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嵐咲く  作者: 加藤無理
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エドワード

 九月。砂漠の山の十人はカンボジアで活動していた。軍や環境保護団体や企業の経営者達と相談しながら皆で河川を浄化していく。台風の低気圧で蚊を弱らせて病気を防ぐ。アルコール依存症患者がいれば解毒させて回復させる。


 一週間ほどの仕事だ。砂漠の山が無事に成功して終えると、環境保護団体と企業家達は彼等にアンコールワットを案内した。圧巻である。皆、興味津々と魅入みいっている。


 徐は仕事中は瞬間移動を使用したが、カリフォルニア州とカンボジアとの往復は体力温存の為に皆と一緒に飛行機を利用した。


 事務所に帰っても皆、暫くは事務仕事をしていた。砂漠の山には担当の公認会計士と弁護士がいるが、なるべく自分達で処理している。特にダンカンとプーランは人工知能を駆使している。アヌラックとナニアは不器用な佐藤を教えながら進める。残りの五人も淡々とこなしていく。


 それを終えると皆、一週間ほど休む。ロジャンと徐は家族が母国にいるし、佐藤は完全に独身だ。三人は会議室の階下に有る部屋でそれぞれ静かに過ごす。残り七人は事務所近くの家で家族と団欒する。


 砂漠の山では不倫も浮気も一切無い。佐藤と崔は犬猿の仲だが、最近は落ち着いている。時には過酷な労働環境に置かれるが、何とか乗り越えてきた。何時もは和気藹々としているし、信頼関係も築いている。


 佐藤の言動は常軌を逸しているが、ダンカンがそれとなく制御している。他の職場仲間も佐藤の扱いに慣れてきている。


 イギリス貴族の一人であるエドワードはこれを知ってある事を思い付いた。エドワードはイギリスの諜報機関で働いていた事があるし、更に貴族という立場により貴重な情報が沢山得られる。現在は妻と一緒に介護施設を粛々と運営して静かに暮らしているが、好奇心は全く衰えていない。


 十月の終わりにはイギリスに日本の天皇皇后両陛下が来る。エドワードはこの機会を盛り上げようと考えた。


 エドワードは砂漠の山にある提案を伝えた。それをプーランが職場仲間達に読み上げた。皆、驚いた。プーランは、

「王族の前で頭を下げるだけで他は何もしなくて良いそうだよ」

 ダンカンは面倒臭そうな顔をして、

「ここの大統領に対してもあまりやらないのに」

 ダンカンは仕事で何度か大統領と対面した事がある。慇懃な態度を取るが、わざわざ頭を下げる為に行く事はない。アヌラックは自分の顎を掴んで考え込む。崔は苦い顔をする。ロサは、

「相手がローマ教皇猊下だったら喜んで頭を下げに行くけれど」

 ナニアは苦笑いして、

「流石にそんな機会は無いと思う」

 クァンと徐は困った様子で顔を見合わせる。ロジャンは、

「敬礼では駄目なのだろうか」

 プーランは、

「エドワード公に尋ねてみる」

 佐藤は黙って天井を眺めている。

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