能力の条件
十一月。温暖化にもかかわらず、ドイツは寒かった。砂漠の山の十人は自然科学者達と広い会議室で討論していた。学者達の半分はドイツ人だが、他は世界各国から来ている。マリーも参加している。
学者達は砂漠の山の活動を研究していた。資料や情報は出来るだけ入手している。
能力を得た理由、能力の限界、使用した際の代償、消失の可能性、能力の仕組み。皆、分かりかねていた。当事者達も分からない。
気付けば能力が使える。感覚を研ぎ澄まし、鍛えればどんどん成長していく。使用し過ぎると心身が疲労するが寿命が削られているわけではない。健康診断には異常は無い。今後、能力が消えるかどうかは皆分からない。想像力と集中力が高まった時に発動する。精確な情報を得ながらタブレット端末やパソコンで能力を微調整していく。
それ以上、詳しい事は分からない。能力を発動する際には具体的な動きや言葉は必ずしも必要ではない。しかし、合図を決めておくと正確に発動出来る。
学者達は困った。皆、能力の範囲が非常に広く強力だ。個人にも影響を与えるが一つの国にも作用する。死亡した宇文秋の能力も理不尽なまでに大きかった。制御が効かなくなって暴走すれば大災害が起きる。
能力が暴発しそうな時はナニアが早く気付いてアヌラックが抑える。しかし、最近はそんな必要が無くなってきている。
学者達は十一人の能力に人類がどれだけ頼れば良いのか分かりかねた。十一人には遅かれ早かれ寿命が来る。能力を譲渡したり受け継いだりするわけでもない。やはり能力に依存しないように社会や科学を発展させるべきだ。十一人の貢献を評価しつつも崇拝するのは危険だ。
プーランとマリーとアヌラックは学者達の心配を理解して傾聴している。プーランは能力者ではないが、ハッキング能力と情報技術は世界的である。
ナニアと崔と徐は学者達の質問になるべく答えている。知らない所は正直に知らないと白状する。
クァンとロジャンとロサは困った顔をしている。能力の喪失は考えたくなかった。折角の能力を最大限に有効活用してみたい。能力を酷使してでも環境破壊や戦争を食い止めるべきだ。
ダンカンは周りを見渡しながら考え込む。今まで砂漠の山の上場を望んでいたが、喪失を考えると尻込みする。能力に頼らない事業も必要だ。
佐藤は宙を睨んでいる。英語には慣れてきたが、集中力が切れると全く聞き取れなくなる。ナニアとアヌラックがそれに気付いて解説する。
犯罪心理学のカールが佐藤を見つめながら、
「君の理想を知りたい」
と、質問した。突然訊かれて佐藤は驚いた。咄嗟に声が出ない。皆、振り向いている。カールは、
「夢でも野望でもかまわない」
崔が不思議そうに、
「何故そんな質問をするのですか?」
カールは佐藤を見つめたまま、
「佐藤の能力は実に強力だ。執念が連動しているように俺は感じる」
徐とマリーが興味津々で目を光らせる。佐藤は肘をついて指を組んみ、ゆっくりとした日本語訛りで答えた、
「我国と我が同胞の再興。それが実現したら世界に女権を拡大していく」
崔が息を飲んだ。全身が冷えていくのを感じる。学者達は不思議そうに顔を見合わせる。徐とマリーはじっと佐藤を見つめている。佐藤は無表情。カールは低い声で、
「なるほど」
ダンカンがニヤリと笑みを浮かべる。その笑顔は嘲りよりも楽しみに溢れている。




