。仕事内容には全く触れないが、毎日、互いの体調や悩みを相談し合っている。プーラン自身は四十二歳の女性だが、体力には十分自信が有る。夫も息子も元気で問題は無いようだ。
プーランは七年前に社長と一緒に会社を設立した。社名は「砂漠の山」。砂漠の山の従業員は現在八人。プーラン以外は能力者である。能力をなるべく平和的に活用しながら経済活動をしている。
カリフォルニアの日没前に社長であるダンカンから連絡が来た。戦争は終了し、和平交渉が始まる。プーランはそれを喜んだ後、佐藤・宇文・徐について相談した。
ダンカンは先ずは徐に接触した後、佐藤に会ってみるべきだと指示を出した。




