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嵐咲く  作者: 加藤無理
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謁見

 エドワードは敬礼でもかまわないことにした。信仰と宗教の問題も有るので無理に頭を下げさせるべきではない。砂漠の山に返信すると了解を得た。


 王族達が報道陣に囲まれながらイギリス国民達に挨拶。会議を終えて休んでいる所に砂漠の山の十人を引き合わせる。その時には報道を控えてもらう。砂漠の山に興味有る貴族もその場に呼ぶ。カリフォルニア州から宮殿まで十人を英国軍とエドワードの息子が護送する。謁見時間は十分も無いはずだ。


 エドワードは電子メールでこの計画を細かく伝えた。砂漠の山の要望になるべく沿って修正していく。協力する息子も英国軍も嫌がるどころか面白がった。この計画は日本の皇室や政府には伝えていない。


 表向きは日英関係の改善。具体的な外交戦略や安全保障や経済関係については話さない。王族同士で互いの体調や文化について語り合うだけだ。無意味なようでいて意義は有る。イギリス側も日本側も失態はしないだろう。


 十人は乗る気ではなかったが、失礼の無いように振る舞おうと決めた。念の為にアヌラックは宮殿内では皆の能力を封印することにした。


 砂漠の山の面々は当日に着る服に悩んだ。華美過ぎたり高級ブランドに頼り過ぎると却って愚かしくなる。しかし安物や地味な服装は避けるべきだ。ダンカンはそれぞれの民族衣装を着ようと提案したが、皆は嫌がった。佐藤は逆に米軍軍服を勧めたが、皆は更に反発した。


 特に佐藤は躊躇いもなく安物のリクルートスーツを着ようとしたが、プーランが反対した。佐藤はいつも作業着を来ている。休日はTシャツかトレーナーを着ている。崔はその服装を見下していたが、最近は黙っている。佐藤の服はプーランとナニアが選ぶことになった。


 当日。それぞれが落ち着いた上品な服を選んだ。女性陣は佐藤以外はスカートで、男性陣は無難な背広。佐藤はマシなリクルート姿。迎えに来たエドワードの息子と軍人達は物足りなさを感じたが文句を言わなかった。


 イギリスは曇りだが雨は降っていなかった。砂漠の山の面々は到着すると宮殿の広場で待機。エドワードは笑顔で十人に握手した。ダンカンも微笑んだが部下達の表情は緊張で固い。


 王族達は挨拶も会議も無事に終えた。エドワードは十人に合図する。座っていた十人は立ち上がる。


 王族達が上品に登場した。エドワードの目配せで砂漠の山の面々は敬礼する。しかし、佐藤だけが腰を下ろした。隣にいたアヌラックが驚いて振り向く。皆も気付く。崔が叱ろうとするとナニアが人差し指を口に当てて遮った。


 エドワードは目を丸くした。佐藤が片膝をついて俯いている。座り込んで抗議しているわけではなかった。黙っているが英国国王と王妃も驚いている。日本の天皇と皇后は無表情で佐藤を見やる。皇后が日本語の穏やかな声で、

「立ち上がって顔を上げなさい」

 と、命じた。佐藤はそれに従う。おもむろに敬礼する。英国国王と王妃は溜息を吐いた。天皇はゆっくりと二人に振り向き、上品な英語で、

「彼等が噂の砂漠の山ですね」

「その通りだ」

 英国国王が答えた。天皇はダンカンを見やり、微笑むと、

「会えて嬉しい」


 謁見はいつの間にか終わった。エドワードが十人を連れて行った。皆、頭が真っ白だ。暫く休むと、エドワードの息子と軍人達がカリフォルニア州まで飛行機で送って行った。皆、会話らしい会話をしていない。

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